2025.10.30

国松希根太の美術館初個展。「連鎖する息吹」が十和田市現代美術館で開催

青森・十和田市の十和田市現代美術館で、北海道を拠点とする彫刻家・国松希根太の代表作と新作を紹介する美術館初の個展「国松希根太 連鎖する息吹」が開催される。会期は12月13日〜2026年5月10日。

奥入瀬のブナを使った制作風景 2025年9月26日 十和田市 撮影=小山田邦哉
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 青森・十和田市の十和田市現代美術館で、北海道を拠点とする彫刻家・国松希根太の美術館初の個展「国松希根太 連鎖する息吹」が開催される。会期は12月13日〜2026年5月10日。

 国松は1977年北海道生まれ。多摩美術大学美術学部彫刻科を卒業後、2002年より飛生(とびう)アートコミュニティー(北海道白老町)を拠点に制作活動を行なう。またAyoro Laboratory(2015〜)の活動を立石信一と展開、飛生アートコミュニティーで結成されたアーティスト・コレクティブ、THE SNOWFLAKES(2020〜)の一員としても活動を続ける。近年の主な個展に「国松希根太展 TERRA」(t.gallery、東京、2024)、「国松希根太展 地景を刻む」(飛生アートコミュニティー、白老、2022)。グループ展に「リフレクションズいつかの光」(札幌芸術の森美術館、札幌、2025)、「ART for EXPO 2025」(夢洲、大阪)、札幌国際芸術祭2024(未来劇場[東一丁目劇場施設]、札幌)がある。2024年に『国松希根太この地で息吹く』(求龍堂)を刊行。

国松希根太 撮影=笹島康仁

 国松は00年代初頭より、北海道中南部の白老から内陸に位置する飛生の旧小学校を改造した「飛生(とびう)アートコミュニティー」を拠点に活動してきた。北の大地で長い年月を経て独自のフォルムを形成した木々と出会うことで作品を制作し、近年はとりわけ地平線や水平線、山脈、洞窟などの風景のなかに存在する輪郭(境界)を題材に彫刻や絵画、インスタレーションなどを発表している。木の表面や内部に鑿(のみ)などの刃や火を入れたり、鉱物や雪など大地の素材に向き合い生まれる作品は、国松と自然との一期一会のコミュニケーションといえる。

参考写真 《WORMHOLE》2024年 札幌国際芸術祭2024 展示風景 撮影=藤倉翼

 また、国松は2009年より飛生アートコミュニティーにおいて敷地内の森を守りながら飛生芸術祭を開催。また2015年よりAyoro Laboratoryとして近隣のアヨロと呼ばれる地域を中心に土地を探索するフィールドワークを展開している。

 本展は、国松の代表的な作品を紹介する機会となる。国松の代表作である巨木を素材にした彫刻「WORMHOLE」シリーズが林立する大きな空間とともに新作を展示。廊下には国松自身が歩いた十和田湖・奥入瀬渓流の風景を念頭に制作された下北のヒバを使った彫刻が展示される。そして最奥の展示室には、奥入瀬のブナを使い十和田で滞在制作された「WORMHOLE」が人々を迎える

青森県十和田市奥入瀬のブナ 2025年5月 撮影=小山田邦哉
十和田での制作風景 2025年10月4日 撮影=小山田邦哉
下北のヒバを使った新作《7 sculpture sketches》制作風景 2025年8月15日 飛生のアトリエ 撮影=国松希根太

 また、希根太、父・明日香、祖父・登、そして秋田・由利本荘のこけし作家で北海道に移住した曽祖父・美登里へと連なる国松家の創造の連鎖を、父、祖父の作品とともに紹介。そしてCube Cafe & Shopの空間では、2026年に40周年を迎える飛生アートコミュニティーの歴史、そして国松らが立ち上げた飛生芸術祭の活動を紹介する。