2026.3.14

「SORAYAMA 光・透明・反射 -TOKYO-」(CREATIVE MUSEUM TOKYO)開幕レポート。空山基、過去最大規模の回顧展に並ぶ半世紀の軌跡

「セクシーロボット」シリーズで国際的に知られるアーティスト・空山基の画業の全貌に迫る、過去最大規模の回顧展「SORAYAMA 光・透明・反射 -TOKYO-」が東京・京橋のCREATIVE MUSEUM TOKYOで開幕した。

文・撮影=橋爪勇介(編集部)

展示風景より、「テスモフォリア」セクション
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 人体と機械の美を追求した「セクシーロボット」シリーズで国際的に知られるアーティスト・空山基。その画業の全貌に迫る過去最大規模の回顧展「SORAYAMA 光・透明・反射 -TOKYO-」が、東京・京橋のCREATIVE MUSEUM TOKYOで幕を開けた。会期は5月31日まで。

 空山は1947年生まれ。78年に初めて発表したロボット表現を源流とし、83年の同名書籍の刊行を通じてその名を知らしめた「セクシーロボット」シリーズでは、女性の人体美をロボットに取り込んだ表現によって、その後のロボットイメージ形成に大きな影響を与えた。

空山基と本展アンバサダーを務める窪塚愛流

 1999年にはソニーが開発したエンターテイメントロボット「AIBO」のコンセプトデザイン、01年には世界的ロックバンド・エアロスミスの「Just Push Play」(2001)のアルバムカバー、18年にはキム・ジョーンズによるディオール オムのコラボレーションを手がけている。また、23年にはミュージシャンのザ・ウイークエンドやF1ドライバーのルイス・ハミルトンとのコラボレーションなども実現し、大きな話題となった。

 本展は、半世紀に渡り幅広い活動を展開してきた空山の仕事を網羅する過去最大の回顧展だ。

 タイトルにある「光、透明、反射」は、空山が自身の作品のコンセプトとしているもの。「光を表現するためには空気を描く必要がある」「空気を描くには透明を表現する必要がある」「反射表現を如何にして征服するのかが鍵を握る」──この空山の言葉を念頭に、会場を見ていこう。

 会場に一歩足を踏み入れると、まず目に飛び込んでくるのは空山による50点近い絵画作品群だ。長嶋茂雄の肖像画から始まり、最初期のロボット作品や、80年代に世界を席巻した「セクシーロボット」シリーズが並ぶ。

 これらは過去の作品データを再構築し、高出力したキャンバスに空山が加筆したもの。金属の質感を驚異的な写実力で表現したそのスタイルは、たんなるSF的イメージを超え、生命力と官能性を内包した独自の美学を提示している。

展示風景より、「ギャラリー」セクション
展示風景より、「ギャラリー」セクション
展示風景より、「ギャラリー」セクション

 没入感を与える映像インスタレーション《Space Traveler》を経て、展示は彫刻作品のエリアへと続く。アルミニウムやガラスで構成されたボディは光と反射を実装するものであり、空山の身体美の探求が強く反映されていると言えるだろう。

 また、それらの立体を鏡面で覆われたショーケースの中に収めた作品群は、光と反射がもたらす幻視的な効果に対する空山の関心が結実したものだ。

展示風景より、《スペーストラベラー》が宙を舞う姿を映像化した「フローティングスロースペース」
展示風景より、《スペーストラベラー》(2025)
展示風景より、「ミラーメイズ」セクション
展示風景より、「ミラーメイズ」セクション
展示風景より、「テスモフォリア」セクション

 「ピンクティールーム」と名付けられた部屋の中央には、空山のスタジオを再現した小部屋が鎮座。またその周囲を、貴重な原画の数々が囲む。ここでは、空山のロボット表現の源流とも言える、ウィスキーの広告のために手がけた作品の原画も見ることができる。

ピンクティールーム
手前がウィスキーの広告のための作品原画

 本展では、空山が手がけてきたコラボレーションプロジェクトのアーカイブも大きな見どころだ。

 「アーカイブルーム」には、2001年のエアロスミスのアルバムジャケット『Just Push Play』の原画や、ソニーのエンターテインメントロボット「AIBO」のコンセプトデザインなど、ポップカルチャーやプロダクトデザインに与えた影響の大きさを物語る資料が展示されている。

 また、近年話題となった、クリエイティブ・ディレクターのキム・ジョーンズ率いるディオール、ミュージシャンのザ・ウィークエンド、カーレーサーのルイス・ハミルトンらとのコラボレーションに関する展示も、空山の表現がいかに現代のクリエイティブシーンを刺激し続けているかを証明している。

アーカイブルームより
アーカイブルームより

 最後の部屋は本展のための新作映像だ。空山の子供の頃からの「アイドル」だという恐竜のシリーズから、TREXを映像化し、巨大スクリーンで投影。映像と音響、そして振動を連動させることで、触覚でも楽しめるインスタレーションが実現した。

本展のためにつくられた映像作品

 半世紀にわたり、既存の枠組みを軽やかに超えてきた空山。本展はその圧倒的なテクニックと、止まることのない探求心をダイレクトに感じられる貴重な機会と言えるだろう。最後に、空山の言葉を紹介したい。

「もし何十年か先にもう一度こういう展覧会ができたら、さらに熟成したものになるかもしれない。ここに並ぶのは自分のために描いたエンターテイメント。見に来てくれた人たちにも楽しんでもらいたい」。