EXHIBITIONS
小林エリカ、ドレーヌ・ル・バ、鈴木ヒラク「形象 Keisho」
Yutaka Kikutake Gallery Kyobashiで、小林エリカ、ドレーヌ・ル・バ、鈴木ヒラクによる展覧会「形象 Keisho」が開催されている。
目に見えないもの、語られてこなかった歴史や個人の記憶、感情を、多彩な媒体を通じて編み上げる小林エリカ。ロマ(*)をルーツに持ち、生と死、喪失や再生といったテーマを軸に、彼らの豊かな歴史や神話から着想した多領域の作品を展開するドレーヌ・ル・バ。「かく」(描く・書く)行為を「発掘」に重ね、時空間に線を見出す方法としてのドローイングを探究し続ける鈴木ヒラク。
本展は、見えにくいもの、隠されてきたもの、あるいは疎外されてきたもの、それぞれの問題意識の追究を通じて、それらを掘り起こし、形を与え、世界との接地点を探る三者三様の実践を巡るものとなっている。
小林エリカは、近年の写真作品より《わたしの手の中のプロメテウスの火》《交霊 -娘と父-》、および自身の血を用いた最新作《わたしの血》を公開。昨年出版された『女の子たち風船爆弾をつくる』(文藝春秋社、2024)は第78回毎日出版文化賞(文学・芸術部門)を受賞するなど、執筆においても高い評価を得ている小林。《わたしの手の中のプロメテウスの火》は、ウランの発見から原子爆弾の開発および原子力発電に至るまでの歴史に言及する作品だ。「交霊 -娘と父-」「わたしの血」シリーズでは、いずれも自身の手を登場させながら人間の限りない欲望に言及している。
ドレーヌ・ル・バは、語られてこなかったロマ民族の文化や歴史、土地の記憶、またジェンダーに関する視点を軸に、多彩な表現を展開。2024年度のターナー賞にノミネートされた。本展では、《Exquisite Corpse》(2024)と題されたオブジェをはじめ、《Spring》(2000)、《Winter》(2003)と名付けられた手縫いの人形様式の作品が展示。
ドローイングの拡張性を一貫して追究してきた鈴木ヒラクは、幼い頃から関心を抱いてきた「発掘」という行為と、「かく」表現のなかに、世界に触れながら、内にあるものを引き出す(draw)という根源的な営みを見出し、さらにその実践を通じて「相互発掘」という概念を創出するに至った。本展では、作家がたびたび言及する洞窟壁画、その闇と光のコントラストや音の響きから着想を得たドローイング作品、および考古学的遺物の写真をシルバーで塗り消し、架空の記憶を描き出す数点の小品を展覧している。
*──中東欧を主として世界各地に居住する民族グループ。英語の「ジプシー」など、欧州を中心に様々な呼称が使われているが、近年は差別的ニュアンスが含まれているとされ、ロマの呼称が用いられている。
目に見えないもの、語られてこなかった歴史や個人の記憶、感情を、多彩な媒体を通じて編み上げる小林エリカ。ロマ(*)をルーツに持ち、生と死、喪失や再生といったテーマを軸に、彼らの豊かな歴史や神話から着想した多領域の作品を展開するドレーヌ・ル・バ。「かく」(描く・書く)行為を「発掘」に重ね、時空間に線を見出す方法としてのドローイングを探究し続ける鈴木ヒラク。
本展は、見えにくいもの、隠されてきたもの、あるいは疎外されてきたもの、それぞれの問題意識の追究を通じて、それらを掘り起こし、形を与え、世界との接地点を探る三者三様の実践を巡るものとなっている。
小林エリカは、近年の写真作品より《わたしの手の中のプロメテウスの火》《交霊 -娘と父-》、および自身の血を用いた最新作《わたしの血》を公開。昨年出版された『女の子たち風船爆弾をつくる』(文藝春秋社、2024)は第78回毎日出版文化賞(文学・芸術部門)を受賞するなど、執筆においても高い評価を得ている小林。《わたしの手の中のプロメテウスの火》は、ウランの発見から原子爆弾の開発および原子力発電に至るまでの歴史に言及する作品だ。「交霊 -娘と父-」「わたしの血」シリーズでは、いずれも自身の手を登場させながら人間の限りない欲望に言及している。
ドレーヌ・ル・バは、語られてこなかったロマ民族の文化や歴史、土地の記憶、またジェンダーに関する視点を軸に、多彩な表現を展開。2024年度のターナー賞にノミネートされた。本展では、《Exquisite Corpse》(2024)と題されたオブジェをはじめ、《Spring》(2000)、《Winter》(2003)と名付けられた手縫いの人形様式の作品が展示。
ドローイングの拡張性を一貫して追究してきた鈴木ヒラクは、幼い頃から関心を抱いてきた「発掘」という行為と、「かく」表現のなかに、世界に触れながら、内にあるものを引き出す(draw)という根源的な営みを見出し、さらにその実践を通じて「相互発掘」という概念を創出するに至った。本展では、作家がたびたび言及する洞窟壁画、その闇と光のコントラストや音の響きから着想を得たドローイング作品、および考古学的遺物の写真をシルバーで塗り消し、架空の記憶を描き出す数点の小品を展覧している。
*──中東欧を主として世界各地に居住する民族グループ。英語の「ジプシー」など、欧州を中心に様々な呼称が使われているが、近年は差別的ニュアンスが含まれているとされ、ロマの呼称が用いられている。