最大規模の回顧展。「没後50年 髙島野十郎展」に見るその核心
美術団体や画壇にも属さず、ただひたすら独自の写実表現を探求し続けた高島野十郎(1890〜1975)。その過去最大規模の巡回展「没後50年 髙島野十郎展」が、千葉県県立美術館から幕を開けた。

高島野十郎(1890〜1975)は、没後10年を経てようやく本格的に評価が始まった異色の画家である。福岡県久留米市の酒造家に生まれ、東京帝国大学農学部水産学科を首席で卒業しながらも、家業や安定した将来を捨てて画家の道を選んだ。美術団体や画壇にも属さず、ただひたすら独自の写実表現を探求し続けた。その生涯は一見「孤高」に見えながらも、自然や人、社会との関わり合いの中で深く世界を見つめたものであった。今回の「没後50年 髙島野十郎展」は、そんな野十郎の全貌を探る最大規模の回顧展である。約150点の油彩・水彩・素描を中心に、書簡や日記、記録写真などの資料も豊富に揃い、野十郎芸術の核心に迫る構成となっている。

プロローグ「野十郎とはだれか」では、彼の生い立ちと歩み、そして芸術の出発点が丁寧にたどられる。名古屋の旧制八高から東大農学部へと進み、社会の期待を一身に背負いながらも、自身の良心に従い絵を志す姿勢には、早くから既存の枠組みにとらわれない誠実さが感じられる。ヨーロッパ留学や、上京・疎開・移住を重ねるなかで、多様な土地と人との出会いが、画業の礎となった。