2025.7.11

今週末に見たい展覧会ベスト8。アンゼルム・キーファーから大正イマジュリィ、ネルホル展まで

今週閉幕する/開幕した展覧会のなかから、とくに注目したいものをピックアップしてお届け。なお、最新情報は各館公式サイトを参照してほしい。

「Anselm Kiefer: Two Paintings」展の展示風景より Photo by Ryuichi Maruo. Courtesy of Fergus McCaffrey
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もうすぐ閉幕

アンゼルム・キーファー「Two Paintings」(ファーガス・マカフリー東京) 

展示風景より Photo by Ryuichi Maruo. Courtesy of Fergus McCaffrey

 今年6月まで京都の世界遺産・二条城で個展「アンゼルム・キーファー:ソラリス」を開催したアンゼルム・キーファー。同展と並行してキーファーによる個展「Two Paintings」が、ファーガス・マカフリー東京で7月12日まで開催されている。

 二条城での個展の準備期間、キーファーはとくに2点の絵画《E. T. A. ホフマンのために》(2015-24)と《er hexte eine Schlange aus dem Wasser》(2016)の呼応に強く心を惹かれたという。静かな水面に映る牧歌的な風景と、蛇の彫刻からなるこれらの絵画では、金、ウルトラマリン、黄土色、柔らかな白が使われ、2点は自然光が差し込むファーガス・マカフリー東京の展示空間で共鳴している。

 日本文化において蛇は知恵、富、変容、再生、更新の象徴であり、神々の使者ともされている。干支の「蛇」にあたる今年こそ、この初公開の大作2点をぜひ堪能してほしい。

会期:2025年4月2日~7月12日
会場:ファーガス・マカフリー東京
住所:東京都港区北青山3-5-9
電話番号:03-6447-2660
開館時間:11:00~19:00
料金:無料

今週開幕

「喜如嘉の芭蕉布展」(国立工芸館) 

 金沢の国立工芸館で、「喜如嘉の芭蕉布展」が7月11日から開催される。

 「沖縄の風土が生んだもっとも沖縄らしい織物」といわれる芭蕉布だが、現在、沖縄本島の大宜味村喜如嘉でその製法が伝承されるのみになっている。本展は、重要無形文化財の指定から50周年を記念して、芭蕉布の技術復興に尽力した人間国宝、故・平良敏子とその工房の作品を中心に、芭蕉布の歴史的名品もあわせ展示し、その魅力を紹介するものとなる。

会期:2025年7月11日~8月24日
会場:国立工芸館
住所:石川県金沢市出羽町3-2
電話番号:050-5541-8600
開館時間:09:30~17:30(7月18日~8月16日の金土は~20:00) ※入館は閉館30分前まで
休館日:月(ただし7月21日、8月11日は開館)、7月22日、8月12日
料金:一般 900円 / 大学生 600円 / 高校生 400円 / 中学生以下、障害者手帳をお持ちの方とその付添者1名 無料

「難波田龍起」(東京オペラシティ アートギャラリー) 

難波田龍起 昇天 1976 東京国立近代美術館蔵 撮影=大谷一郎

 東京オペラシティ アートギャラリーで、「難波田龍起」が7月11日に開幕する。

 難波田龍起(1905〜1997)は、戦前から画業を始め、戦後は日本における抽象絵画のパイオニアとして大きな足跡を残した。大正末期に詩と哲学に関心を持つ青年として高村光太郎と出会い、その薫陶を受けるなかで画家を志した難波田は、身近な風景やいにしえの時代への憧れを描くことで画業を開始。戦後になると抽象へと制作を進め、海外から流入する最新の動向を咀嚼しながらも情報に流されず、また特定の運動に属することもなく、独自の道を歩んだ。

 本展は、難波田の生誕120年を機に、同館収蔵品をはじめ、国内の美術館の所蔵品、また個人蔵の作品なども交え、難波田の画業の全貌を四半世紀ぶりに紹介するもの。今日的な視点から難波田の活動を検証する。

会期:2025年7月11日~10月2日
会場:東京オペラシティ アートギャラリー
住所:東京都新宿区西新宿3-20-2
電話番号:050-5541-8600
開館時間:11:00~19:00 ※入場は閉館30分前まで
休館日:月(ただし、7月21日、8月11日、9月15日は開館)、7月22日、8月3日、8月12日、9月16日
料金:一般 1600円 / 大学・高校生 1000円 / 中学生以下、障害者手帳・指定難病受給者証等をお持ちの方および付添の方1名 無料

「ポップ・アート 時代を変えた4⼈」(⼭梨県⽴美術館) 

 ⼭梨・甲府にある⼭梨県⽴美術館で、1960 年代のアメリカなどを中⼼に発展した芸術動向である「ポップ・アート」を取り上げる特別展「ポップ・アート 時代を変えた4⼈」が7月12日から開催される。

 「ポップ・アート」とは、⼤量⽣産された商品、広告やコミック、著名⼈のポートレイトなど、誰もが知っているものをモチーフとする特徴がある。現代⽣活や⼤衆⽂化をテーマとした作品は⾊鮮やかに、ときに社会⾵刺的に表現され、20世紀以降の芸術に大きく影響を与えた芸術動向である。

 本展の展⽰作品は、スペイン出⾝のコレクターであるホセルイス・ルペレスが所蔵する版画やポスター約120点で構成され、すべて⽇本初公開となる。展示は全12章構成となっており、なかでもロイ・リキテンスタインジャスパー・ジョーンズ、ロバート・ラウシェンバーグ、アンディ・ウォーホルといったアメリカのポップ・アートを代表する4名のアーティストを中心とした展示となる。

会期:2025年7⽉12⽇~8⽉24⽇
会場:⼭梨県⽴美術館 特別展⽰室
住所:⼭梨県甲府市貢川 1-4-27
電話番号:055-228-3322 
開館時間:9:00~17:00 ※入館は閉館の30分前まで 
休館日:7⽉14⽇、22⽇、28⽇、8⽉4日、18⽇
料金:一般 1000円 / 大学生 500円 / 65歳以上・高校生以下無料

「大正イマジュリィの世界 デザインとイラストレーションの青春 1900s-1930s」(SOMPO美術館) 

 新宿にあるSOMPO美術館で、印刷技術の革新が進んだ大正時代の独特なデザインやイラストレーションに焦点を当てた「大正イマジュリィの世界 デザインとイラストレーションの青春 1900s-1930s」が7月12日から開催される。

 「イマジュリィ」とはフランス語で、ある時代やジャンルに特徴的なイメージ群のこと。1900年代から30年代の日本には、西洋から新しい複製技術が次々に到来し、雑誌や絵葉書、ポスター、写真などに新鮮で魅力的なイメージがあふれた。これらの大衆的複製物は「大正イマジュリィ」と総称され、2004年に学会が結成された。

 その大正イマジュリィ学会の創立会員・役員を務め、近代文学や出版文化の収集・研究を行った山田俊幸が監修した本展。山田の収集品のなかでもとくに大正時代を中心とする約330点が展示される。

会期:2025年7月12日~8月31日
会場:SOMPO美術館
住所:東京都新宿区西新宿1-26-1
電話番号:050-5541-8600
開館時間:10:00~18:00(金〜20:00) ※入館は閉館の30分前まで
休館日:月(ただし、7月21日、8月11日は開館)、7月22日、8月12日
料金:一般 1500円 / 25歳以下 1100円 / 小中高生、障がい者手帳をお持ちの方 無料

「『深宇宙展~人類はどこへ向かうのか』To the Moon and Beyond」(日本科学未来館) 

 日本科学未来館で、特別展「『深宇宙展~人類はどこへ向かうのか』To the Moon and Beyond」が7月12日に開幕する。

 本展は、JAXA、国立天文台、東京大学をはじめとする日本の主要な宇宙研究開発機関に加え、宇宙開発に携わる多くの企業・団体の協力により実現するものとなる。アルテミス計画のために日本が開発している有人月面探査車「有人与圧ローバー」の実物大模型を世界で初公開するほか、「はやぶさ」「はやぶさ2」が持ち帰った貴重な粒子や「H3ロケット」の最先端部フェアリングの実物大模型、大画面で体感する火星ツアー、最新宇宙探査技術とその成果など、新時代の取り組みを一堂に集結させて紹介するという。

会期:2025年7月12日~9月28日
会場:日本科学未来館
住所:東京都江東区青海2-3-6
電話番号:03-3570-9151(代表)
開館時間:10:00~17:00 ※入場は閉館の30分前まで
休館日:7月15日、9月2日、9月9日、9月16日
料金:大人(19歳以上)2200円 / 18歳以下(中学生以上)1400円 / 小学生以下(4歳以上)700円 / 3歳以下 無料

「ピクチャレスク陶芸 アートを楽しむやきもの ―『民藝』から現代まで」(パナソニック汐留美術館) 

ピクチャレスク

 パナソニック汐留美術館で「ピクチャレスク陶芸 アートを楽しむやきもの ―『民藝』から現代まで」が7月12日から開催される。

 近現代の陶芸をテーマとした企画展を継続して開催してきた同館。本展は、陶芸と絵画的表現の交差に焦点をあて、アートとしての魅力を探るものだ。様々な陶芸作品の色やかたち、モチーフから、ときにジャンルを横断して創作に挑む作者の思考や芸術観を紡ぎ出すことを試みる。

 個人作家による創作陶芸の礎を築いたとされる富本憲吉やバーナード・リーチ、民藝運動を推進したことでも知られる河井寬次郎や濱田庄司に始まり、伝統的な技術を革新した陶芸家、前衛陶芸の旗手、茶陶の名手、イギリスやデンマークの作家、1960年代から80年代生まれのアーティストまで、約50名の作家が並ぶ。総計約120作品による新たな共演を堪能してほしい。

会期:2025年7月12日~9月15日
会場:パナソニック汐留美術館
住所:東京都港区東新橋1-5-1 パナソニック東京汐留ビル4階
電話番号:050-5541-8600
開館時間:10:00~18:00(8月1日、8月29日、9月12日、9月13日は〜20:00) ※入館は閉館30分前まで。土日祝は日時指定予約制
休館日:水(ただし、9月10日は開館)、8月12日~8月15日
料金:一般 1200円 / 65歳以上 1100円 / 大学・高校生 700円 / 中学生以下、障がい者手帳をご提示の方および付添者1名まで 無料

「Nerhol 種蒔きと烏 Misreading Righteousness」(埼玉県立近代美術館

 埼玉県立近代美術館で、アーティストデュオ・Nerhol(ネルホル)の展覧会「Nerhol 種蒔きと烏 Misreading Righteousness」が7月12日から開催される。

 本展は、ネルホルの最新作および未発表作を含む約80点を通じて、彼らの多層的な探究の現在地を紹介する。ネルホルは、グラフィックデザイナーの田中義久と彫刻家の飯田竜太により2007年に結成され、写真と彫刻、可視と不可視、自然と社会といった多様な領域を横断しながら独自の表現を展開してきた。近年は、他者の思想や異なる分野と接続することで、表現の深度と射程をさらに広げている。

 タイトルに掲げられた「種蒔きと烏」は、行為の正しさや意味を一義的にとらえることへの問いを含み、ネルホルの一貫した視点を象徴する。本展では、物事の二面性や揺らぎに焦点を当て、見る者の日常の感覚に静かな揺さぶりをもたらす作品群が展開される。

会期:2025年7月12日~10月13日
会場:埼玉県立近代美術館
住所:埼玉県さいたま市浦和区常盤9-30-1
電話番号:048-824-0111
開館時間:10:00 ~ 17:30 ※入館は閉館30分前まで
休館日:月(ただし、7月21日、8月11日、9月15日、10月13日は開館)
料金:一般 1400円 / 大学・高校生 1120円 / 中学生以下、障がい者手帳をご提示の方および付添者1名まで 無料