EXHIBITIONS

細江英公 追悼写真展「写真への愛と尊敬」

写大ギャラリー50周年記念展 Ⅰ

2025.04.07 - 06.07

細江英公 おとこと女 #24 1960

 写大ギャラリーで、細江英公の追悼写真展「写真への愛と尊敬」が開催されている。

 本展では、2024年9月16日に91歳で逝去した写真家・細江英公(1933〜2024)を追悼する写真展だ。細江は、1974年に東京写真短期大学(現東京工芸大学)の教授に着任し、2003年までの29年間教鞭をとり、多くの卒業生を輩出。写大ギャラリーは、1975年に細江の発案により、日本初のオリジナルプリントを収蔵し、展示を行う常設施設として設立された。本年で設立50周年を迎え、1万2千点を超える作品を収蔵する写大ギャラリーは、設立から定年退職までの30年近く、細江が中心となり運営が行われてきた。

 細江英公は1933年山形県生まれ、東京育ち。1952年に東京写真短期大学(現東京工芸大学)に入学し、学生時代から前衛芸術家・瑛九(1911〜1960)が中心となって結成した、既存の美術団体の権威に挑む、自由と独立の精神を尊重する若い芸術家集団「デモクラート美術家協会」に参加。卒業後フリーランス写真家として活動し、1959年同時代の新進気鋭の写真家とともに、写真エージェンシー「VIVO」(エスペラント語で「生命」の意)を設立。1960年代から70年代にかけては、男女の性と肉体をテーマにした「おとこと女」、小説家・三島由紀夫(1925〜70)を被写体とした「薔薇刑」、生地であり戦時中の疎開先でもあった東北を舞台に、前衛舞踏家・土方巽(1928−1986)を被写体とした「鎌鼬」、男と女の抱擁の強さと優しさを視覚化した「抱擁」など、のちの写真史に名を残す作品を生み出した。

 その後も精力的に写真家としての活動を続け、2003年には英国王立写真協会から「生涯にわたり写真芸術に多大な貢献をした写真家」として特別勲章が授与。2010年、写真家として4人目となる文化功労者として顕彰され、2017年には旭日重光章を受章した。

 活動は写真家にとどまらず、世界最大の写真コレクションを誇るジョージ・イーストマン・ハウス国際写真美術館の所蔵作品から、選りすぐりの歴史的な写真の名作約300点による展覧会を企画し、日本への招致を成功。次に国際写真文化交流会議を発足し、それまでヨーロッパ圏外では紹介されることがなかったヨーロッパの若手写真家約30名の作品を日本で発表する展覧会を開催。また世界各国にて、その地の写真家と数々のワーショップを行うなど、世界と日本の写真界を結びつける活動を行う。細江は写真家としての国際的な評価だけではなく、広く写真文化の発展や写真教育に貢献した。

 本展タイトルの「写真への愛と尊敬」は、細江が大学教授として学生にたびたび口にしていた言葉であったという。今回の展示では、これまでの活動の資料や記念写真、写大ギャラリー・コレクションから代表作を展示。写真家としてはもとより細江英公の幅広い活動を改めて紹介する。