2025.2.1

特別展「魂を込めた 円空仏 —飛騨・千光寺を中心にして—」(三井記念美術館)開幕レポート

三井記念美術館で、特別展「魂を込めた 円空仏 —飛騨・千光寺を中心にして—」がスタートした。会期は3月30日まで。

文・撮影=三澤麦(ウェブ版「美術手帖」編集部)

展示風景より、《愛染明王坐像》
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 東京・日本橋の三井記念美術館で、特別展「魂を込めた 円空仏 —飛騨・千光寺を中心にして—」がスタートした。会期は3月30日まで。

 「円空仏」で知られる円空は、愛知、岐阜を中心に活動した江戸時代の山林修行僧だ。そこからさらに関東、北陸、北海道までを巡りながら、各地に木彫の神仏像を数多く残したと言われており、現存するその数は約5000体にも及ぶという。本展では、円空の作品群を様々な視点から紐解くことで、現代彫刻にも通ずる造形の魅力を深掘りしていくものとなっている。

展示風景より

 そもそも、円空の人物像を示した資料はあまり多く残ってはいない。それにもかかわらず、ここまで円空が評価されているのは戦後1950〜60年代にかけて若手作家による前衛的な木彫像が急速に現れたことが理由に挙げられる。当時その現象の背景としてあったのが円空による作品であり、そこから国内のミュージアムで広く取り上げられるようになったのだという。

展示風景より、《白山妙理大権現坐像》
展示風景より、《白山妙理大権現坐像》(裏)
展示風景より、《柿本人麻呂坐像》

 円空の作品でもっとも特徴的であるのがその「削り痕」だ。円空は樹木に神仏が宿っているという考えのもと、その姿を彫刻として表した。平安時代から「仏をつくる」ことが仏教儀礼とされてきたなかで、その痕跡をあえて残しておく。円空はそこに仏教の本質があると考えていたのかもしれない。

展示風景より、手前から《金剛神立像》、《護法神立像》

 さらに、今回大きな見どころとしているのは、《両面宿儺坐像》(千光寺)の日本橋初展示だ。鬼神や賊、はたまた飛騨地方の英雄とも言い伝えられている両面宿儺。円空による荒々しい削りで表されたその像が、威厳ある佇まいで展示室に鎮座している。

展示風景より
展示風景より、《両面宿儺坐像》

 ほかにも、同展示室ではひとつの材からつくられた作例として《不動明王立像及び矜羯羅童子立像・制咜迦童子立像》の3体や、観音信仰をもとにした《三十三観音立像》も並ぶ。

展示風景より、《不動明王立像及び矜羯羅童子立像・制咜迦童子立像》
展示風景より、《三十三観音立像》

 別の展示室では、京都・稲荷伏見神社を中心に信仰が広がった「稲荷明神」や、円空自身が持経者でもあった「法華経」にまつわる作例なども多数展示。それぞれの信仰にまつわる独自のモチーフや姿・形が表現されている。

展示風景より
展示風景より
展示風景より

 また、円空が学僧でもあり歌僧でもあったことが伺える資料、そして円空が晩年を過ごしたという飛騨地方及び千光寺近隣との関係性を詳しく知ることができる資料も展示されているため、あわせてご覧いただきたい。

展示風景より
展示風景より