EXHIBITIONS

神楽岡久美「フィクションは真顔で語る」

2025.06.21 - 08.17

神楽岡久美 feather glasses 2012-2025

 rin art associationで、神楽岡久美による個展「フィクションは真顔で語る」が開催される。

 神楽岡はこれまで、社会と身体との接点に目を向け、そこから生まれる新たな身体像の探求を続けている。「光を摘む」シリーズでは、視覚に対する受動的な信頼に疑問を投げかけ、見るという行為そのものを意識化することで、世界との関係を問い直した。続く「美的身体のメタモルフォーゼ」では、「美を手に入れたい」という普遍的な欲望を起点に、身体と美の関係を多角的に読み解こうとした。そうした作品を通じて、神楽岡がたどり着いたのは、「私たちが信じてきたリアル(現実)とは何か」「その価値観や常識などの情報は、いかに構築され、私たちに作用しているのか」という根源的な問いだ。

 本展「フィクションは真顔で語る」は、フィクション(想像)とリアル(現実)のあいだをめぐる試みである。

「私たちが信じ、見てきた『現実』とは『真実』ではなく『フィクション』なのではないか。それが集合的な無意識によって共有されてきたことで価値観や常識などの情報が構築されてきたのであれば、私たちはあらゆるフィクションを現実にすることができるのではないか」(神楽岡久美、展覧会ウェブサイトより)。

 今回の展示は、神楽岡が「真顔で語る」フィクションを通して、人々が無意識に信じてきたリアルの構造に揺さぶりをかける試みであり、新たな現実のためのプロトタイプでもある。人と世界とのあいだに潜む、まだ言葉にならない「かすかな輪郭」を浮かび上がらせる。