広大な丘の上で彫刻と戯れ、絵画に発見し、写真に思う。花に囲まれた美の理想郷、クレマチスの丘
今年も夏から秋にかけて、日本全国で様々な展覧会や芸術祭が目白押し。作品との出会いはもちろん、その場所でしか見られない景色や食事も一緒に楽しめるスポットをピックアップ。第4回は、静岡県・長泉町のクレマチスの丘を紹介する。
東京から新幹線で約50分。富士山麓の三島近郊に位置するクレマチスの丘は、複数の美術館、文学館、レストランやショップなどが点在する複合文化施設。庭園では約250品種2000株以上のクレマチスをはじめ、多種多様な花が競演している。
その花々をより一層楽しめる展覧会「須田悦弘 ミテクレマチス」がヴァンジ彫刻庭園美術館で開催中だ。クレマチスの一種であるモンタナやテッセン、さらには睡蓮、雑草まで、様々な草花が本物と見紛うほど精巧に彫刻され、館内のあちこちに展示されている。それらを探す視点を得ることで、傍の庭園に生える実物を見る眼まで変わってくるという妙味をぜひ体験してほしい。
写真に特化したIZU PHOTO MUSEUMでは、アラスカの自然と動物を撮り続けた星野道夫の自然を見る眼を知ることになる。目に見える世界を通して、その背後に隠された目に見えない世界を追求した彼の写真と言葉に、もうひとつの自然観を垣間見ることができるだろう。
戦後の具象画壇を代表するフランスの画家ベルナール・ビュフェの作品を収蔵・展示するベルナール・ビュフェ美術館では、ビュフェと同時代を生きた藤田嗣治の展覧会を開催。ピカソやシャガールらと並んで手がけた挿絵や装丁など、本の仕事を中心に紹介する。
癒しと気づきをもたらす見晴らしのいい丘はいま、花盛りだ。
(『美術手帖』2018年8月号「この夏・秋に行きたい!全国アートスポットガイド」より))