2025.8.12

高知県立美術館で贋作と判明した作品が公開決定。調査過程もすべて開示

科学分析調査などを経て贋作だと判断された高知県立美術館所蔵のハインリヒ・カンペンドンクの油彩画《少女と白鳥》が、特別展示・調査報告「再考《少女と白鳥》 贋作を持つ美術館で贋作について考える」で公開される。会期は第1期が9月13日~25日、第2期が10月4日~19日。

ハインリヒ・カンペンドンクを詐称したヴォルフガング・ベルトラッキ《少
女と白鳥》 1990年代、高知県立美術館蔵
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 贋作が認定された高知県立美術館所蔵のドイツ人画家ハインリヒ・カンペンドンクの油彩画《少女と白鳥》。同作を、収蔵の経緯や科学分析の内容とともに紹介し、作品の真贋を再考する特別展示・調査報告「再考《少女と白鳥》 贋作を持つ美術館で贋作について考える」が開催される。会期は第1期が9月13日~25日、第2期が10月4日~19日。

 2024年、カンペンドンク《少女と白鳥》に贋作疑惑が浮上。その後同館は京都大学准教授・田口かおりと協力して科学分析調査を行い、来歴や証拠資料などを含めて総合的に検討した結果、今年3月に贋作だと判断した。

 「再考《少女と白鳥》 贋作を持つ美術館で贋作について考える」は、田口を監修に迎え、贋作を公開しながら、購入・収蔵の経緯や実施した科学分析の内容もあわせて紹介することで、様々な角度から作品の真贋について「再考」する機会をつくり出すことを目指す。

作品の分析調査風景 提供:株式会社堀場テクノサービス (C) HORIBA

 今後同じ過ちを繰り返さないためにも、芸術分野における真贋をめぐる諸問題について議論の場を生み出すことを試みる本展は、全4章構成。

 第1章「贋作の歴史」では、古今東西の主な贋作事件が取り上げられ、贋作にまつわる歴史が年表形式のパネル展示で紹介される。つづく第2章「真作?それとも?──作品の外側から分かること」では、同館の古美術の収集事例を通して、著名な画家の真作と「そうでないもの」の線引きの難しさについて、実際に所蔵作品を紹介しながら問題提起される。

 そして第3章「《少女と白鳥》を視る」では、1919 年作とされていた本作が、その年代に制作されたものではないと判断するまでに行った科学調査の詳細を、実作品と資料とともに紹介。さらに、美術・法律・科学といった複数の分野の専⾨家に投げかけた今回の贋作事件にまつわる質問に対する回答も掲示され、多角的に贋作について考える機会となる。

 最後の第4章「絵画の内側を視る」は、本展のために同館と田口かおり調査チームが協力して行った、同館の西洋美術コレクションの科学調査結果にもとづく内容となる。本章では、調査対象となった同館所蔵のマルク・シャガール、マックス・ペヒシュタイン、ヴァシリー・カンディンスキーパウル・クレーの作品が登場し、科学的な視点から作品を見つめる意義について紹介される。

作品試料の分析風景 提供:株式会社堀場テクノサービス (C) HORIBA

 なお関連イベントとして、本展監修の田口によるサタデーレクチャー「《少女と白鳥》を視る」や、担当学芸員によるギャラリートーク、法的、倫理的な問題といった観点から贋作を考えるシンポジウム「美術館と贋作問題」が開催される予定だ。