LVMH Métiers d’Artのアーティスト・イン・レジデンス。岡山のクロキで米澤柊が見つけた制作の新たな可能性
LVMH(モエ・ヘネシー・ルイ・ヴィトン)による「LVMH Métiers d’Art(LVMH メティエ ダール)」が、日本で初開催。、米澤柊がレジデンスアーティストとして、岡山の老舗デニムメーカー・クロキ株式会社で6ヶ月間の滞在制作を実施している。プログラムに際して行われた展示の様子をレポートする。

ラグジュアリーブランドを傘下に収める、フランスのLVMH(モエ・ヘネシー・ルイ・ヴィトン)。同社の工芸部門である「LVMH Métiers d’Art(LVMH メティエ ダール)」が、新たな芸術の才能を発見・育成するとともに、伝統工芸への革新的なアプローチをすることを目的に実施しているアーティスト・イン・レジデンスプログラムが日本で初開催されている。初のアジア開催となる本プログラムでは、米澤柊がレジデンスアーティストとして、岡山の老舗デニムメーカー・クロキ株式会社で6ヶ月間の滞在制作を実施している。プログラムに際して行われた展示の様子をレポートする。

米澤柊は1999年東京生まれ。アーティスト、アニメーター。ビデオ、2D 作品、インスタレーションを含むマルチメディア作品は、アニメキャラクターの幽霊のような肉体を掘り下げ、アニメーションの微妙なテクスチャと残像を明らかにすることで、デジタル作品に生命感について思考している。おもな個展にうみの皮膚、いないの骨」(SNOW Contemporary、2024)、「ハッピーバース」(PARCO museum tokyo、2023)、「劇場版:オバケのB′」(NTTインターコミュニケーション・センター、2022)。おもなグループ展に「OPEN SITE7」(Tokyo arts and space本郷、2022)、「惑星ザムザ」(小高製本工業跡地、2022)、「ATAMI ART GRANT」(熱海市街地、2021)など。

米澤がレジデンスを行っているクロキは、1950年に岡山・井原市で創業し、現在も同地を拠点にデニムの製造と販売を行っている。染色、織布、整理加工までを自社で一貫して行っており、2023年にはLVMH メティエ ダール ジャパンとパートナーシップを締結した。LVMH メティエ ダール ジャパンは、なぜクロキを選んだのか。その理由をLVMH メティエ ダール ジャパンのディレクターである盛岡笑奈は次のように語った。

「私たちLVMHのブランドビジネスは、そのクリエイションを支えてくれる職人や企業がいなければ成り立たちません。しかし、こうした服飾における伝統産業の危機は世界中で叫ばれています。私たちはこのものづくりを継承し発展させていきたい。そのために、日本においては自社で一貫してデニムの染色から加工までを手がけ、唯一無二の技術を持つクロキをパートナーとして選ばせてもらいました」。

また、日本における初のレジデンスにおいて、そのアーティストとして米澤を選んだ理由を盛岡は次のように語った。
「米澤さんがテーマとしてきたアニメーションは、現在世界中の若い世代にとって影響力を持っているメディアです。これまで、ラグジュアリー産業のプロダクトや、マニュファクチャー、職人などに興味がなかった人とのつながりを喚起させられる可能性をもっていると感じました。また、米澤さんはそのお人柄からも感じられるように、柔軟性と吸収力があるアーティストです。クロキに滞在して、社員や職人のみなさんと良好なコミュニケーションを通して、相互的に良い影響を与えてくれると考えました。
