2026.2.5

DIC・国際文化会館による新施設、SANAAによる「ロスコ・ルーム」のデザイン構想が公開。ロスコ・チャペルとのパートナーシップも締結

DIC株式会社と国際文化会館が2030年の開館を目指す新西館施設。そこに設置される「ロスコ・ルーム」のデザイン構想が公開された。

SANAAによる新たな「ロスコ・ルーム」のデザイン構想 © 1998 Kate Rothko Prizel& Christopher Rothko / ARS, New York /JASPAR, Tokyo G4115
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新ロスコ・ルームは地下に設置

 2025年3月末に閉館した千葉県佐倉市のDIC川村記念美術館。その後継となる新施設(以下、新西館)が、DICと国際文化会館に協業によって2030年、国際文化会館の敷地内に完成する。

 新西館には、DIC川村記念美術館が所蔵する戦後アメリカ美術をはじめとする20世紀美術品のコレクション約100点が移転(*)。建築はSANAA(妹島和世+西沢立衛)が手がけ、自然と建築の融合、歴史の継承と新しい風景、知的対話・文化交流を生み出す空間の3つデザインコンセプトに、既存の本館・庭園を挟むかたちでエントランス棟・庭園棟の2棟で構成される。

 なかでも注目されるのが、同館を象徴するコレクションのひとつでもあるマーク・ロスコの「シーグラム壁画」7点の展示空間だ。

 「シーグラム壁画」はもともと、1950年代末にニューヨークの高級レストランを飾るために制作された連作であり、「自分の作品だけで一室を満たす」というロスコの願いが反映されたもの。その計画は実現せず、結果的に作品は世界4ヶ所に分散した。

 そのうちの1ヶ所であるDIC川村記念美術館では、同作のために変形七角形の専用展示室「ロスコ・ルーム」が2008年に増築され、作品と向き合える内省的な空間は多くの人々に愛されてきた。

 新西館では、新たな「ロスコ・ルーム」もSANAAが設計。DICと国際文化会館が共同で運営する常設展示室として誕生する。

SANAAによる新たな「ロスコ・ルーム」のデザイン構想 © 1998 Kate Rothko Prizel& Christopher Rothko / ARS, New York /JASPAR, Tokyo G4115

 新たな「ロスコ・ルーム」設計のためにテート・モダンのロスコ空間を訪問し、理解を深めたというSANAA。新「ロスコ・ルーム」はエントランス棟の地下展示室内に設置され、1階のエントランス庭園に囲まれたエントランスホール、自然光を感じられる地下のメディテーションスペースからアプローチする構造となる。新西館のメインコンセプトのひとつである親自然空間体験と、「ロスコ・ルーム」の空間体験を両立させ、ひと続きの構成を目指すという。

 SANAAはこの構想について、「静かな展示環境のなか、そこを訪れる人々が作品と深く向き合える場となるよう、設計を進めてまいります」としている。

1階のエントランス庭園に囲まれたエントランスホールのデザイン構想
国際文化会館にて、SANAA(西沢立衛と妹島和世)

*──DICは売却によって100億円の資金確保を目指しており、すでにモネ《睡蓮》をはじめとする8作品がクリスティーズ・ニューヨークの秋季オークションウィークで約165億円で落札された

ロスコ・チャペルとの戦略的なパートナーシップ

 このロスコ・ルーム構想に加え、DICと国際文化会館によるロスコ・チャペルとの連携協定も締結された。同チャペルは1971年にヒューストンに設立された無宗派の礼拝堂。内部にはロスコの絵画14点が恒久設置されている。

 2024年7月にハリケーンによって被災した同チャペルは、DICと美術品修復支援において戦略的パートナーシップを締結。今後、DICは修復に必要な材料の提供などを化学メーカーの立場から支援する。いっぽう国際文化会館は同チャペルと「平和を促進するための民間外交」を展開。共同で諮問機関を設立し、プログラムの企画・運営を行い、世界各地の組織へと連携を拡大するという。

 ロスコ・チャペル プレジデントのアブドラ・アンテプリはこう語る。「このパートナーシップは、貴重な文化資産を継承していく責任と、対話を通じて相互理解を育むという双方に共通する理念を体現する意義深いものです。マーク・ロスコのレガシーを守り伝えるとともに、思索と国際交流の新たな場を育んでいくにあたり、DIC および国際文化会館と協働できることを大変光栄に存じます。アートを媒介として人々の相互理解と静かな瞑想を促し、社会との世代を超えた永続的な絆を育む未来を見据えてまいります」。

パートナーシップ締結した池田尚志(DIC)

 なお、DICは新西館が完成する2030年までのあいだ、ロスコ作品を含め、同館所蔵作品の国内外への貸し出しの受付を7月1日より再開する。