EXHIBITIONS

細井美裕「無いに聞く / Trusted Silence」

2025.09.05 - 09.29
 板室温泉大黒屋で、細井美裕による個展「無いに聞く / Trusted Silence」が開催されている。

 細井美裕は、東京を拠点に活動するサウンドアーティスト。音を通して空間や時間の知覚を変容させる可能性を探求し、多重録音やマルチチャンネル音響をもちいたインスタレーション、舞台作品など多様な表現を展開してきた。近年は立体作品の制作にも取り組んでおり、ロンドンのバービカン・センターやフランス国立音響研究所(IRCAM)など、国内外で精力的に作品を発表している。

 本展のタイトル「無いに聞く」は英題“Trusted Silence”に由来し「沈黙に耳を澄ます」ことへの信頼を主題としている。細井は、音が鳴る以前の静寂や気配に耳を傾けることをうながす「装置」としてサウンドオブジェクトを制作しており、鈴や時計、金属板といった日常的な素材をもちいることで、匿名性を保ちつつ音の実体と場所を提示している。

 本展では、新作《無いに聞く》、《時間解放運動》、《滝》、《渇望》をはじめ、フィリピンでのリサーチにもとづく《バタアン・テクノロジー・パーク》、《大きい山》、代表作《Fixation 5》《モモ》など、約20点を展示。また、大黒屋別館「北の館」1階では、福島県大熊町で発表された《轍》も特別展示される。