2025.12.19

「大カプコン展 ―世界を魅了するゲームクリエイション」(CREATIVE MUSEUM TOKYO)開幕レポート。創業40年の歴史とゲーム制作の裏側にせまる

東京・京橋のCREATIVE MUSEUM TOKYOで、創業40周年を迎えたカプコンのゲームクリエイションに注目し、その原点から最新技術までを総合的に紹介する企画展「大カプコン展 ―世界を魅了するゲームクリエイション」が、12月20日~2026年2月22日の会期で開催。会場に駆けつけたスペシャルゲスト、宇野昌磨さん(プロフィギュアスケーター)のコメントもあわせて紹介する。

文・撮影=三澤麦(ウェブ版「美術手帖」編集部) 提供画像クレジット=©︎ CAPCOM

ROUND1「カプコン ゲームクロニクル」展示風景より、ポスターやメインアートの展示
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 東京・京橋のCREATIVE MUSEUM TOKYOで、創業40周年を迎えたカプコンのゲームクリエイションに注目し、その原点から最新技術まで、総合的に紹介する企画展「大カプコン展 ―世界を魅了するゲームクリエイション」が、12月20日~2026年2月22日の会期で開催される。監修は牧野泰之(カプコンプロデューサー)。

 本展は、創業40周年を迎えたカプコンのゲームクリエイションに注目し、その原点から最新技術まで、総合的に紹介する展覧会であり、これまで、大阪中之島美術館(3月20日~6月22日)、名古屋市美術館(7月5日〜9月7日)、鳥取県立博物館(10月19日〜12月7日)で開催されてきた。大阪会場のレポートはこちら

CREATIVE MUSEUM TOKYO エントランス

 東京会場では、「ストリートファイター」「ロックマンX」「ブレス オブ ファイア」「ヴァンパイア」「ファイナルファイト」「ジャスティス学園」「逆転裁判」など多くのシリーズから選定した、未公開を含む手描きのラフスケッチが新たに登場。クリエイターの熱意やアイデアの裏側が垣間見える貴重な機会となっている。

 また、会場内の併設カフェにて「大カプコン展 Food Festival」も開催。カプコンのゲームやキャラクターにインスパイアされた多国籍なオリジナルメニューが勢ぞろいしている点も東京会場ならではの試みだ。

「FINAL ROUND」展示風景より、「伝説の企画書たち」 ⓒCAPCOM
大カプコン展 Food Festival ⒸCAPCOM

 展覧会は、ROUND1〜3にBONUS STAGE、そしてFINAL ROUNDを加えた全5章構成。会場に足を踏み入れると、まずイントロダクションとして、カプコンの人気キャラクターたちが勢ぞろいする大行進アニメーションが来場者を迎える。「ストリートファイター」「ロックマン」「バイオハザード」「デビル メイ クライ」「逆転裁判」「モンスターハンター」など、同社を代表するゲームシリーズのキャラクターが次々と登場し、お気に入りのキャラクターとともに会場入りすることができる。

展示風景より、キャラクターパレード ⓒCAPCOM

 ROUND1「カプコン ゲームクロニクル」は、カプコンの歩みを軸に、ゲームの歴史をたどるエリアだ。本章の導入では、同社を代表するタイトルシリーズの系譜が、壁一面に広がる系統図やプレイ映像、歴代ゲームパッケージとともに紹介され、40年に及ぶ挑戦と進化の軌跡を一望することができる。

ROUND1「カプコン ゲームクロニクル」展示風景より、主要タイトル系統図

 さらに、「ストリートファイター」のリュウや「ロックマン」のロックマン、「バイオハザード」のレオン、「戦国BASARA」の伊達政宗など、名だたるキャラクターたちを取り上げ、衣装や小道具、フィギュアに加え、歴代のグラフィックや貴重な開発資料とともにその魅力を掘り下げる。加えて、ゲームパッケージやポスターが壁一面にずらりと並び、圧巻のビジュアルで来場者を魅了する。パッケージなどは日本版と北米版が並べて比較できるものもあり、その違いにも注目してほしい。

ROUND1「カプコン ゲームクロニクル」展示風景より、キャラクター展示
ROUND1「カプコン ゲームクロニクル」展示風景より、ポスターやメインアートの展示
ROUND1「カプコン ゲームクロニクル」展示風景より、ポスターやメインアート。「ストリートファイターⅡ」の日米パッケージ比較してみることができる。北米版ではリュウがブランカに倒されている

 ROUND2「テクノロジーとアイデアの進化」は、「テクノロジー」「アート」「アイデア」を融合させながら発展してきたゲーム業界、そしてカプコンならではの創造の軌跡を体験型展示を通してたどっていく、本展の軸となるエリアだ。

ROUND2「テクノロジーとアイデアの進化」展示風景より、「ドット絵時代の創意工夫」

 例えば、初代「ロックマン」は、任天堂のファミリーコンピュータ向けタイトルとして誕生したが、当時のハード性能には、使用できる色数やドット(マス)数に厳しい制約があった。その限られた条件のなかで、いかに操作に連動した動きや、強い印象を残すキャラクターを生み出すかが大きなテーマであったと牧野は語る。会場では、そうした試行錯誤のプロセスを解説で学びながら、「カプコンピクセルラボ」と名付けられたタブレット端末を使い、マスを一つひとつ塗り重ねることで、ゲームキャラクター制作の感覚を実際に味わえる。

ROUND2「テクノロジーとアイデアの進化」展示風景より、「ドット絵時代の創意工夫」(一部)
ROUND2「テクノロジーとアイデアの進化」展示風景より、「カプコンピクセルラボ」 ⓒCAPCOM

 さらに、来場者の表情の変化がそのままキャラクターに反映される「フェイシャルトラッキングミラー」をはじめ、BGMや効果音がどのように生み出されるのかを体感できる展示も用意されており、ゲームづくりの裏側によりいっそう近づくことができる。

ROUND2「テクノロジーとアイデアの進化」展示風景より、「フェイシャルトラッキングミラー」 ⓒCAPCOM

 ROUND3「ファンタジーとリアリティ」では、架空のキャラクターや世界観にいかに“現実味”を与えて描き出しているのかを、技術とデザインの両側面から紐解いていく。

 このエリアでもとくに目を引くのは、白い石膏像にプロジェクション・マッピングを施した春麗とダンテの像だ。本作では、3DCGモデルがどのような工程とこだわりでつくり込まれているのかを、視覚的にわかりやすく紹介。あわせて、キャラクター造形においてデザイナーたちが人体構造をどうとらえ、表現へ落とし込んでいるのかを、パネル展示などで解説している。

ROUND3「ファンタジーとリアリティ」展示風景より、「『らしさ』を描く –キャラクター造形の秘伝書–」の春麗。凹凸、色、反射といった様々なデータを用いて3Dキャラクターがつくり込まれていることがわかる。ポリゴンの密度が顔と太もも部分で大きく異なる点にも注目 ⓒCAPCOM

 さらに、「モンスターハンター」シリーズのフィールド模型にプロジェクション・マッピングを投影し、ゲーム内の自然環境がどのように構築されていったのかを立体的に表現する作品も登場。そのほか、懐中電灯型のセンサーを壁に向けることでゾンビなどの映像が浮かび上がり、「バイオハザード」の世界観に没入できる「新ウォークスルー体験」コーナーなど、多彩な展示が用意されている。

ROUND3「ファンタジーとリアリティ」展示風景より、「モンスターハンター超立体図鑑」 ⓒCAPCOM

 「BONUS STAGE」では、モーションキャプチャー技術を使い、来場者自身の身体の動きがそのままゲームキャラクターのアクションとして反映される「モーションキャプチャーミラー」を体験できる。選択できるキャラクターは、「ストリートファイター6」のリュウ、「逆転裁判」の成歩堂、「ロックマン」のロックマンといった3種類。憧れのキャラクターになりきって、渾身のポーズを決めてみてほしい。

「BONUS STAGE」展示風景より、「モーションキャプチャーミラー」

 最後の「FINAL ROUND」では、「伝説の企画書」と題された、過去の名作の企画書や手描きスケッチが展示されている。東京会場では、新たに追加された未公開を含む資料の数々にもぜひ注目したい。

 さらに、カプコンでゲーム開発に携わる12名のクリエイターによるインタビュー映像も上映される。異なるタイトルを担当しながらも、ユーザーを楽しませ、驚かせることへの共通の姿勢が真摯に伝わってくる内容だ。

「FINAL ROUND」展示風景より、「伝説の企画書たち」 ⓒCAPCOM
「FINAL ROUND」展示風景より、「伝説の企画書たち」 ⓒCAPCOM

 ゲーム制作の裏側を知ることで、普段のプレイでは気づかない工夫や苦労が見えてくる。制作過程という別の視点から、より深く、より一層ゲームを楽しむことを可能にしてくれる展覧会と言えるだろう。

 なお、東京会場のあとには新潟への巡回が決定している(2026年3月14日〜6月21日)。

スペシャルゲストに宇野昌磨さんが登場

 開幕に先立ち、本展のスペシャルゲストとして、大のゲーム好きで知られるプロフィギュアスケーター・宇野昌磨さんが登場。「この場に招待いただけてうれしい」「展覧会でゲームクリエイションの裏側をたくさん目の当たりにした。(家に帰って)一刻も早くゲームがしたい」と語った宇野さんは、展覧会に関するいくつかの質問にも答えた。

スペシャルゲストとして登場した、プロフィギュアスケーターの宇野昌磨さん ⓒCAPCOM

──宇野さんがゲームにハマったきっかけは?

 正直、きっかけを思い出せないくらいです。親の影響もあり、物心つく前から自然とその世界に入っていったように思います。最近では格ゲーにハマっていて、競技に近い感覚を楽しんでいますね。ゲームで人とつながれることも魅力のひとつで、無限の可能性を感じます。

──最近は「ストリートファイター6」をプレイされ、プロゲーマーからコーチングも受けていましたね。その魅力はどこにあるのでしょう?

 対戦相手と高め合えることや、スキルが日々向上していくことが楽しいですし、スポーツと近しいものを感じます。普通の生活ではあまり推奨されないことですが、(勝つために)相手の嫌がることを徹底的にできるのは、ゲームだからこそだと思います。

波動拳を撃つ宇野昌磨さん

──プロフィギュアスケーターとしてはもちろんですが、ゲーマーとしての野望はありますか?

 いまは、自分の好きなゲームで仕事ができることがとてもうれしいです。やはり、自分の好きなものの話が通じる世界は楽しいですね。フィギュアスケートにもゲームにもリスペクトを持って向き合っているので、今後も関わっていけたらと思っています。

 あとは、いつかゲームの大会に出て、勝ちたいですね。長年努力してきたプロゲーマーの方々には及びませんが、競技者と名乗れるくらいの真剣さを示せたらと思います。

──これから来場される方へのメッセージをお願いします。

 新しいテクノロジーがどんどんゲームに導入されていて、プレイヤーとしては当たり前のように感じるかもしれませんが、展覧会を通じて制作の裏側を見ることは貴重ですし、なによりゲームの見方が変わりますね。過去にプレイした作品を見て「もう一回やってみたいな」と思ったり、「こんな作品があったんだ」と新しい出会いがあったりもしました。皆さんもきっと、楽しいと思える作品に出会えるはずです。ぜひ足を運んでみてください。

宇野昌磨さん ⓒCAPCOM