「SPRING わきあがる鼓動」(ポーラ美術館)開幕レポート。箱根から立ち上がる創造の鼓動を追う
ポーラ美術館で、「SPRING わきあがる鼓動」展がスタート。開館以来初めて「箱根」という土地そのものに焦点を当て、自然、歴史、身体、そして情報へと連なる創造の運動を描き出す本展をレポートする。

ポーラ美術館で、展覧会「SPRING わきあがる鼓動」が開幕した。担当学芸員は、同館学芸部課長の今井敬子と主任学芸員の内呂博之である。
本展は、開館以来初めて「箱根」という土地そのものに焦点を当て、その風土や記憶を出発点に、江戸時代から現代に至る美術表現を横断的に紹介する試みだ。テクノロジーが社会の隅々まで浸透し、自然や身体感覚との関係が変容しつつある現代において、本展が問いかけるのは、人間の内側や土地の奥底から「わきあがる」力──すなわち創造の原動力である。春の芽吹きになぞらえられた「SPRING」という言葉は、跳ね上がる動きや循環、再生を含意し、箱根という火山地形のダイナミズムとも響き合う。
展覧会の幕開けを飾るのは、大巻伸嗣によるインスタレーション《Liminal Air Space-Time》(2025)である。本作は、2011年の震災後、2012年に箱根で初めて発表されたシリーズを起点とし、約13年を経て再び同地に戻ってきた作品だ。

床下に設置された複数のファンによって空気の流れが制御され、宙に広がる布が緩やかに呼吸するように動くこの作品は、上昇と下降、膨張と収縮を繰り返しながら、目に見えないエネルギーの存在を可視化する。湿度や気温、外光、さらには鑑賞者の体温や呼吸といった要素までもが作品の振る舞いに影響を与え、空間全体がひとつの「生きた身体」であるかのように感じられる構成となっている。
火山活動によって形成された箱根の大地のうねりや、長い時間をかけて蓄積された地形の記憶は、この無音の運動と重なり合い、鑑賞者に「大地の鼓動」を身体的に体感させるプロローグとなっている。




























