EXHIBITIONS

柳澤紀子「動物のことば ・ い の ち」

2025.03.22 - 05.17

柳澤紀子 動物のことば・いのち Ⅲ 2024 エッチング、手染め雁皮刷り、アルシュ紙 49.5 × 49.5 cm

 鎌倉画廊で、柳澤紀子による個展「動物のことば ・ い の ち」が開催されている。

 柳澤紀子は1940年静岡県生まれ。東京藝術大学大学院美術研究科油画専攻を修了後、1970年代にニューヨークのプリントメーキングワークショップで制作、国際的な視野を持った作家として活動を続けてきた。1990年代には、文化庁派遣芸術家としてロンドンに滞在し、2000年代には武蔵野美術大学で後進の指導にも尽力した。現在は静岡県掛川市のアトリエで制作を続けている。

 柳澤の作品は、現実と幻想、抽象と具象が交錯している独自の世界観を構築。とくに、動物や自然をモチーフにした作品が多く、それらを通じて人間の愚かさや自然の尊さを表現。東日本大震災やチェルノブイリ原発事故、ウクライナ侵攻など、現代社会が直面する深刻な問題をテーマにした作品を手がけてきた。これらの作品は、動物たちの姿を通じて、人間の責任や社会の在り方を問いかける。

 柳澤の代表作である「動物のことば」シリーズは、現地に度々取材に行き、福島の避難区域で置き去りにされた牛たちや、チェルノブイリで逞しく生きる動物たちに着想を得たものだ。これらの作品は、離れた場所や時代で起こった悲劇を結びつけ、人類共通の課題として提示する。

 また近年、柳澤は羊皮紙や雁皮紙などの支持体を用いたドローイングの新作に取り組む。これらは、版画とは異なる質感と表現力を備え、作家の新たな挑戦を示すものとなっている。