「黙然たる反骨 安藤照 ―没後・戦後80年 忠犬ハチ公像をつくった彫刻家―」展(渋谷区立松濤美術館)開幕レポート。自身の芸術を淡々と貫いた作家の生き様に迫る
東京・渋谷にある渋谷区立松濤美術館で、「黙然たる反骨 安藤照 ―没後・戦後80年 忠犬ハチ公像をつくった彫刻家―」が開幕した。会期は8月17日まで。

東京・渋谷にある渋谷区立松濤美術館で、渋谷駅前の初代の忠犬ハチ公像をつくったことで知られる彫刻家・安藤照の没後80年を記念した展覧会「黙然たる反骨 安藤照 ―没後・戦後80年 忠犬ハチ公像をつくった彫刻家―」が開幕した。会期は8月17日まで。
安藤照は1892年鹿児島県鹿児島市生まれ。1917年に東京美術学校(現・東京藝術大学)に入学し、在学中の 1921年に帝国美術院展覧会(帝展)で彫刻家としてデビューした。翌年に帝展特選、そして1926年には帝国美術院賞を受賞、その翌年には帝展彫刻部の審査員に任命されるなど、早くからその実力を認められていた。1929年には自身が旗振り役となり、中堅彫刻家の作品研究の場として「塊人社」を結成。その後、1934年には《忠犬ハチ公像》、1937年には《西郷隆盛像》を制作するなど、現代に生きる我々にも馴染み深い作品を手がけた。
しかし作品がよく知られているのにもかかわらず、作家である安藤の存在はいままであまり語られる機会がなかった。それは安藤が生きた時代が戦禍に巻き込まれたことにも関係しているだろう。
本展は、安藤の没後80年を記念して、これまで《忠犬ハチ公像》の影に隠れ、語られる機会の少なかった安藤の生涯について紐解く展示となる。戦火をのがれた現存作品約30点やその関連する作家の作品を、全5章を通じてたどる構成だ。