写真家・田附勝の個展が横浜市民ギャラリーあざみ野で開催へ。縄文土器のかけらを保管状態そのままで撮影したシリーズを展示
社会で見過ごされてしまうものを写真のテーマに据えてきた田附勝による「KAKERA きこえてこなかった、私たちの声展」が、横浜市民ギャラリーあざみ野で開催される。会期は2020年1月25日~2月23日。
横浜市民ギャラリーあざみ野による現代の写真表現を紹介する企画展シリーズ「あざみ野フォト・アニュアル」。2019年度は、12年に『東北』で第37回木村伊兵衛写真賞を受賞した田附勝(たつき・まさる)を取り上げる。会期は2020年1月25日~2月23日。
田附は1974年富山県生まれ。07年に全国のデコトラとトラックドライバーを撮影した『DECOTORA』でデビュー。その後も震災後の東北ではじめて迎えた鹿猟の解禁を撮影した『その血はまだ赤いのか』(2012)や、同地で長く続いていた鹿猟の終焉を記録した『おわり。』(2013)など、おもに縄文以来のシャーマニズムが息づく東北の風土や、この地に暮らす人々の生活を撮影してきた。
一貫して、社会で見過ごされてしまうものを写真のテーマに据えてきた田附。本展は、12年から撮影を始めた「KAKERA」シリーズで構成される。本シリーズは、新潟県津南町を皮切りに各地の博物館の収蔵庫や発掘現場で保管されていた膨大な資料である縄文土器のかけらを、箱の中で中敷きや梱包として使われていた新聞とともに、保管状態そのままで撮影したものだ。
文様が施された土器のかけらを前に、田附は「何も語らないピースが現代に生きる自分たちに語るものがあり、歴史・過去が炙り出される」と話す。縄文土器のかけらと、刻々と変転する社会の趨勢を伝える新聞の組み合わせは、まさに考古遺物と歴史の邂逅。声なきものや名付け得ぬものとの対話から、その歴史や手の痕跡、失われた時間までをとらえる田附の広い視座を感じたい。