2025.5.13

「オルセー美術館所蔵 印象派ー室内をめぐる物語」が国立西洋美術館で開催へ。オルセー印象派コレクションが約10年ぶりに大規模来日

国立西洋美術館で「オルセー美術館所蔵 印象派ー室内をめぐる物語」が開催される。会期は10月25日〜2026年2月15日。

記者発表より、同展アンバサダーの上白石萌音
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 東京・上野の国立西洋美術館で、「オルセー美術館所蔵 印象派ー室内をめぐる物語」の開催される。会期は10月25日〜26年2月15日。日本側の担当は同館主任研究員の袴田紘代。

  同展では、「印象派の殿堂」ともいわれるパリ・オルセー美術館所蔵の傑作約70点を中心に、国内外の重要作品も加えた約100点を展覧。室内をめぐる印象派の画家たちの関心のありかや表現上の挑戦をたどる。

オルセー美術館(外観) (c)patrice schmidt

 オルセー美術館が誇る世界最大規模の印象派コレクションが大規模に来日するのは約10年ぶり。なお、オルセー美術館は2027年の開館40周年を前に、総額5000万ユーロ(約77億円)規模の大改装を行う計画が発表されている。 

 同館館長の田中正之は本展について次のように語った。「室内とは人間の精神の現れともいえる。19世紀半ば以降、印象派たちは、家具や調度品に強い関心を寄せていた。本展は、室内という観点から印象派の絵画の秘密を解き明かそうとするものだ」。

 展覧会は4章構成。第1章「室内の肖像」は、19世紀のサロンを席巻した印象派において重要な表現手段だった肖像画を取り上げる。

 印象派は人物を日常的な環境のなかに描き出し、その人となりや社会的な属性を室内の道具立てによって表現。衣装、家具、調度品などを巧みに描写することによって、社会的なステータスを表明した。さらに家族の肖像画では家庭の親愛のみならず、近代的な家族観の発露や心理的なドラマも描き出していた。本章ではフレデリック・バジール、エドゥアール・マネクロード・モネ、ジェームズ・ティソ、ポール・マテといった画家たちの肖像画から、こうした背景を読み解いていく。また、若きエドガー・ドガの代表作《家族の肖像(ベレッリ家)》(1858-1869)が日本で初めて展示される機会となる。 

エドガー・ドガ 家族の肖像(ベレッリ家) 1858-1869 キャンバスに油彩 201×249.5cm オルセー美術館、パリ (c) photo:C2RMF / Thomas Clot

 第2章「日常の情景」は、印象派たちが求めた、身の回りの生活という画題に焦点を当てる。

 印象派は家族や仲間内での奏楽会、読書、針仕事、といった楽しみや息抜きを描写したが、そこからは当時の女性たちの肖像が浮かび上がる。私的な領域といえる室内における女性の描写、さらに理想化を超えた生身の肉体に迫ったヌードなどを本章では紹介する。ここではマネ、ドガ、マネ、ピエール=オーギュスト・ルノワールなどの作品を展示。

ピエール=オーギュスト・ルノワール ピアノを弾く少女たち 1892 キャンバスに油彩 116×90cm オルセー美術館、パリ (c) GrandPalaisRmn (musée d'Orsay) / Hervé Lewandowski / distributed by AMF
エドゥアール・マネ ピアノを弾くマネ夫人 1868 キャンバスに油彩 38.5×46.5cm オルセー美術館、パリ (c) GrandPalaisRmn (musée d'Orsay) / Tony Querrec / distributed by AMF

 第3章「室内の外交と自然」は、印象派の代名詞ともいうべき戸外の自然描写が、いかに室内表現と混じり合っていったかを探る。

 バルコニーやテラス、温室などは、室内空間の延長であり、室内と屋外との折衷的な存在として、都市部の邸宅でも流行した。本章ではこうした空間を画題とした絵画を展示するとともに、室内装飾における自然の要素として古くから愛されてきた花々の静物画も紹介する。本章ではベルト・モリゾ、アルベール・バルトロメ、ポール・セザンヌらの作品を展示。

アルベール・バルトロメ 温室の中で 1881頃 キャンバスに油彩 235×145cm オルセー美術館、パリ (c)GrandPalaisRmn (musée d'Orsay) / Hervé Lewandowski / distributed by AMF

 第4章「印象派の装飾」は、壁面装飾として室内に自然を取り込もうとした絵画を紹介。モネの《睡蓮》に代表されるように、空間を演出するものとしても絵画は重要な役割を担った。室内装飾としての絵画のあり方に多くの興味を注いだ印象派の画家たちは、空間として室内と自然を融合させていくことを試みた。モネ、マネ、ギュスターヴ・カイユボットらの絵画から、往時の室内についての考え方を深堀りする。

クロード・モネ 睡蓮 1916 キャンバスに油彩 200.5×201cm 国立西洋美術館(松方コレクション)