津野青嵐「共にあれない体」(金沢21世紀美術館)開幕レポート。服から考える身体との付き合い方
金沢21世紀美術館で、ファッションデザイナー・津野青嵐の個展「アペルト20 津野青嵐 共にあれない体」が開幕した。会期は2026年4月12日まで。会場の様子をレポートする。

石川・金沢の金沢21世紀美術館で「アペルト20 津野青嵐 共にあれない体」が開幕した。会期は2026年4月12日まで。担当は同館キュレーターの池田あゆみ。
津野青嵐は、精神科病院で看護師として働くかたわらで、デザインを学んだファッションデザイナー。3Dペンで描くように制作した樹脂製のドレスで国際的に注目を集めたのち、精神障害等をかかえた当事者の地域活動拠点「浦河べてるの家」での勤務を経て、現在は大学院で身体に関する当事者研究を行っている。本展は、服づくりを通して精神、身体との付きあい方を模索してきた津野の実践を、新作を含む作品やワークショップを通じて紹介するものだ。
会場に吊り下げられた《Wandering Spirits》(2018)は、津野がイタリア・トリエステで毎年開催されている欧州最大のファッションコンペ「ITS」のファイナリストに選出された際の作品だ。「身体を無視し、身体から逸脱する服をつくった」(プレスリリースより)という本作は、3Dペンで描かれることでつくられた樹脂製のドレスで、首の下から別の身体がぶら下がるような構造となっている。

本作は、自身の体型との不和を感じてきた津野の体験が下敷きになっており、「身体」という洋服の絶対的な支持体から自由になることを志向する服といえる。本展では《Wandering Spirits》とともに、同様のコンセプトと手法でつくられた新作《Out of Body, In Dress》(2025)も展示されている。
