EXHIBITIONS

オロン・カッツ+イオナット・ズール+スティーブ・ベリック

PROJECT MRT—Natureless Solution/太陽と土と糞から切り離したテクノロジーの再考

YCAMとのコラボレーション

写真: Daniel James Grant 提供:アーティスト

 山口情報芸術センター[YCAM]で「オロン・カッツ+イオナット・ズール+スティーブ・ベリック PROJECT MRT Natureless Solution/太陽と土と糞から切り離したテクノロジーの再考 YCAMとのコラボレーション」が開催される。

 本展では、オーストラリアを拠点とするバイオ・アーティストのオロン・カッツ、イオナット・ズール、スティーブ・ベリックによる新作インスタレーションを公開する。カッツとズールは、組織培養工学を基盤としたバイオ・アートの先駆者として、これまで国内外で実験的な作品を発表してきた。近年は、自然の要素を人工的な代替物に置き換える農業技術(AgTech)に着目し、本展ではその研究過程をパフォーマティブなインスタレーションとして提示する。

 展示では、会場を実験室に見立て、微生物の発酵熱を活用したコンポストインキュベーターやハイドロポニックス(水耕栽培)装置など、循環型の食料生産装置を複数設置し、会期中に実験的運用を行う。これにより「自然を介さずに成立する食の未来=Natureless Solution」に向けたアートの視点からの批評的探究を試みる。

 また、「MRT(Metabolic Rift Technologies)」は、カール・マルクスが提唱した「メタボリック・リフト」という概念にもとづく造語であり、人間社会と自然との断絶を問い直すテクノロジーとして本展の核をなす。会場にはセンサーを備えた装置群を設置し、温度、ガス濃度、窒素循環などのデータをリアルタイムで計測。これにより、分解効率や生態系のバランス、最適環境条件を評価し、食料生産においてデータがいかに優先されるかを批評する。