カーティス・トールウェイスト・サンティアゴ「Buttermilk Mood」

　バンビナートギャラリーとヒロ画廊の2会場で、カリブ系カナダ人アーティスト、カーティス・トールウェイスト・サンティアゴによる個展「Buttermilk Mood」が同時開催されている。

　本展は、現在ミュンヘンを拠点に活動しているサンティアゴの日本での初個展となっており、新作絵画とアンティークジュエリーボックスに収められたミニチュア・ジオラマ（インフィニティ・シリーズ）を発表。

　1979年にカナダのエドモントンに移住したトリニダード人の両親のもとに生まれたサンティアゴは、カリブ系カナダ人の文化に浸って育つ。サンティアゴの幼少期は、家族やコミュニティから音楽、ダンス、そしてアートの影響を受け形成された。1990年代後半にアカペラグループのフロントマンとして音楽のキャリアをスタートし、2002年にバンクーバーに移り住み、70年代のソウルと90年代のラップに魅了された。2007年から2010年にかけ、サンティアゴは先住民族のアーティスト・ローレンス・ポール・ユクスウェルプトゥンに師事。その影響は、サンティアゴの作品の批判的なテーマ、大胆な色彩、表現形式に見ることができる。

　サンティアゴの作品は、歴史、記憶、個人のアイデンティティを探求するもので、しばしばディアスポラや歴史的物語の再話をテーマにしている。南アフリカ、ポルトガル、セネガルでのレジデンスを含むサンティアゴの旅は、過去と現在の関係や、より広範な地政学的力学についての考察を促し、彼の物語を伝えるのに影響を与えている。

　作品の核心は人間関係の探求であり、親密さへの憧れから疎外感の経験まで、人間関係に伴うあらゆる感情の探求である。サンティアゴは、文化的・社会的差異が、強力な結びつきの力として、また対立の根源として機能するかを検証している。絵画や彫刻作品を通して、こうした多面的な経験を色彩と空間に変換し、時間や場所を超えた存在の緊張や調和、気分や流動性を視覚化する構成がつくり出される。

　本展では、日本の春画や浮世絵にインスピレーションを得た作品も紹介し、東京での発表はとくに意義深いものとなっている。