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2025.3.28

「ロエベ クラフテッド・ワールド展」開幕レポート。ロエベが紡いだクラフトとの歴史を見る

ロエベの初の大型展覧会「ロエベ クラフテッド・ワールド展 クラフトが紡ぐ世界」が東京・原宿の特設会場に上陸した。会期は3月29日〜5月11日。

展示風景より
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 クリエイティブディレクター ジョナサン・アンダーソンの退任と、ジャック・マッコローとラザロ・ヘルナンデスの就任で話題を集めるロエベ(LOEWE)。その初の大型展覧会「ロエベ クラフテッド・ワールド展 クラフトが紡ぐ世界」が東京・原宿に上陸した。

 本展は、ロエベの179年にわたる豊かな歴史、スペインの伝統、そして手仕事への献身を称えるもので、革新と創造性を追求し続けるロエベのファッションとクラフトの文化を紹介する展覧会だ。昨年上海で初めて開催され、その後世界各地を巡回。今回待望の東京開催となった。

特設会場外観

 日本はロエベが1973年にヨーロッパ圏外に初めて出店した国であり、以来ブランドと日本は深い文化的対話を続けてきた。1300平米におよぶ巨大会場は建築設計事務所OMAとのコラボレーションによってデザインされ、ロエベが創業された1846年からの歩みを追いながら、同ブランドのアイコニックなデザインや文化的なコラボレーションの数々を巡る旅へと来場者を誘う。

展覧会のエントランス部分

 展示は7つの部屋で構成。最初の部屋「手から生まれたもの」は、1846年のブランド出発点から現代まで、ロエベの軌跡を一望できるセクションだ。初期のオーダーメイドのレザーアイテムから2022年秋冬のランウェイで存在感を放っていたアンセア・ハミルトンによる巨大なカボチャのスカルプチャー《Giant Pumpkin No.6》、リアーナやビヨンセらが着用した衣装までが並ぶ。

「手から生まれたもの」展示風景より
「手から生まれたもの」展示風景より

 ロエベの故郷であるスペインの多彩な風景やクラフトの伝統、そこから生まれたデザインを窓の向こうに見ることができる「スペインへようこそ」では、パブロ・ピカソによる複数のセラミック作品に注目だ。

「スペインへようこそ」展示風景より

 次なる部屋は「ロエベのアトリエ」。レザーのライブラリーから始まるこの部屋では文字通り、ロエベのプロダクトがいかに製作さられているのか、その過程をたどることができる。職人が手仕事で裁断するための道具や、世代を超えて長く愛されるバッグを生み出すために費やされる、何百時間にも及ぶ試作と検査の工程が明らかにされている。

「ロエベのアトリエ」展示風景より
「ロエベのアトリエ」展示風景より

 「城の部屋」では、中央に高さ2メートルに巨大化した「ハウルの動く城 バッグ」が展示。元のバッグは、スタジオジブリの名作にインスパイアされたロエベの2023年のカプセルコレクションのためにデザインされたものだ。ロエベのアイコニックなバッグの要素を組み合わせて構成この展示は、ロエベのアトリエの卓越したクラフト技術が、物語のなかの建築をいかにして再現したのかが示されている。

「城の部屋」展示風景より

 「クラフトによる連帯」の部屋は、本展の中核をなすものだと言えるだろう。世界各地のクラフトを支援するロエベの取り組みに焦点を当てた展示だ。例えばロエベ財団は2016年から「ロエベ財団 クラフトプライズ」を行い、世界中のアーティストたちを支援してきた。また京都で400年に渡り茶の湯釜造りを業としてきた大西家の技術を保護し、次世代の育成を支援するプログラムも行なっている。

 この部屋に並ぶのは、桑田卓郎や石塚源太などクラフトプライズの受賞作家による作品をはじめ、2023年のチャイニーズモノクローム コレクションにインスピレーションを与えた明・清時代の美しい単色陶磁器、さらにミラノサローネで発表されたブランケット、バスケット、ウィーブズ、チェア、栗のロースターなどのプロジェクトも紹介されている。

「クラフトによる連帯」展示風景より
「クラフトによる連帯」展示風景より

 「限界なきファッション」の部屋もハイライトだ。ここに並ぶのはメンズ&ウィメンズの54体のルック。これらはジョナサン・アンダーソンが2013年にロエベのクリエイティブ ディレクターに就任して以来のコレクションから厳選されたもの。アンダーソンのディレクションによって生み出された精緻なクラフトマンシップ、彫刻的なフォルム、遊び心あふれるトロンプルイユ(だまし絵)効果、そして意外性のある素材を目の当たりにできる。あらためて、アンダーソンの功績がいかに大きなものかを認識することだろう。

「限界なきファッション」展示風景より

 最後を飾る「意外な対話」は、過去10年間にわたるロエベのコラボレーションの着想源となった、豊かな想像力の世界に没入できる5つの魅惑的な部屋で構成されている。

 ここでは陶芸の巨匠ケン・プライスのニューメキシコのアトリエを再現した空間、日本の陶芸ユニット「スナ・フジタ」によるおとぎ話のような情景がのぞき穴の中に隠された小部屋、ジョー・ブレイナードのコラージュが立体化された部屋、スタジオジブリの夢のような世界へと誘う幻想的な空間が次々と展開。最後にはイギリスのアーツ・アンド・クラフツ運動を代表する建築家チャールズ・ヴォイジーのタイルやテキスタイルデザインを再解釈し、東京のクリエイティブスタジオ「edenworks」とのコラボレーションで制作された、空中で揺れる花園が来場者を包み込む。

「意外な対話」展示風景より
「意外な対話」展示風景より
「意外な対話」展示風景より

 本展はロエベの歴史的背景を振り返るとともに、ロエベのクラフトマンシップやアートとの強い繋がり、リスペクトを体感できるまたとない機会だと言える。なお、展覧会会場とは別にギフトショップも併設されているので、ロエベのクリエーションに触れた後に立ち寄ることをおすすめしたい。

ギフトショップ