カールステン・ニコライが世界初公開の新作を京都・HOSOO GALLERYで発表
元禄元年(1688年)創業の西陣織の老舗HOSOOが、カールステン・ニコライとのコラボレーションによる新作インスタレーション《WAVE WEAVE(ウェーヴ・ウィーヴ)》を公開する。

元禄元年(1688年)に京都・西陣で創業したテキスタイルメーカー「HOSOO」が、世界的に活躍するアーティスト、カールステン・ニコライとコラボレーションし、「WAVE WEAVE — 音と織物の融合」を開催する。
カールステン・ニコライは1965年旧東ドイツ・カール=マルクス=シュタット(現ケムニッツ)生まれ。世界的に知られるアーティストであると同時に、坂本龍一との数多くのコラボレーションでも知られるアルヴァ・ノト(Alva Noto)としても活動している。旧東ドイツの織物産業の中心地に生まれ育ったニコライは、1940〜60年代に制作された1000点以上の織物の紋意匠図のコレクションを所有するなど、長年、織物の技法や、その起源に強い関心を寄せてきた。
本展では、織物が時間を内包する媒介的存在であることから強いインスピレーションを得て制作された2作品が世界初公開される。
オーディオ・ビジュアル・インスタレーション《WAVE WEAVE》は、HOSOOの織物工房内の風景や織機を中心に、ニコライ自身のディレクションで考えられる限りの緻密さで織物のディテールを実写撮影・編集し、オリジナルの電子音響をシンクロさせたもの。織物の制作工程を抽象的にとらえた映像と音楽で構成し、織機の経糸・緯糸が交差するバイナリーのメカニズムから、織物に内包されるアルゴリズムや時間性を可視化するだけでなく、織物や、それに用いられる素材が生成される景観そのものを、詩的で静謐な反復と差異の映像/音響の世界として描き出す。
いっぽうの織物作品《SONO OBI》は、電子音楽をソノグラム(超音波によって得られるいわゆるエコー画像)に変換し、それを織物として構築することで制作された作品。織物をアナログの記録媒体として音楽を保存することで、後に演奏を再演することを可能にしている。
300年以上にわたり西陣織の伝統を受け継ぎながら革新を続けてきたHOSOOと、音と織物という2つのメディアを探究するカールステン・ニコライの出会いによって実現する今回の展覧会。ニコライは次のようにコメントを寄せている。
HOSOOとの協働は真にインスピレーションを伴う体験でした。このような長い歴史を持つ織物の伝統に出会い、制作チームが新しい芸術的アイデアを探求する開放性と、伝統文化が融合することで、このコラボレーションのためのユニークな基盤が生まれたのです。
私は長い間、織物と織物技術に魅力を感じてきました。それは、私の故郷ケムニッツの歴史が織物産業と深く結びついているからでもあります。この生涯にわたる関心を、HOSOOの熟練の技との対話に持ち込むことは、自然な作業であり、同時に大きく報われるものでした。
《WAVE WEAVE》と《SONO OBI》において、私たちは、織物についてだけでなく、知覚、音、そして非物質的構造に対して、実際に触覚可能な形にする翻訳を作品として生み出したのです。このコラボレーションが成長し続け、私たちの作品が伝統と革新、工芸と技術、そして最終的に人と人との間の架橋となることを願っています。(プレスリリースより)