2022.2.14

恵⽐寿のストリートに6メートル超の壁⾯作品が出現。⼤⼭エンリコイサム個展「Paint Blister」が開催へ

エアロゾル・ライティングのヴィジュアルを再解釈し、メディアを横断して表現を展開するアーティスト⼤⼭エンリコイサム。その最新の個展「Paint Blister」が、東京・恵比寿にあるNADiff a/p/a/r/tで開催される。会期は2月25日〜3月21日。

⼤⼭エンリコイサム FFIGURATI #366(イメージ) (C) Enrico Isamu Oyama
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 エアロゾル・ライティングのヴィジュアルを再解釈したメディアを横断する表現により、現代美術の領域で注⽬を集めるアーティスト、⼤⼭エンリコイサム。その最新の個展「Paint Blister」が、2月25日より東京・恵比寿にあるNADiff a/p/a/r/tで開催される。

 大山は、1970〜80年代のニューヨークで始まったライティング文化から影響を受け、その特有の線の動きを抽出し、再構成することで⽣み出された独⾃のモティーフ「クイックターン・ストラクチャー」(QTS)を国内外で発表してきた。本展は、東京とニューヨークにスタジオを構える大山のニューヨーク渡航前の最後の東京個展となる。

 展覧会のタイトル「Paint Blister」(ペイントブリスター)は、塗膜と⽀持体のあいだに⽣じる気泡やふくれを指す。本展では、ストリートアートの考察から得られた「ペイントブリスター」のコンセプトを軸に、新たなインスタレーションや壁⾯作品が展示される。

塗膜と⽀持体のあいだに⽣じる気泡やふくれを指すペイントブリスターのイメージ

 NADiff a/p/a/r/tの地下のNADiff Galleryでは、壁⾯にブリスターを施し、⼤学院の修了制作で発表した初期作《FFIGURATI #9》を展⽰。当初、エアロゾル・ライティングの正⾯性を検討し、「純粋正⾯」という膜状のQTSのイメージから⽣まれた⽴体作品である本作だが、今回は壁⾯のブリスターが重なることで、空間に溶け込んだ彫刻インスタレーションへと変容する。

⼤⼭エンリコイサム  FFIGURATI #9 2009
Artwork © Enrico Isamu Oyama. Photo © Shu Nakagawa

 地上のガラス壁⾯には、カッティングシートを素材とした6メートルを超える新作のQTSを会期中限定で展⽰する。会場の建築にあわせて制作された本作には、特殊なシートが⽤いられ、店外からはシート表⾯の微かなふくれが、店内からはシート裏⾯の気泡を⾒ることができるという。さらに、大山とNADiff a/p/a/r/tのコラボレーションにより、本展のテーマに基づいて制作されたオリジナルのマルチプル作品も発表される。

⼤⼭エンリコイサム FFIGURATI #366(イメージ) © Enrico Isamu Oyama

 本展について、大山はステートメントで次のようなコメントを寄せている。

地上のガラス壁面と地下のギャラリーに作品を展開してほしいと言われ、ガラス壁面はすぐにカッティングシートだと思いました。地下はひんやりしていて、前回は明るく開放的な空間に展示した《FFIGURATI #9》をここに置いたら別の表情になると感じ、また白い膜状のQTSはシート作品にもつながると考えました。その後マルチプル作品を検討するなかで気泡のイメージがでて、それがシート作品を貼るときの気泡につながり、膜や表面の裏に息づくブリスターの空間を着想しました。普段は察知されないが、構造のうちに折り込まれ、ほのかに作動するブリスター。この展覧会は、作品やインスタレーションの細部にブリスターを潜ませることで、QTSを新たな様相のもとに描出する試みです。
⼤⼭エンリコイサム 2018 Photo © Collin Hughes