プロがオススメするミュージアムショップ:「dot to dot today」&「HAY」(大阪中之島美術館)
南青山のIDÉE SHOPのバイヤーを経て、2007年にmethod(メソッド)を立ち上げて以降、国立新美術館ミュージアムショップ「スーベニアフロムトーキョー」や21_21 DESIGN SIGHT SHOP「21_21 SHOP」などを手がけてきた山田遊。現在は株式会社メソッド代表取締役を務める山田が、バイヤーの目線からいま注目すべきミュージアムショップを紹介する。
フリーランスのバイヤーとして、method(メソッド)を立ち上げ、今年で15年が過ぎた。起業するきっかけとなった初めての仕事が、国立新美術館のミュージアムショップ「スーベニアフロムトーキョー」だった影響もあってか、その後も、様々なミュージアムョップの立ち上げや運営に携わり続けてきた。いまでは、美術館・博物館で開催される展覧会にはなるべく脚を運び、鑑賞後は都度ショップをチェックすることが、日常の中で欠かせないルーティンとなっている。ここ数年、コロナ禍の影響で、気軽に外出すること自体、憚られる時期が続いてきたいっぽうで、日本国内ではミュージアムが相次いでオープンし、そして、施設にとって欠かせない機能となったミュージアムショップも、また新たに生まれ続けている。そんな美術館・博物館とショップへ日々通い続ける一バイヤーの目線から、各地のミュージアムショップを紹介していきたい。
dot to dot today
今年の2月、約40年もの準備期間を経て、大阪市の中之島で待望のオープンを果たした「大阪中之島美術館」。周囲で一際目を引く、巨大な黒いキューブ状の建築の設計は、遠藤克彦建築研究所によるもの。美術館内に一歩足を踏み入れれば、広大な吹き抜けの内部空間に思わず目を奪われるが、その2階の一角にミュージアムショップ「dot to dot today」が佇んでいる。いかんせん施設全体の大きさに比してショップの面積は限られており、その空間に支配されがちではある。とは言え、それはどのミュージアムショップにおいても直面する課題だ。店舗内装のデザインは吉行良平。木製什器はiei studio、金属製の什器はbowlpondと、いずれも大阪を拠点としているデザイナーたちが参加し、空間全体と向き合いながら、丁寧に対峙してショップ空間を構成しているように思える。
低めの天井部分に位置するショップ内に配置された大型の金属フレームは、空間と調和しながら、商品ディスプレイも兼ねつつ、店舗内装としてもアクセントを加えている。また、店舗什器やレジカウンターも、円や四角で構成されたシンプルなデザインながら、入れ子式の形状になっており、その可変性は非常に高いことが見受けられる。今後、美術館で開催される展示と共に、置かれる商品が変わっていくと共に、自由自在に店内のレイアウトを変更していくことで、きっと訪れる度に全く異なった印象を与えることも可能だろう。大胆に変化していくショップの姿を、今後は期待していきたい。
また、店内の商品は、もちろん美術館自体や、開催中の展示に関連した書籍や商品はしっかり抑えて取り扱っているものの、全体を眺めてみると、ある種、ミュージアムショップの定型的な品揃えとは一線を画した、より自由で独自性が高い印象を与えてくれる。あえてそのキーワードを挙げるとすれば「パーソナル」「ローカル」「ドメスティック」だろうか。ポストカードやステーショナリー、Tシャツやバッグなどの定番的な商品に加え、食器や食品、玩具、インテリア雑貨、果ては家具まで取り扱い、その多くが大阪と縁の深い、インディペンデントのデザイナーや、メーカーによるブランドの商品をセレクトしており、店としての基準が一本しっかりと筋が通されているように感じられる。