歌麿の最初期作品《婦人相学十躰 ポッピンを吹く娘》が43年ぶりに再発見。東博で展示
6月15日まで開催されている特別展「蔦屋重三郎 コンテンツビジネスの風雲児」(東京国立博物館)で、喜多川歌麿の最初期作品が特別出品される。

喜多川歌麿の最初期作品である《婦人相学十躰 ポッピンを吹く娘 》(1792〜93頃)が再発見されたと、東京国立博物館が発表した。
歌麿は1792年頃から版元蔦屋重三郎より美人大首絵の出版を始め、美人画の名手として人気を一気に集めたことで知られる。「婦人相学十躰」は、その最初期のシリーズ。タイトルは10通りの女性を描き分けるということを意味している。しかし、なんらかの理由で刊行途中で揃物名が「婦女人相十品」へと変更され、8図が刊行された時点で制作が中断されたと考えられている。
なかでも「ポッピンを吹く娘」 は、「十躰」「十品」両シリーズ名で出版された貴重な作例。とくに「十躰」の題名をもつ作品は、本出品作が発見されるまでは、ホノルル美術館に所蔵される1枚のみが知られており、現存例は世界的にも稀だという。

展示期間:5月20日~6月15日
撮影=東京国立博物館
本作は、裏面に捺された印章からエルンスト・ル・ヴェール(*)の旧蔵品であることがわかっているが、1981年に競売にかけられて以降行方不明だった。
本作について東博は「浮世絵は一般的に初摺に近いほど、輪郭線がシャープで、作品全体の仕上がりに版元や絵師の意向が強く反映されているといわれます。本作品は保存状態が極めて良好で、クリアな輪郭線と鮮やかな色彩を残し、まさに蔦重のもとで摺られた当時の雰囲気を伝えています」としている。
なお本作は6月15日まで開催中の特別展「蔦屋重三郎 コンテンツビジネスの風雲児」(東京国立博物館)で、5月20日より特別出品される。
*──ル・ヴェールは1895年にパリのセーヌ通りに画廊を開いた人物で、明治期に数回来日。数百枚もの浮世絵を購入、収蔵したという。