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特別展示・調査報告

再考《少女と白鳥》 贋作を持つ美術館で贋作について考える

2025.09.13 - 09.25, 2025.10.04 - 10.19

ハインリヒ・カンペンドンクを詐称したヴォルフガング・ベルトラッキ《少女と白鳥》(1990年代、高知県立美術館蔵)

 高知県立美術館で、特別展示・調査報告「再考《少女と白鳥》 贋作を持つ美術館で贋作について考える」が開催されている。

 2024年、高知県立美術館がドイツ人画家ハインリヒ・カンペンドンクの油彩画として所蔵する《少女と白鳥》に贋作疑惑が浮上した。同館は、京都大学准教授・田口かおりと協力して本作の科学分析調査を行い、来歴や証拠資料なども含めて総合的に検討した結果、同作品が贋作であるとの結論に至った。

 本展では、《少女と白鳥》を公開し、購入・収蔵の経緯や実施した科学分析の内容もあわせて紹介することで、様々な角度から本作について「再考」する。科学的な手法で美術品の技法材料を明らかにすることは、真贋鑑定に資するだけでなく、従来的な鑑賞とは異なる視点から作品と向き合うことにもつながる。

 昨今も相次ぐ贋作発覚のニュースは、世界各地の学芸員や美術史家、画商、コレクター、鑑定機関を悩ませている。恣意的な贋作の制作と流通は犯罪であり、作品の所蔵者だけでなく、作者とされていたアーティストの名誉をも傷つける。しかし、専⾨家の眼をかいくぐって歴史の表舞台に登場してしまった贋作の物語は、人々の関心を引いてやまない。さらに、1996年に購⼊してから事件が発覚するまでの28年間、《少⼥と白鳥》が「カンペンドンクの作品」として人々に親しまれてきたことも事実である。

 芸術の価値とは果たしてどのようなものなのか、作品を「真作」たらしめる要素をいかに定義しうるのか、そして美術館は真贋をめぐる問題にいかに対峙すべきなのか。贋作を収蔵してしまった美術館として、今後同じ過ちを繰り返さないためにも、今回の展示では、芸術分野における「贋作/偽物と真作/本物」をめぐる諸問題に光を当て、議論の場を生み出すことが目指される。