2025.5.9

100億円超のジャコメッティ、未公開のバスキア、秘蔵のリキテンスタイン。サザビーズが5月NYオークションの全貌を発表

サザビーズが、5月にニューヨークで開催されるモダンおよびコンテンポラリー・アートのオークションシリーズの全貌を発表。ジャコメッティの重要彫刻を筆頭に、バスキア、ピカソ、リキテンスタインなど、近現代美術を代表する作家たちの名品が一堂に会する。

ジャン=ミシェル・バスキア Untitled 1981 All images courtesy of Sotheby's
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 5月13日から16日にかけてサザビーズ・ニューヨークで開催される5月の主要オークション。そのハイライトが発表された。

 今季のオークション全体のハイライトとして注目を集めているのが、アルベルト・ジャコメッティによる《Grande tête mince(大きな細面の頭)》(1955)だ。本作は作家自身による手彩色が施されたブロンズ彫刻で、ジャコメッティ作品としてはもちろん、近年市場に出たすべての彫刻作品のなかでも最重要級に位置づけられる。推定落札価格は7000万ドル(約102億円)超とされ、5月13日に開催される「Modern Evening Auction」の中心を担う。

アルベルト・ジャコメッティ Grande tête mince 1955

 同オークションには、印象派、ポスト印象派、オルフィスム、シュルレアリスム、アメリカン・モダニズム、抽象表現主義といった幅広い美術運動の名品が集結。パブロ・ピカソによる《Homme assis(座る男)》(1969)は、彼の晩年の作品のなかでもとくに抽象的かつ記念碑的なものであり、推定価格は1200万〜1800万ドル(約18億〜26億円)とされている。

パブロ・ピカソ Homme assis 1969

 また、70年以上市場に出なかったポール・シニャックによる輝かしい色彩の風景画《Saint-Georges. Couchant (Venise)》(1905)が初出品されるほか、ロルフ&マルギット・ワインバーグ夫妻による秘蔵コレクションからは、ポール・セザンヌによる《Portrait de Madame Cézanne(マダム・セザンヌの肖像)》(1877/推定500万〜700万ドル、約7億〜10億円)、アンリ・マティスによる宝石のような小品《Le Bras(腕)》(1938/推定400万〜600万ドル、約6億〜9億円)なども出品される。

ポール・シニャック Saint-Georges. Couchant (Venise) 1905
ポール・セザンヌ Portrait de Madame Cézanne 1877

 サンフランシスコ近代美術館(SFMOMA)からは、アレクサンダー・カルダーによる大型モビール《Four Big Dots》(1963/推定600万〜800万ドル、約9億〜12億円)や、マティスがニースで制作した油彩《Le Bouquet d’anémones(アネモネの花束)》(1918/推定100万〜150万ドル、約1.5億〜2.2億円)などが、収蔵品購入のための資金として出品される。

アレクサンダー・カルダー Four Big Dots 1963
アンリ・マティス Le Bouquet d’anémones 1918

 いっぽう、5月15日に開催される「The Now & Contemporary Evening Auction」では、ジャン=ミシェル・バスキアの初期作品《Untitled》(1981)がハイライトとなっている。横幅1.5メートルを超える本作は、ストリートアーティストとしての出発点からメインストリームの美術界へと急成長を遂げた20歳当時に描かれた重要作で、1989年以来同一個人のコレクションに保管されてきたもの。長らく公開されておらず、今回の登場は美術界にとって特筆すべき出来事となる。推定価格は1000万〜1500万ドル(約15億〜22億円)。

ジャン=ミシェル・バスキア Untitled 1981

 さらに本オークションでは、ポップ・アートの巨匠ロイ・リキテンスタインの作品群が、彼自身と妻ドロシーの個人コレクションから40点以上出品される。絵画、彫刻、ドローイング、版画、コラージュを含むこのグループは、推定総額3500万ドル(約51億円)以上とされ、リキテンスタインの制作の軌跡を40年にわたってたどることができる。

アンディ・ウォーホル Flowers 1964
ゲルハルト・リヒター Abstraktes Bild 1990

 また、ダニエラ・ルクセンブルク・コレクションからは「Im Spazio(イン・スパツィオ)」と題した15点の選抜作品が登場。戦後イタリアとアメリカの前衛を象徴するこのグループの中心を成すのが、ルーチョ・フォンタナによる《Concetto spaziale, La Fine di Dio(空間概念・神の終焉)》(1963)で、推定価格は1200万〜1800万ドル(約18億〜26億円)。

ルーチョ・フォンタナ Concetto spaziale, La Fine di Dio 1963

 加えて、SFMOMA所蔵のフランク・ステラによる《Adelante》(1964/推定1000万〜1500万ドル、約15億〜22億円)、エド・ルシェ(推定700万〜1000万ドル、約10億〜15億円)、ロバート・ラウシェンバーグ(推定800万〜1200万ドル、約12億〜18億円)らの作品、そしてマイケル・アーミテージやダニエル・マッキニーといった注目の現代アーティストによる作品もラインナップされている。

フランク・ステラ Adelante 1964
エド・ルシェ That Was Then This Is Now 1989

 モダンおよびコンテンポラリー・アート・オークションのすべての出品作品は、5月15日までサザビーズ・ニューヨーク本社にて一般公開中。なお、これらのオークションとは別に、「サンダース・コレクション」と題されたオールド・マスターの特別セールも5月21日に開催予定だ。57点からなる同コレクションは総額7800万〜1億1400万ドル(約114億〜166億円)と見込まれている。