Re-view：陳若冰（チェン・ルオビン）紙の仕事

　タグチファインアートで「Re-view：陳若冰（チェン・ルオビン）紙の仕事」が開催されている。本展は、過去の展示や作品を再検証する試み「Re-view」の第2回目となる。

　陳若冰（チェン・ルオビン）は1970年中国生まれ。杭州美術アカデミーで書と水墨画を学んだ後、1992年に渡独。1998年にデュッセルドルフ美術アカデミー、G.グラウブナー教室を修了。現在はドイツ、デュッセルドルフと中国、北京にスタジオを構え制作活動を続けている。　　　

　チェンの仕事は、彼が渡欧前に身につけた中国絵画の伝統や道教・儒教・仏教などの中国思想と、西欧近代を作品のなかで統合しようとする試みである。幾何学的形態を不規則に反復して描くことで生まれる「地」と「図」の等価関係、浅い奥行きによる装飾的ともいえる絵画空間、水墨画を思わせるアクリル絵具の滲み、正方形と円形という簡潔な形態による画面構成、画面内奥から作品外部に向かって溢れ出るような形而上学的な光、深い精神性を湛えながらもどこか楽しげな形態と色彩、これらによってチェンは瞑想的な作品を生み出している。生涯の半分以上をドイツで生活している現在、チェンは中国絵画と西洋近代絵画の融合という構図を飛び超え、独自のスタイルを獲得した。

　本展では、2007年の同廊の個展で展示された10点組のオイルパステルによる素描を中心に展示。チェンがデュッセルドルフ美術アカデミー在学中の1995年に制作した作品だ。滲みを伴って生み出される形態や空間に、中国絵画の伝統や書を学んだチェンの制作の原点を見出すことができる。