2025.9.26

重要文化財「旧奈良監獄」を活用。星野リゾートが「奈良監獄ミュージアム」を開館へ

星野リゾートが、重要文化財「旧奈良監獄」の保存活用事業として2026年4月27日に「奈良監獄ミュージアム」を開館させる。

旧奈良監獄 表門 
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 星野リゾートが、重要文化財「旧奈良監獄」の保存活用事業として、2026年4月27日に奈良県・奈良市で「奈良監獄ミュージアム」を開館させることを明らかにした。

 1908年に建てられた旧奈良監獄は、明治政府によって計画された五大監獄(長崎監獄、金沢監獄、千葉監獄、鹿児島監獄)のうち、唯一現存するもの。設計者は、数多くの裁判所や監獄の建設に関与した山下啓次郎。1946年(昭和21)年には「奈良少年刑務所」と改名し、その後、歴史的価値と美しい建築の意匠が高く評価され、2017年に国の重要文化財に指定された。

上空写真(平成31年時点)

 ミュージアムのコンセプトは「美しき監獄からの問いかけ」。明治時代における近代化の背景と美しい建築とともに、監獄という「規律」が支配する空間での「問いかけ」を受けて、自由について考えを巡らす体験を提供したいという思いから考案されたという。

 館内は第三寮や看守所など、当時の状態を残した「保存エリア」に加え、3つの展示棟(A棟:歴史と建築、B棟:身体と心、C棟:監獄と社会)とカフェとショップが併設された「展示エリア」で構成。とくにC棟では開館時、国内外で活動するアーティストが監獄から受けたインスピレーションとそれぞれの感性で制作した作品を展開する予定となっている。

中央看守所
展示エリア イメージ
A棟 イメージ
B棟 イメージ

 なお、同館は星野リゾートにとっては初のミュージアム事業。それを支えるクリエーター陣として、アートディレクターに21_21 DESIGN SIGHT ディレクター兼館長である佐藤卓が就任した。

魅力的で貴重な建築として残る奈良監獄をミュージアムにするという企画の面白さにまず惹き込まれました。私が長年取り組んできたデザインの視点で物事を解剖する手法も取り入れながら、時間を掛けて内容を詰めてきました。罪と罰を考察すると、自由とは何かという深い世界にも触れることになり、様々な角度から試行錯誤を繰り返してきました。そして現代の刑務所もあるべき姿を模索し続けていることをこの仕事で知りました。来館者の皆様に、様々な問い掛けをする展示になっていれば幸いです。(佐藤のコメント、プレスリリースより)
奈良監獄ミュージアム シンボルマーク

 また「Museography Supervisor」として、ルーヴル美術館ランス別館や、ロイヤル・アカデミーなど、世界13ヶ所以上の美術館の常設展示デザインを手がけてきたアドリアン・ガルデールが参加する。

これまでの知見を余すことなく活用して、奈良監獄のコンテキストを読み解き、そして紡ぎながら「建築遺産」を「ミュージアム」として生まれ変わらせることに取り組みました。世界に展開したハビランドシステムの歴史、刑務所での被収容者の体験を知り想像することは、人々の普遍的なテーマについて考える糸口を提供し、それらを巡るジャーニーは訪れる皆様を惹きつける体験になるでしょう。皆様の来館を心よりお待ちしております。(ガルデールのコメント、プレスリリースより)

 なお星野リゾートはこの旧奈良監獄の敷地内で、奈良監獄ミュージアムと付帯のホテル事業を展開。2026年に、ラグジュアリーホテル「星のや奈良監獄」の開業も予定している。