2025.3.28

「横尾忠則 連画の河」が世田谷美術館で開催。新作油彩画約60点を展覧

東京・世田谷の世田谷美術館で、「横尾忠則 連画の河」が開催される。会期は4月26日〜6月22日。

横尾忠則 ボッスの壺 2024 作家蔵
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 多岐にわたるテーマの絵画を生み出し続けるアーティスト・横尾忠則。その個展「横尾忠則 連画の河」が世田谷美術館で開催される。会期は4月26日〜6月22日。

 横尾は1936年兵庫県生まれ。72年にニューヨーク近代美術館で個展開催。その後もパリ、ヴェネツィア、サンパウロの世界3大ビエンナーレに招待出品。アムステルダムのステデリック美術館、パリのカルティエ財団現代美術館、東京都現代美術館、東京国立博物館など、世界各国の美術館で多数の個展が開催される。2012年には神戸に横尾忠則現代美術館が、翌13年には香川県豊島に豊島横尾館が開館した。15年に高松宮殿下記念世界文化賞を受賞。23年に文化功労者、日本芸術院会員となるなど、日本を代表する作家として高く評価されている。

横尾忠則
撮影=田島一成

 本展の起点となったのは、1970年に横尾が故郷の西脇で同級生たちとともに収まる篠山紀信が撮影した写真だという。その写真は22年を経て、写真集『横尾忠則 記憶の遠近術』に収録され、序文は、1970年に自決した三島由紀夫が遺していた横尾論が飾った。

 この写真にインスピレーションを得て、横尾は1994年に《記憶の鎮魂歌》(横尾忠則現代美術館蔵)という大作を描いており、本展はこの作品から始まる。

横尾忠則 記憶の鎮魂歌 1994 横尾忠則現代美術館蔵

 続く約60点の新作には、篠山の写真や《記憶の鎮魂歌》のイメージをはじめ、広告などに登場するまったく別のグループ写真、そして川や水にまつわる物語や絵画の画像など、複数の素材に由来するイメージが入れ代わり立ち代わり登場するという。

横尾忠則 連画の河を描く 2023 作家蔵
横尾忠則 メキシカンと農夫 2024 作家蔵
横尾忠則 連画の河、タヒチに 2024 作家蔵

 横尾忠則が絵画制作を通して長らく希求してきた、「一貫したアイデンティティから解放され、変幻自在な自己と出会い続けたい」という思いが、本展では「連画」という遊びのかたちで試みられている。

 他者の言葉を引き取りつつ歌を詠み、それをまた別の他者に託すという「連歌」を、絵画によって、しかもひとりだけで、続けることはできるのか。昨日の自分を、本当に他人のように受けとめられるのか。新作群からは、その問いに横尾がどのように応答したかが見えてくるだろう。

横尾忠則 郷愁 2024 作家蔵
横尾忠則 The end of life is moral 2024 作家蔵

 なお、会期中には講演会「横尾忠則、連画の魅力」(講師:建畠晢)のほか、横尾も出演した映画『Mishima: A Life in Four Chapters』(日本未公開)のために作曲家フィリップ・グラスが創造した楽曲を、日本初演となるピアノ・ソロ完全版で滑川真希が演奏するコンサート「Yokoo × Mishima × Glass」、テリー・ライリーとSARAが閉館後の美術館で行う即興ライブ「Terry Riley & SARA - Musica Geometrica Sagrada -」なども予定されているので、あわせてチェックしてほしい。

テリー・ライリー 2022年、豊島横尾館にて
© Masahiro Ikeda