マーケットに初登場。ヴォルフガング・ティルマンスの写真作品群がクリスティーズで競売へ
クリスティーズが、ヴォルフガング・ティルマンスによる15点のアイコニックな写真作品をオークションで提供する。プライベートコレクションから出品されるこれらの作品は、ティルマンスのキャリアにおける重要な変革の時期を映し出したものだ。

マーケットに初めて出回るヴォルフガング・ティルマンスのアイコニックな写真作品15点が、クリスティーズのオークションに出品される。
プライベートコレクションから出品されるこれらの作品は、ティルマンスの1990年代の写真作品が中心となっており、そのキャリアにおける重要な変革の時期を映し出している。1989年のベルリンの壁崩壊や93年の欧州連合の発足といった重大な歴史的出来事と密接に関連し、その時代の文化的変化と個人のアイデンティティの形成を反映している。

コレクションのなかでとくに注目すべき作品には、日常の美しさをとらえた《Summerstill life》(1995)や、乱雑な部屋のなかに潜む芸術的なエレガンスを表現した《Kitchen - after party》(1992)がある。これらの作品は、ティルマンスがいかにして日常の風景を詩的なコンポジションへと昇華させるかを示しており、また《JAL》(1997)や《Concorde》(1996)といった作品は、90年代の技術的進歩を精緻に記録したものだ。

ポートレイトの分野でもティルマンスは多くの文化的アイコンをとらえ、とくに《Kate Sitting》(1996)は、90年代のクールで無造作なファッション感覚を体現するケイト・モスの肖像として高く評価されている。また、親しい友人を描いた《Joy Ray》(1990)は、よりコンセプチュアルなアプローチをとっており、《me in the shower》(1990)では、22歳の自らの姿をカメラのレンズに滴る水滴とともにとらえ、写真家と被写体との微妙な関係を反映させた。


さらに、《Urgency XIX》(2006)という作品はティルマンスのカメラレス写真技法を駆使した作品であり、光の曝露を使って抽象的な光の軌跡を描くことで、感情的な力を呼び起こす。2000年のターナー賞を受賞した後に制作されたこの作品は、ティルマンスの芸術的な進化を示す重要な一作であり、写真の可能性を限りなく広げる試みとして位置づけられている。

これらの作品は、2月26日から始まる戦後およびコンテンポラリーアートのオンラインセールおよび3月6日に開催されるデイセールで提供される。作品の予想落札価格は3000ポンド〜12万ポンド(約57万円〜2300万円)。オークションに先立ち、「Wolfgang Tillmans: The Way We Look」と題された展示は2月12日〜14日、17日〜21日の会期でロンドンのクリスティーズ・キング・ストリートにて行われる。
クリスティーズ・ロンドンの20・21世紀アート部門の副会長および戦後・コンテンポラリーアートのヨーロッパ担当であるキャサリン・アーノルドは声明文で、次のようにコメントしている。「ヴォルフガング・ティルマンスの写真作品は、ひとつの時代を象徴するだけでなく、彼の写真に対する革新的なアプローチを浮き彫りにしている。ティルマンスは、レンズを通して親密さ、つながり、そして日常生活の美しさを追求しながら、同時に写真というメディアの限界に挑んでいる。これらの作品は、社会における個人の役割と、より広範な社会構造の両方に語りかける写真の力に対する彼の関心を反映している」。
