2025.1.17

今週末に見たい展覧会ベスト12。ルイーズ・ブルジョワからパウル・クレー、玉山拓郎まで

今週閉幕する/開幕した展覧会のなかから、とくに注目したいものをピックアップしてお届け。なお、最新情報は各館公式サイトを参照してほしい。

「ルイーズ・ブルジョワ展」(森美術館)展示風景より
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もうすぐ閉幕

「ルイーズ・ブルジョワ展」(森美術館

展示風景より、彫刻作品は《蜘蛛》(1997)

 日本において27年ぶりとなるルイーズ・ブルジョワの個展「地獄から帰ってきたところ 言っとくけど、素晴らしかったわ」は、東京・六本木の森美術館で1月19日まで。レポートはこちら。脚本家・吉田恵里香と担当キュレーター・椿玲子の対談観賞記事はこちら

 本展は、ブルジョワの国内最大規模の個展。昨年11月から今年4月にかけて、シドニーのニュー・サウス・ウェールズ州立美術館で開催されたブルジョワの大規模個展をもとに、ニューヨークのイーストン財団や東京から新たな作品を加えて再構成。

 ブルジョワは自身のトラウマに向き合いながら、女性、母、家族といった個人的なテーマを様々なかたちの作品として吐露してきた。本展は彫刻、絵画、インスタレーションを多岐にわたる作品を展示することで、その活動の全貌をたどっている。

会期:2024年9月25日〜2025年1月19日
会場:森美術館
住所:東京都港区六本木6-10-1 六本木ヒルズ森タワー53階
電話番号:050-5541-8600(ハローダイヤル)
開館時間:10:00〜22:00
料金:[平日]一般 2000円 / [土・日・休日]一般 2200円ほか

「アレック・ソス 部屋についての部屋」(東京都写真美術館

展示風景より

 東京・恵比寿の東京都写真美術館で開催中のアレック・ソス(1969〜)の個展「アレック・ソス 部屋についての部屋」が1月19日に閉幕する。会場レポートはこちら

 アレック・ソスは1969年アメリカ生まれ。国際的な写真家集団、マグナム・フォトの正会員であり、生まれ育ったアメリカ中西部などを題材とした作品で、世界的に高い評価を受けてきた。ソスは「ポートレートや風景、静物などを定期的に撮影しているが、もっとも親しみを感じるのは室内の写真だ」と述べている。部屋とそこに暮らす人をテーマとするこのシリーズが、本展を生み出すきっかけとなった。

 本展では、初期を代表するシリーズ「Sleeping by the Mississippi」から、今秋刊行予定の最新作「Advice for Young Artist」まで、約60点の作品を6つのセクションで紹介。30年に及ぶソスの歩みを振り返るだけでなく、「部屋」をテーマにソスのこれまでの作品を編み直す、同館独自の試みとなっている。

会期:2024年10月10日〜2025年1月19日
会場:東京都写真美術館 2階展示室
住所:東京都目黒区三田1-13-3 恵比寿ガーデンプレイス内
電話番号:03-3280-0099
開館時間:10:00〜18:00(木、金は〜20:00)※入館は閉館の30分前まで
料金:一般 800円 / 学生640円 / 中高生・65歳以上 400円

「若冲激レア展」(福田美術館

伊藤若冲《果蔬図巻》(1791)の部分

 京都・嵐山の福田美術館で、略称「若冲激レア展」が1月19日まで開催中だ。本展は世界初公開となる伊藤若冲《果蔬図巻(かそずかん)》を、同館が所蔵する若冲の作品約30点とともに紹介するもの。会場レポートはこちら

 《果蔬図巻》は寛政2年(1790)以前、若冲が70代のときに描かれた全長3メートルあまりの大作で、若冲ならではの美しい色彩を用いて様々な野菜や果物が描かれた巻物。70代で色絵を描いた例は少なく、重要文化財に指定されている「菜蟲譜(さいちゅうふ)」(佐野市立吉澤記念美術館所蔵・重要文化財)の前年に描かれていることから、今後若冲に関する研究を進めるうえで大きな意味を持っていると考えられる。

 本展では《果蔬図巻》に加え、現存する若冲の作品のなかでもっとも若い時期に描かれたとされる《蕪に双鶏図》や、相国寺の僧・梅荘顕常(大典)とともに京都から大阪まで舟で移動したときの風景をもとに制作された版画《乗興舟》も展示されている。

会期:2024年10月12日~2025年1月19日
会場:福田美術館
住所:京都市右京区嵯峨天龍寺芒ノ馬場町3-16
開館時間:10:00〜17:00 ※最終入館は16:30まで
料金:一般・大学生 1500円 / 高校生 900円 / 小中学生 500円

特別展「志村ふくみ 100 歳記念 ―《秋霞》から《野の果て》まで―」(大倉集古館

展示風景より

 東京・虎ノ門の大倉集古館で、人間国宝の染織家・志村ふくみの足跡をたどる特別展「志村ふくみ 100 歳記念 ―《秋霞》から《野の果て》まで―」が1月19日まで開催されている。会場レポートはこちら

 志村ふくみは1924年滋賀県生まれ。染織家・随筆家。今年100歳を迎えたいまも、自然にある無数の色を抽出して糸を染め織るという、人と自然が共生する営みに捧げる仕事を続ける人間国宝だ。

 本展は志村の生い立ちや影響関係を紹介しつつ、初期の代表作《秋霞》から最新作《野の果て》までを6章に分けながら展示する、志村の仕事を総覧できる展覧会となっている。

会期:2024年11月21日~~2025年1月19日
会場:大倉集古館
住所:東京都港区虎ノ門2-10-3
電話番号:03-5575-5711
開館時間:10:00~17:00(金は〜19:00) (入館は閉館の30分前まで)
料金:一般 1500円 / 大学生・高校生 1000円 / 中学生以下 無料

「唐ごのみ—国宝 雪松図と中国の書画—」(三井記念美術館

展示風景より、円山応挙《雪松図屏風》(18世紀、江戸時代)北三井家旧蔵

 三井記念美術館で「唐ごのみ—国宝 雪松図と中国の書画—」が1月19日まで開催されている。会場レポートはこちら

 江戸に店を構え、京を本拠地とした三井家は、自らがパトロンとして支援した円山応挙やその弟子の絵画を多く所蔵していた。三井記念美術館の絵画コレクションの筆頭である円山応挙筆《雪松図屏風》(国宝)は、幕末維新・震災・大戦 の戦禍と幾多の困難を潜り抜けて、今日まで守り伝えられている。こうした日本の絵画にくわえ、北三井家を筆頭とした各家においては、茶の湯の美意識にのっとった墨跡や、中国の宋から元代の画家の絵画もまた、歴代にわたって珍重された。また、近代の新町三井家においては、9代当主・高堅が中国の古拓本の名品を盛んに収集し、それらは現在、聴氷閣コレクションとして世界的に知られている。 

 本展では、それらの北三井家・新町三井家旧蔵品を中心として、中国の絵画や書および、それらに倣って日本で描かれた作品を紹介。くわえて、一部の作品については、江戸時代に記された鑑定書など、付属する資料とあわせて展示している。

会期:2024年11月23日~2025年1月19日
会場:三井記念美術館
住所:東京都中央区日本橋室町2-1-1 三井本館7階
電話:050-5541-8600
開館時間:10:00~17:00(入館は閉館の30分前まで)
観覧料:一般 1200円 / 70歳以上の方 1000円 / 大学・高校生 700円 / 中学生以下 無料

「浅井忠、あちこちに行く-むすばれる人、つながる時代—」(千葉県立美術館

浅井忠 ナポリ 1902 紙、水彩 千葉県立美術館所蔵

 千葉県立美術館で、開館50周年を記念した特別展「浅井忠、あちこちに行く-むすばれる人、つながる時代—」が1月19日まで開催されている。

 近代洋画の先駆者として知られ、日本画や工芸、図案など多様な分野でも活躍した浅井忠(1856〜1907)。1974(昭和49)年の開館以来、千葉ゆかりの作家として浅井の作品収集および調査研究につとめてきた同館は、約200点の作品と絵葉書等約1500件の関係資料という、日本有数の浅井忠コレクションを有している。

 開館50周年を記念し企画された本展では、同館が所蔵する4つの日記「筑波日記」「従軍日記」「巴里日記」「フォンテーヌブロー日記」を軸に、同館所蔵の浅井作品計350点以上を一挙公開。工部美術学校在学時のデッサンやフランス時代の句集「寒月・水仙」、浅井が様々な人と交換していた絵葉書や書簡といった貴重資料の一部を作品とともに展示することで、その多岐にわたる活動に隠された、知られざる人物像に迫っている。

会期:2024年10月30日~2025年1月19日
会場:千葉県立美術館
住所:千葉県千葉市中央区中央港1-10-1
電話:043-242-8311
開館時間:9:00~16:30 ※入場は閉館の30分前まで
料金:一般 1000円 / 高校・大学生 500円 / 中学生以下無料

「Osaka Directory 8 Supported by RICHARD MILLE 谷中佑輔」(大阪中之島美術館

谷中佑輔 Pulp Physique #8 2022年 撮影:大塚敬太+稲口俊太

 大阪中之島美術館で「Osaka Directory 8 Supported by RICHARD MILLE 谷中佑輔」が開催されている。

 谷中佑輔は1988年大阪府生まれ、現在ドイツ・ベルリンに在住。2012年に京都市立芸術大学美術学部彫刻専攻を卒業し、14年に京都市立芸術大学大学院美術研究科彫刻専攻を修了した。「アートアワードトーキョー丸の内2014」グランプリ受賞、16年に京都市芸術文化特別奨励者認定。16年度にポーラ美術振興財団在外研修員としてベルリンに滞在し、以降ベルリンに拠点を構える。

 谷中はこれまで、人間身体の主体性や環境、様々な関係性のなかで身体が社会的に位置づけられるありようを、彫刻・ダンス・パフォーマンスなどで表現してきた。今回、再生医療分野のリサーチを行うなかで、谷中は発生学で研究される胚葉(胚の初期段階で形成される3つの細胞層)の身体の各組織や器官への分化・成長過程に着目。科学的知識が、人々の身体観やイメージにどのような影響を与えるかについて考察する、金属やガラスをもちいた彫刻作品を発表している。

会期:2024年12月21日~2025年1月19日
会場:大阪中之島美術館
住所:大阪府大阪市北区中之島4-3-1
電話:06-4301-7285
開館時間:10:00~17:00(入場は16:30まで)
観覧料:無料

今週開幕

「玉山拓郎: FLOOR」(豊田市美術館

玉山拓郎 MV01 2024 Photo: Kohei Omachi (W)

 愛知・豊田市の豊田市美術館で美術家・玉山拓郎の大規模個展「玉山拓郎: FLOOR」が開催される

 玉山は1990年岐阜県多治見市生まれ。絵画制作を出発点に愛知県立芸術大学で学んだのち、東京に拠点を移した。早くから立体的な造形や光、映像、音を組み合わせたインスタレーションを展開してきており、近年では「六本木クロッシング2022展:往来・オーライ!」(森美術館、東京)への参加や「NACT VIEW 01」(2022、国立新美術館、東京 ) でのプロジェクト企画、街中でのサイト・スペシフィックな展示などで注目を集めてきた。

 本展で玉山は、谷口吉生の設計による豊田市美術館の5つの展示室に、過去最大規模の作品を貫入。全面がカーペットに覆われた、彫刻とも建築ともつかない巨大な「なにか」が現れるという。順路も物語もなく、日常的なスケールがずらされた空間で、人間の経験することそのものを見つめ直すことになる。

会期:2025年1月18日〜5月18日
会場:豊田市美術館
住所:愛知県豊田市小坂本町8-5-1
開館時間:10:00〜17:30 
料金:一般 1200円 / 高校・大学生 1000円 / 中学生以下 無料

「髙橋節郎展-我逢人 われ人に逢うなり-」(豊田市美術館 髙橋節郎館

髙橋節郎 花の星座 1949年 豊田市美術館蔵

 豊田市美術館 髙橋節郎館で、髙橋節郎館のリニューアルオープンを記念した展覧会「髙橋節郎展-我逢人 われ人に逢うなり-」が開催される。会期は1月18日~5月18日。

 漆芸家である髙橋節郎(1914〜2007)の芸術を紹介する豊田市美術館 髙橋節郎館は、1995年11月11日に開館。本展は2024年1月から約1年かけて改装した髙橋節郎館の最初の展覧会となる。

 会場では髙橋の「人」と「作品」をあらためて紹介するとともに、髙橋の芸術性に影響を与えた人々にも焦点をあてる。人との出会いや縁を大切に育み、美術と工芸の枠を越えて自らの芸術の糧とした髙橋節郎という芸術家を、禅語である「我逢人(われひとにあうなり)」の言葉で言い表し、作品約50点に書簡や資料を交えて展観するものとなる。

会期:2025年1月18日~5月18日
会場:豊田市美術館 髙橋節郎館
住所:愛知県豊田市小坂本町8-5-1
電話:0565-34-6610
開館時間:10:00~17:30(入館は〜17:00)
休館日:月(2月24日、4月28日、5月5日は開館)
観覧料:一般 500円 / 高校・大学生 300円 / 中学生以下 無料

「パウル・クレー展──創造をめぐる星座」(愛知県美術館

パウル・クレー チュニスの赤い家と黄色い家 1914 パウル・クレー・センター

 愛知県美術館でパウル・クレーの大規模個展「パウル・クレー展──創造をめぐる星座」が開催される。会期は1月18日〜3月16日。本展は兵庫・神戸市の兵庫県立美術館に巡回する。会期は3月29日~5月25日

 クレー(1879〜1940)はスイス・ベルン生まれ。生前よりその独創的な画風から高い評価を受けており、現在では20世紀前半に活躍した重要な美術家のひとりとして知られている。

 本展では、スイスのパウル・クレー・センターの学術協力のもと、クレーと交流のあった芸術家の作品との比較や、当時の貴重な資料の参照を通じて、多くの人や情報が構成する星座(=コンステレーション)のなかでクレーをとらえ直し、「詩と絵画」「色彩の発見」「破壊と希望」「シュルレアリスム」「バウハウス」「新たな始まり」といった全6章で構成。その生涯にわたる創造の軌跡をたどるものとなる。

会期:1月18日〜3月16日
会場:愛知県美術館
住所:愛知県名古屋市東区東桜1-13-2
開館時間:10:00〜18:00(金〜20:00) ※入場は閉館の30分前まで
休館日:月(2月24日は開館)、2月25日
料金:一般 1800円 / 高校・大学生 1200円 / 中学生以下無料

「BUTSUDORI ブツドリ:モノをめぐる写真表現」(滋賀県立美術館

安井仲治 斧と鎌 1931 東京都写真美術館蔵

 滋賀・大津の滋賀県立美術館で写真における「ブツドリ(物撮り)」に焦点を当てた展覧会「BUTSUDORI ブツドリ:モノをめぐる写真表現」が開催される。会期は1月18日〜3月23日。

 本展のタイトルとなっている「ブツドリ(物撮り)」という言葉は、もともとは商業広告などに使う商品(モノ)を撮影することを言う。この「ブツドリ」を「物」を「撮」るという行為として広くとらえてみると、写真史の中で脈々と続いてきた重要な表現のいち形式と考えることもできる。

 本展は「モノ」を撮影することで生まれた写真作品を、この「ブツドリ」という言葉で見なおし、日本における豊かな表現の一断面を探る試みとなる。重要文化財である明治期の写真原板から、文化財写真、静物写真、広告写真、そして現代アーティストの作品まで、200 点以上の写真作品を出品される。

会期:2025年1月18日〜3月23日
会場:滋賀県立美術館
住所:滋賀県大津市瀬田南大萱町1740-1
開館時間:9:30〜17:00 
休館日:月(祝日の場合翌平日)
料金:一般 1200円 / 大学・高校生 800円 / 中学・小学生 600円

「菊池コレクション 現代陶芸のすすめ」(菊池寛実記念 智美術館

鯉江良二 証言 1982 菊池コレクション(撮影:阿部紗夕里)

 菊池寛実記念 智美術館で「菊池コレクション 現代陶芸のすすめ」展が開催される。会期は1月18日〜5月6日。

 菊池寛実記念 智美術館の設立者である菊池智(1923~2016)は、20世紀後半以降の日本の陶芸作品を精力的に収集した。1983年には自身のコレクションによる展覧会「Japanese Ceramics Today(現代日本陶芸展)」をスミソニアン国立自然史博物館のトーマス・M・エバンスギャラリー(米・ワシントン)で開催した。当時40代から50代であった作家たちの作品を中心に構成し、日米の貿易摩擦が問題となるさなかに日本の同時代の文化を紹介する展覧会が受け入れられた経験は、菊池がその後、文化事業に注力していく契機ともなった。

 本展では、同展出品作をはじめ、1970年代から80年代の作品を中心に日本の現代陶芸の展開を紹介する。

会期:2025年1月18日~5月6日
会場:菊池寛実記念 智美術館
住所:東京都港区虎ノ門4-1-35
電話:03-5733-5131
開館時間:11:00~18:00(最終入館は〜17:30)
休館日:月、2月25日(ただし、2月24日、5月5日は開館)
観覧料:一般 1100円 / 大学生 800円 / 小中高生 500円