ピカソのアジア記録が更新。クリスティーズ香港イブニングセールが約109億円の売上を達成
クリスティーズが9月26日、「20・21世紀美術イブニングセール」を開催し、総額5億6564万9000香港ドル(約109億円)の売上を記録した。38点の出品作品のうち35点が落札され、ピカソの《Buste de femme》は約37.8億円で競り落とされアジアにおけるピカソ作品の最高落札額記録を更新した。

クリスティーズが香港のザ・ヘンダーソンへの拠点移転1周年を迎えた9月26日、「20・21世紀美術イブニングセール」が開催され、総額5億6564万9000香港ドル(約7303万米ドル/約109億円)の売上を記録した。38点の出品作品のうち35点が落札され、ハンマープライスの合計は最低予想落札価格の116パーセントを上回る結果となった。
本セールの白眉となったのは、パブロ・ピカソ《Buste de femme》の落札である。約15分に及ぶ白熱した電話入札の末、予想落札価格8600万〜1億600万香港ドルに対してハンマープライス1億6700万香港ドル/手数料込み1億9675万香港ドル(約37億8000万円)で落札され、アジアにおけるピカソ作品の最高落札額記録を更新した。本作はナチス占領下のパリ末期である1944年に制作されたもので、ピカソのミューズであったドラ・マールを描いた肖像のなかでも、近年市場に現れた作品のなかで最大級のサイズと完成度を誇る一点だ。前回オークションに登場したのは25年以上前であり、久々の市場登場が世界中の注目を集めた。

同作について、クリスティーズ アジア太平洋地域20・21世紀美術部門イブニングセール責任者のエイダ・ツイは「この結果は私たちの予想を超えるものでした。コレクターは真の傑作を求め、価格に関わらず競り合っていた。3倍の入札単位で競争が起こる場面もあった」とコメントしている。また、この落札結果はピカソ作品としての記録にとどまらず、クリスティーズが今年世界各地で開催した20・21世紀美術セールのなかでも6番目に高額な落札例ともなった。
本セールでは、ザオ・ウーキーの《17.3.63》が最低予想落札価格7000万香港ドルで落札され、手数料込みで8520万香港ドル(約16億3700万円)となった。本作はザオが国際的な評価を確立し始めた1960年代初頭に制作されたもので、65年にはドイツ・エッセンのフォルクヴァング美術館で開催された初の回顧展にも出品された。1960年代に制作された赤を主調とする大作はわずか19点しか現存せず、そのうちオークションに出ていないのは本作を含めて8点のみという希少性の高い一作である。

この結果により、今年アジアで落札された作品のうちもっとも高額なトップ3すべてをクリスティーズが手がけたことになる。3月のイブニングセールで1億1262万香港ドルで落札されたジャン=ミシェル・バスキアの作品とあわせ、アジア市場における同社の存在感を改めて印象づける結果となった。