2025.2.22

第28回TARO賞は岡本太郎賞に仲村浩一、敏子賞に齋藤玄輔

岡本太郎の遺志を継ぎ、次代のアーティストを顕彰する岡本太郎現代芸術賞(通称「TARO賞」)。その第28回の受賞者が発表された。

岡本太郎賞を受賞した仲村浩一
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 岡本太郎の精神を継承した岡本敏子によって創設され、毎年、自由な発想で芸術の新しい側面を切り開くアーティストを顕彰してきた「岡本太郎現代芸術賞」(通称「TARO賞」)。その第28回の受賞者が川崎市岡本太郎美術館で発表された。

 これまで、小沢剛山口晃、風間サチコ、梅津庸一、キュンチョメ、サエボーグ、檜皮一彦などのアーティストたちを発掘してきたTARO賞。今回は579点(前回621点)の応募のなかから以下24名が入選した。

 井下紗希、IWACO、大岩美葉、神村あづさ、木原健志郎、黒田恵枝、齋藤玄輔、斎藤翼、陳昱如、土田祐加、どばしほのか、仲村浩一、西野萌黄、英ゆう、濱本菜花、前田明日美、増田充高、丸山千香子、武藤攝、毛利華子、望月章司、矢成光生、山下茜里、山田歩。

岡本太郎美術館にて、審査員と入選者ら

 そのなかから、岡本太郎賞を受賞したのは仲村浩一、岡本敏子賞を受賞したのは齋藤玄輔だ。審査員は例年通り椹木野衣、山下裕二、和多利浩一、平野暁臣、土方明司の5名が務め、仲村には賞金200万円が、齋藤には100万円が贈られた。

岡本太郎賞受賞:仲村浩一

展示風景より、仲村浩一《房総半島勝景奇覧/千葉海岸線砂旅行》

 仲村は1999年千葉県生まれ、2024年に武蔵野美術館大学造形学部を卒業し、現在は東京藝術大学大学院美術研究科油画専攻に在籍している。

 受賞作となったのは《房総半島勝景奇覧/千葉海岸線砂旅行》。10歩ごとに砂を採取しながら千葉の海岸線を一周した《千葉海岸線砂旅行》と、その過程で見た景色やお土産、青木繁《海の幸》を思わせるモチーフなどを描き込んだ《房総半島勝景奇覧》がセットになった大作だ。砂浜によって異なる砂の色に興味を持った仲村は4年かけて千葉の砂浜を一周し、それが動機となり本作が生まれた。

 仲村は「4年間、砂と戯れた時間が評価されて嬉しく思う。これからも砂という素材の研究は続けていきたい」と受賞の喜びを語った。

 なお審査員の椹木は本作について、以下のような審査評を寄せている。「本作の勝因は、『千葉県』という『月並』と言えばあまりに月並な主題を、作者が生まれ育った故郷であったというだけに発し、4年を費やして同県の海岸線をぐるりと10歩ごとに分けて足元の砂を採取して踏破し、それをもとに『尋常でない』一大パノラマに仕立ててみせたことである。このことを通じて『千葉県』は、砂による抽象と具象に分岐し、なおかつ同一のものであるという奇妙な二重性を獲得している。『千葉県』が他に類を見ないやり方で芸術へと昇華されたのだ」。

展示風景より、仲村浩一《房総半島勝景奇覧/千葉海岸線砂旅行》

岡本敏子賞受賞:齋藤玄輔

展示風景より、齋藤玄輔《語り合う相手としての自然》

 いっぽう、敏子賞の齋藤は1975年北海道生まれ。2004年に東北芸術工科大学大学院を修了した。

 岡本太郎美術館の展示空間で特徴的なガラスに囲まれた空間で発表された《語り合う相手としての自然》は、東日本大震災の原発事故を題材にしたもの。福島県双葉町で被曝したであろう植物を採取し、押し花にしたものを版として、福島第一原子力発電所建屋に描かれていたような模様をした「植物の建屋」を出現させた。内部からは電力=LEDライトが植物を照らし出す。

 齋藤は本作について「思い入れの強い作品」としつつ、「被災していない自分がこれをつくっていいのかと思いながら、発表まで14年という時間がかかった」と振り返っている。

 また審査員の和多利は本作を次のように評している。「まず、カーボン紙のブルーの色に目を奪われる。一見遠くから見るとデザイン的なイメージかと思い、近づいてみるとその儚さと繊細さに衝撃を受ける。裏からの強いLEDライトもカタチを崩した植物のラインを強調している。ベースフォルムを福島第一原子力発電所建屋から成っている点、収集された植物が帰宅困難地域で被曝しただろう植物という点に心打たれた」。

展示風景より、齋藤玄輔《語り合う相手としての自然》

 また今年の特別賞は1名のみで、井下紗希が《森を歩くこと》で受賞した。1997年神奈川県生まれで、23年に武蔵野美術大学大学院を修了した井上。今回、巨大な植物が画面を埋め尽くす絵画によって、「絵画の森」のようなインスタレーションを生み出した。

展示風景より、井下紗希《森を歩くこと》

 今年の全入選作品は第28回岡本太郎現代芸術賞(TARO賞)展として、4月14日まで見ることができる。なお、来年から同賞は審査にゲスト審査員を迎える体制となり、アーティスト・福田美蘭が加わる。