2024.11.1

「黙: Speaking in Silence」(両足院)開幕レポート。名刹に響くボスコ・ソディと加藤泉の沈黙の対話

京都・両足院を舞台に、メキシコのボスコ・ソディと日本の加藤泉による2人展「黙: Speaking in Silence ‒ Bosco Sodi & Izumi Kato」が開催される。その様子をアーティストの言葉とともに紹介する。

文・撮影=王崇橋(ウェブ版「美術美術」編集部)

展示風景より
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 京都の名刹・両足院にて、メキシコと日本のふたりのアーティスト、ボスコ・ソディと加藤泉による展示「黙: Speaking in Silence ‒ Bosco Sodi & Izumi Kato」が開催される。会期は11月2日〜17日。

 本展はソディと加藤が20年近くにわたって築いてきた友情と芸術的交流のなかから生まれ、アーティスト自身で構想・企画された初の展覧会。京都にある建仁寺の塔頭寺院である両足院を特別拝観とし、禅寺の静寂に包まれた空間でふたりのアート作品が対話する特別な展示となっている。

展示風景より
展示風景より

 ふたりのアーティストの出会いは2007年、ソディが初めて日本で滞在制作を行った際に始まる。ソディは本展の内覧会にて、その友情を「沈黙のなかで測るもの」とし、言葉に頼らずともともに過ごすだけで通じ合える関係こそが真の友情であると語っている。本展のテーマである「黙(沈黙)」には、こうした長い年月を経たふたりの友情や、彼らの作品がもつ無言の力が込められている。

ボスコ・ソディ(左)と加藤泉

 メキシコとニューヨークを拠点とするソディは、木、土、岩といった自然素材を用いたダイナミックな作品で知られている。作品には素材本来の質感を生かし、意図的に残された偶然の飛び散りや歪みが、自然そのものを切りとったような力強さと美しさを漂わせている。彼は自然と素材とが持つ無言の力と対話し、その偶発性を作品のなかに取り込むことで、鑑賞者に深い印象を与える。

展示風景より、ボスコ・ソディの作品
展示風景より、ボスコ・ソディの作品

 いっぽう、東京と香港を拠点に活動する加藤は、人型をモチーフにした独特な具象作品で評価を受け、ニューヨークやロサンゼルス、ロンドン、パリなど国際的に活動の場を広げている。その作品は鑑賞者に多様な解釈を促し、つねに絵画の可能性を探究し続けている。近年では、キャンバスの枠を超え、木彫や布、石、金属など、様々な素材を用いた立体作品にも取り組み、その創造性はとどまるところを知らない。

 加藤は「作品は自然や素材との対話であり、ホワイトキューブよりも自然や歴史ある空間でその生命力をより発揮する」と述べ、本展での両足院との調和を重視した展示を追求している。

展示風景より、ふたりの作品の対話
展示風景より、加藤泉の作品
展示風景より、加藤泉の作品

 本展では、新作を含むふたりの約30点の作品が展示。ソディは、そのインスタレーションは寺院空間に対する敬意と調和が重視され、寺院の美しさと競合しないように配慮されたと話している。「寺院の持つ美しさに対抗するのは無意味であり、作品はあくまで空間と共鳴するようなかたちで展示すべきだ」(ソディ)。

 メキシコと日本という地球の反対側に位置するふたつの異文化のアーティストが、沈黙を通じて対話を織りなし、新たな調和を創り出している。本展を通して、来場者は作品を通じて異文化間の「黙」による共鳴と対話を感じとり、日常から離れた深い精神的な体験を味わうことができるだろう。

展示風景より
展示風景より
茶室の展示風景より