2025.3.26

ナン・ゴールディンが2025年「ウーマン・イン・モーション」フォトグラフィー・アワードを受賞

ナン・ゴールディンが第56回アルル国際写真フェスティバルの「ウーマン・イン・モーション」フォトグラフィー・アワードを受賞する。

ナン・ゴールディン

 今年年7月7日から10月5日まで開催される第56回アルル国際写真フェスティバルにおいて、米国人アーティストのナン・ゴールディンに「ウーマン・イン・モーション」フォトグラフィー・アワードが授与されることが決定した。

 同賞は、グッチやサンローランなどを擁するグローバル・ラグジュアリー・グループ「ケリング」が2019年に創設したもので、第一線で活躍する女性写真家のキャリアに敬意を表すことを目的としている。受賞作家の作品はアルル国際写真フェスティバルのコレクションに収蔵され、その対価が受賞者に支払われる。

 これまで、「ウーマン・イン・モーション」フォトグラフィー・アワードはこれまでスーザン・マイゼラス(2019)、サビーヌ・ヴァイス(2020)、リズ・ジョンソン・アルトゥール(2021)、バベット・マンゴルト(2022)、ロザンジェラ・レンノ(2023)、石内都(2024)が受賞してきた。

 今年の受賞作家であるナン・ゴールディンは1953年米国ワシントンD.C.生まれ。70年代よりLGBTの友人たちや、世界を席巻したHIV/AIDSの危機を記録した写真家として知られている。そのいっぽう、自身のオピオイド中毒の経験を受けて「P.A.I.N.」(Prescription Addiction Intervention Now)という団体を設立し、オピオイド中毒問題の事態改善を訴える活動でも知られている。近年では、その人生や活動を追うドキュメンタリー映画『美と殺戮のすべて(All the Beauty and the Bloodshed)』(2022)が、第95回アカデミー賞の長編ドキュメンタリー賞にノミネートされ話題を集めた。

 また6つのスライドショーからなる回顧展「This Will Not End Well」が22年秋にストックホルム近代美術館で開催されたのを皮切りに、アムステルダム市立美術館、ベルリンの新国立美術館を巡回。今年秋にはミラノのピレリハンガービコッカと続き、26年にパリのグラン・パレで幕を閉じる。フランス文化省から芸術文化勲章コマンドゥール(2006)を受章したほか、ハッセルブラッド国際写真賞(2007)、エドワード・マクダウェル・メダル(2012)など数々の賞を受賞している。

 今年のアルル国際写真フェスティバルで展示される《Syndrome de Stendhal》はスライドショー形式の作品であり、古典、ルネサンス、バロックの名作とナン・ゴールディンの友人や恋人のポートレートを並置するものだ。「ウーマン・イン・モーション」による支援のもと、アルルのサン・ブレーズ教会で展示される。ナン・ゴールディンは今回の受賞について、次のようなコメントを寄せている。

 「このような賞をいただけて大変光栄です。私が敬愛し、尊敬する偉大な女性写真家たちと並び立つことができることを誇りに思います。アルルには長年にわたるつながりがあり、とくに1980年代、駆け出し時代の私自身と作品に計り知れない影響を与えた場所です。それ以来、アルルには何度か足を運んでいますが、また戻ることができて感激しています」。