EXHIBITIONS

国際芸術祭「あいち2025」灰と薔薇のあいまに

愛知芸術文化センター、愛知県陶磁美術館、瀬戸市のまちなか
2025.09.13 - 11.30

Copyright ©五十嵐大介

 名古屋市の愛知芸術文化センターのほか、愛知県陶磁美術館をはじめとした瀬戸市内各所で、「国際芸術祭 あいち2025『灰と薔薇のあいまに』」が開催される。

 「あいち」の国際芸術祭は、2010年から3年ごとに開催されており、今回で6回目を迎える。愛知芸術文化センターのほか、県内の都市のまちなかにも広域に展開。現代美術を基軸とし、舞台芸術なども含めた複合型の芸術祭で、ジャンルを横断し、最先端の芸術を「あいち」から発信する。

 本芸術祭のテーマ「灰と薔薇のあいまに」は、現代アラブ詩人アドニスの詩に由来する。アドニスは、戦争による環境破壊を嘆きながらも、その先に希望を見出すまなざしを詩に込めた。芸術祭では、そうした終末論と楽観論という二項対立に回収されない「あいま」にこそ、多層的な思考の余地があるととらえ、人間と環境の関係を地質学的時間軸から再考する視点を提示する。国家や民族、領土といった枠組みにとらわれず、自然と人間が信頼し合い、補い合う未来像を探る。

 参加アーティストは60組。日本を含むアジア、中東、アフリカ、中南米など、多彩な背景を持つアーティストが集結し、複雑な世界情勢や文化的アイデンティティに向きあいながら表現を展開する。先住民のルーツや移動を経験した者など、多様な立場から社会と芸術の関係を問い直す姿勢が特徴だ。

 また、まちなか会場となる瀬戸市では、1000年以上の歴史を持つ「やきもの」の文化に注目。陶磁器生産で繁栄したいっぽう、灰に黒く染まった空や濁流となった川など、環境への影響も残された。こうした地域資源と人間の営為が複雑に絡みあう瀬戸の風土を出発点に、人間と自然の関係性を考察する展示が展開される。