EXHIBITIONS

特集展示

ドーミエ、どう見える?―19世紀フランスの社会諷刺

 町田市立国際版画美術館で、特集展示「ドーミエ、どう見える?―19世紀フランスの社会諷刺」が開催されている。

 オノレ・ドーミエ(1808〜1879)は、独自のユーモアで19世紀フランスの社会を描き出した。家族を養うために12歳から役人の使い走りや書店の店員として働き始めたドーミエは、仕事のかたわらで絵画を学び、当時最新の印刷技術であったリトグラフで新聞の挿絵を手がけるようになった。1830年代には、国王ルイ=フィリップと腐敗した王政政治の諷刺画で注目を集めるも、検閲の強化により1835年以降は社会風俗の諷刺に転向。名もなき市民の生活などをテーマに、日刊諷刺新聞『ル・シャリヴァリ』に4000点以上の絵を提供した。

 同館は2024年度に武蔵野美術大学名誉教授で彫刻家の田中栄作より、19世紀から20世紀のフランスの版画・雑誌265点を受贈。本展では、新収蔵のドーミエ作品を中心に、同じく『ル・シャリヴァリ』で人気を博したポール・ガヴァルニ(1804〜1866)の女性画や、当時のパリの景観図をあわせて展示している。

 今回の出展作品は、水泳や鉄道旅行といったレジャーから、ジェンダーによる差別意識、万国博覧会とオーバーツーリズム、戦争まで、現代にもつながるテーマを内包している。時代を超えたユーモアと深い洞察に満ちた諷刺の世界を堪能してほしい。