2025.8.5

アーティゾン美術館、レイチェル・ホワイトリードの新たな屋外彫刻を公開

アーティゾン美術館が、イギリスの現代美術家レイチェル・ホワイトリードによる新たな屋外彫刻作品《Artizon Conversations》を公開した。

レイチェル・ホワイトリード Artizon Conversations 2025 大理石、インスタレーション © Rachel Whiteread
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 アーティゾン美術館が、イギリスを代表する現代美術家レイチェル・ホワイトリードによる新たな屋外彫刻作品《Artizon Conversations》を公開した。

 同館では2010年頃から、美術館の移転・新設に伴う都市空間の再構築とともに、「まちに開かれた芸術・文化拠点」の形成を目指して、屋外彫刻の在り方について検討を重ねてきた。その結果、国際的に高い評価を受けるホワイトリードと、オーストラリア出身の作家リンディ・リーの2名に新作の制作を依頼するプロジェクトが始動。今回完成したホワイトリードの作品は、その第1弾となる。

レイチェル・ホワイトリード Artizon Conversations 2025 大理石、インスタレーション © Rachel Whiteread

 《Artizon Conversations》は、椅子の座面と脚の「間(あいだ)」にある空間=ネガティブ・スペースを型取りし、大理石で制作されたインスタレーション作品。日本国内で採取された希少な大理石を素材としており、同作家の代表作《Untitled (One Hundred Spaces)》(1995)から続くシリーズの最新作にあたる。シリーズ作品としては初めて、恒久的に公共空間に展示される点でも注目される。

 作品は、ミュージアムタワー京橋とTODA BUILDINGのあいだに設置され、訪れる人が実際に腰かけることも可能。都市の日常における「一時の静けさ」や「対話の場」を創出することを目指しており、建築と彫刻の関係性に注目してきたホワイトリードの思想が反映されている。

レイチェル・ホワイトリード Artizon Conversations 2025 大理石、インスタレーション © Rachel Whiteread

 作家は本作について、次のようなコメントを寄せている。「2つの建物の間の通り道は、常に建築物と彫刻との関係性に関心を寄せてきた私にとって、一度立ち止まり、誰かと話を交わす場所について思いを巡らせる機会となりました。静かな彫刻と人が活動する空間の交差するところ、つまり、ひとりきりになれる、もしくは親しい人と共にいることができる場所となることを想像しました」。

レイチェル・ホワイトリード Artizon Conversations 2025 大理石、インスタレーション © Rachel Whiteread

 レイチェル・ホワイトリードは1963年ロンドン生まれ。93年に女性として初めてターナー賞を受賞し、空間や記憶、痕跡といったテーマにアプローチする作品で知られる。ネガティブ・スペースを彫刻として可視化する独自の技法により、国際的な美術館で多数の個展を開催。近年はイタリア・ベルガモ近現代美術館での新作や、東京・銀座のジル サンダー店舗での恒久設置作品も話題を呼んだ。

レイチェル・ホワイトリード Artizon Conversations 2025 大理石、インスタレーション © Rachel Whiteread

 なお、本プロジェクトの第2弾として、2026年1月にはリンディ・リーによる新作彫刻の常設展示も予定されている。中国系オーストラリア人の背景を持つリーは、道教や禅への関心をもとに、自然や宇宙とのつながりをテーマにした制作を行っており、日本での恒久設置は今回が初となる。

 さらに、プロジェクトの締めくくりとして、2026年3月にはホワイトリードとリーの両作家を招いたトークイベントも予定されており、それぞれの作品の背景や都市空間との関係性について語られる予定だ。