2025.12.19

今週末に見たい展覧会ベスト20。ゴッホ、柚木沙弥郎、アンチ・アクションに大カプコン展まで

今週閉幕する/開幕した展覧会のなかから、とくに注目したいものをピックアップしてお届け。なお、最新情報は各館公式サイトを参照してほしい。

「ゴッホ展 家族がつないだ画家の夢」展示風景より、フィンセント・ファン・ゴッホ《画家としての自画像》(1887〜88)
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「ゴッホ展 家族がつないだ画家の夢」(東京都美術館

イマーシブ・コーナーの会場風景より

 東京・上野の東京都美術館で「ゴッホ展 家族がつないだ画家の夢」が12月21日まで開催されている。会場レポートはこちら

 フィンセント・ファン・ゴッホ(1853〜90)の画業を支え、その大部分の作品を保管していた弟テオ。テオの死後、その妻ヨーは膨大なコレクションを管理し、義兄の作品を世に出すことに人生を捧げる。テオとヨーの息子フィンセント・ウィレムは、コレクションを散逸させないためにフィンセント・ファン・ゴッホ財団を設立し、美術館の開館に尽力した。

 本展は、ファン・ゴッホ家が受け継いできたファミリー・コレクションに焦点をあてた展覧会。ファン・ゴッホ美術館の作品を中心に、ゴッホの作品30点以上に加え、日本初公開となるゴッホの貴重な手紙4通なども展示している。また、現在のファン・ゴッホ美術館の活動も紹介しながら、本展をとおして、家族の受け継いできた画家の作品と夢を、さらに後世へ伝えるものとなっている。

会期:2025年9月12日〜12月21日
会場:東京都美術館
住所:東京都台東区上野公園 8-36
電話番号:050-5541-8600 
開館時間:9:30〜17:30(金〜20:00) ※入室は閉室の30分前まで
休館日:月、 9月16日、10月14日、11月4日、11月25日(ただし、9月15日、9月22日、10月13日、11月3日、11月24日は開室)
料金:一般 2300円 / 大学生・専門学校生 1300円 / 65歳以上 1600円 / 18歳以下・高校生以下無料 
※9月中の平日のみ、大学生・専門学生は無料 

「柚木沙弥郎 永遠のいま」(東京オペラシティ アートギャラリー

展示風景より

 東京・初台の東京オペラシティ アートギャラリーで、企画展「柚木沙弥郎 永遠のいま」が12月21日まで開催されている。会場レポートはこちら

 型染の世界に新風を吹き込んだ柚木沙弥郎(1922〜2024)は、自由でユーモラスな形態と美しい色彩が調和した生命力にあふれる作品で知られる。柳宗悦らによる民藝運動に出会い、芹沢銈介のもとで染色家としての道を歩みはじめ、挿絵やコラージュなどジャンルの垣根を超えて創作世界を広げてきた。

 本展では、75年にわたる活動を振り返るとともに、ゆかりのあった都市や地域をテーマに加え、柚木沙弥郎の仕事を紹介。身の回りの「もの」に対する愛着や日々のくらしに見出した喜びから生み出された作品群を通して、民藝を出発点に人生を愛し楽しんだ柚木沙弥郎の創作活動の全貌を提示するものとなっている。

会期:2025年10月24日~12月21日
会場:東京オペラシティ アートギャラリー
住所:東京都新宿区西新宿3-20-2
電話番号:050-5541-8600(ハローダイヤル) 
開館時間:11:00~19:00 ※入場は閉館の30分前まで 
料金:一般 1600円 / 大学・高校生 1000円 / 中学生以下無料

「修理後大公開! 静嘉堂の重文・国宝・未来の国宝」(静嘉堂文庫美術館

展示風景より、左から菊池容斎《呂后斬戚夫人図》(1643、天保14)、《馮昭儀当逸熊図》(1841、天保12)、謝時臣《四傑四系図》(1551年、嘉靖30)

 東京・丸の内の静嘉堂文庫美術館(静嘉堂@丸の内)で、「2025年日本国際博覧会(大阪・関西万博)開催記念 修理後大公開! 静嘉堂の重文・国宝・未来の国宝」が12月21日まで開催されている。会場レポートはこちら

 本展は、静嘉堂@丸の内の開館3周年を記念して開催されるもので、静嘉堂が所蔵する琳派や肉筆浮世絵、近代絵画をはじめ、国宝、重要文化財、重要美術品などを紹介。

 大阪・関西万博にちなみ、20世紀初頭の博覧会に出品された作品から、近年修理を終えた室町時代の屛風や中国宋・元の掛軸まで、幅広い東洋絵画の名品が一堂に会している。

会期:2025年10月4日~12月21日
会場:静嘉堂文庫美術館
住所:東京都千代田区丸の内2-1−1 明治生命館1F
開館時間:10:00〜17:00(12月19日・20日は〜19:00) ※入館は閉館の30分前まで
料金:一般 1500円 / 大学・高校生 1000円 / 障がい者手帳をお持ちの方(同伴者1名無料を含む)700円 / 中学生以下 無料

「野村正治郎とジャポニスムの時代―着物を世界に広げた人物」(国立歴史民俗博物館

第2章展示風景。呉春筆《楼閣山水模様小袖》(右)や酒井抱一筆《梅樹下草模様小袖》(重要文化財、中)が並ぶ

 千葉・佐倉の国立歴史民俗博物館で、企画展示「野村正治郎とジャポニスムの時代―着物を世界に広げた人物」が開催されている。会期は12月21日まで。会場レポートはこちら

 本展は、国立歴史民俗博物館が所蔵する「野村正治郎衣裳コレクション」を通じて、野村正治郎(1880〜1943)の人物像を紹介するもの。正治郎は京都の美術商であり、着物を中心に近世日本の染織品を精力的に収集し、一大コレクションを築き上げた。「野村正治郎衣裳コレクション」には、着物や「時代小袖雛形屛風」、袖形に装幀された小袖裂など、1000点を超える服飾品や装身具が含まれている。

 正治郎が活躍した時期は、欧米においてジャポニスムが隆盛をきわめた時代にあたる。展示の第1章では、美術商として西洋人を相手にした販売戦略に焦点をあて、正治郎がいかにして着物の美を国外に広めたかをたどる。また、正治郎のコレクションは、風俗史研究や産業振興の観点からも高く評価されてきた。第2章では、コレクターとしての正治郎が日本国内における着物の重要性を啓発する役割を果たしていたことに着目している。

会期:2025年10月28日~12月21日
会場:国立歴史民俗博物館 企画展示室A・B
住所:千葉県佐倉市城内町117
電話番号:050-5541-8600(ハローダイヤル)
開館時間:9:30~16:30 ※入館は閉館の30分前まで
休館日:月(休日の場合は開館し、翌平日)
料金:一般 1000円 / 大学生 500円 / 高校生以下無料

「ライシテからみるフランス美術 信仰の光と理性の光」(宇都宮美術館

ジャン=フランソワ・ミレー 無原罪の聖母 1858 山梨県立美術館

 栃木・宇都宮の宇都宮美術館で「ライシテからみるフランス美術 信仰の光と理性の光」が12月21日まで開催されている。会場レポートはこちら

 展覧会タイトルにもある「ライシテ(laïcité)」とは、フランス共和国における政教分離の理念を指し、国家が宗教から自律し、宗教的中立を保つ原則である。多様な宗教的背景を持つ人々が共生する社会において、その根幹をなす価値観のひとつとされている。

 本展は、フランス革命から20世紀半ばに至る時代に焦点をあて、信仰や社会の変化と深く結びついた美術作品を紹介。あわせて、当時の社会状況や宗教観の移ろいのなかで生まれた作品群を通じて、美術に内在する「聖性」の起源とその変遷をたどっている。

会期:2025年10月12日〜12月21日
会場:宇都宮美術館
住所:栃木県宇都宮市長岡町1077
電話番号:028-643-0100
開館時間:9:30〜17:00 ※入館は閉館の30分前まで
休館日:月(10月13日、11月3日、11月24日は開館)、10月14日、11月4日、11月25日料金:一般 1200円 / 大学・高校生 1000円 / 小・中学生 800円

「もてなす美 ―能と茶のつどい」(泉屋博古館東京

展示風景より、《白紫段海松貝四菱唐花丸模様厚板》(17世紀、江戸時代)

 泉屋博古館東京で、2025年秋季 企画展「もてなす美 ―能と茶のつどい」が開催されている。会場レポートはこちら

 本展では、住友家歴代当主が育んできた能楽と茶の湯の文化に注目し、もてなしの場で使用された能道具や茶道具を紹介している。能関係の資料は、15代当主・住友吉左衞門友純(号・春翠)によって収集されたものが中心であり、能楽師・大西亮太郎の協力のもとに形成された。展示には、春翠が実際に着用して舞を披露したと考えられる装束や、7代当主・友輔がもちいたとされる能面など、住友家ゆかりの品々が含まれる。

 また、大西亮太郎は春翠の能の師であると同時に、茶の湯における交流の相手でもあった。大正期には春翠が主催する茶会に大西がたびたび参加しており、茶会記にはもちいられた道具が記録されている。こうした記録を通じて、春翠の美意識やもてなしの姿勢をうかがい知ることができる展覧会となっている。

会期:2025年11月22日~12月21日
会場:泉屋博古館東京(東京・六本木)
住所:東京都港区六本木1-5-1
電話番号:050-5541-8600
開館時間:11:00~18:00(金〜19:00、入場は閉館の30分前まで)
料金:一般 1200円 / 学生 600円 / 18歳以下 無料

「TOKYO ART BOOK FAIR 2025」(東京都現代美術館

 東京都現代美術館の「TOKYO ART BOOK FAIR 2025」は12月21日まで。15回目を迎えるTOKYO ART BOOK FAIR(TABF)は、今年初めて2週末にわたって開催されている。週末ごとに出展者を入れ替え、アート出版の国際的なコミュニティを広く受け入れるプラットフォームとなっている。

 本展では、国や地域の出版文化を紹介する「ゲストカントリー」企画の第9回としてイタリアを特集する。展示では、1966〜77年にイタリアで制作された新聞や雑誌、パンフレットなどを収録した『YES YES YES Revolutionary Press in Italy 1966–1977』と、1978〜2006年に刊行されたZINEを紹介する『OUT OF THE GRID: Italian Zines 1978–2006』を通じて、イタリアのインディペンデント出版の歴史をたどる。また、イタリアのデザインにおける企業と出版の関係性を探る展示「Marchette」や、ブルーノ・ムナーリ、エンツォ・マーリ、エットレ・ソットサスらの絵本を刊行するCorraini Edizioniによる展示も行っている。

 さらに、世界の難民のポートレートや「大切なもの」を記録したホンマタカシの作品展、Pace Galleryによる展覧会インビテーションや図録などの印刷物アーカイブの展示も開催。加えて、ブルーノ・ムナーリ、中村至男、デヴィッド・ホーヴィッツの3名によるオリジナルラッピングペーパーを使用した「BOOK WRAPPING CORNER」も登場した。

会期:2025年12月11日~12月14日、2025年12月19日~12月21日
会場:東京都現代美術館
住所:東京都江東区三好4-1-1
開館時間:12月19日は12:00〜19:00、12月20日〜12月21日は11:00〜18:00  ※入場は閉館の30分前まで
観覧料:一般 1000円(オンラインチケット・日時指定)/小学生以下 無料(詳しくは公式サイトを確認してほしい)

「夢の江戸へ―美人画と歴史ロマン」(町田市立国際版画美術館

水野年方 三十六佳撰 くつわや 明和頃婦人 1893(明治26) 町田市立国際版画美術館蔵 後期展示

 東京・町田市の町田市立国際版画美術館で、特集展示「夢の江戸へ―美人画と歴史ロマン」が開催されている。会期は12月21日まで

 浮世絵は江戸時代初期に誕生して以来、浮世すなわち当世を題材とし、遊郭の花魁や芝居町の歌舞伎役者といった当代のスターたちを描き続けた。明治時代になると、政府による極端な欧化政策に対する反動として、江戸時代を懐古する風潮が生まれた。世間の感情を敏感に察知し、その需要に応じてきた浮世絵のなかにも、過ぎ去った時代を題材とする作品があらわれ始める。

 本展では、月岡芳年(1839〜92)と水野年方(1866〜1908)による美人画を紹介。明治時代に活躍したこのふたりの浮世絵師は、師弟の関係で結ばれながら多くの共通する画題に取り組み、江戸時代の女性像もそのひとつであった。しかしながら彼らが描いた江戸は、必ずしも正確な歴史理解にもとづくものではない。そこに表されたのは江戸時代を理想化した姿であり、史実にしばられない「夢の江戸」とも言える世界である。芳年と年方の没後、浮世絵は急速にその姿を消していった。本展を通じて、浮世絵最後の傑作を堪能してほしい。

会期:[前期]2025年9月26日~11月9日、[後期]2025年11月11日~12月21日
会場:町田市立国際版画美術館
住所:東京都町田市原町田4-28-1
電話:042-722-3111(町田市代表電話)
開館時間:10:00~17:00(土日祝~17:30)※入場は閉館の30分前まで
観覧料:無料

「甦るポストモダン──倉俣史朗、小松誠、髙﨑正治、デザインの人間主義(ヒューマニズム)」(武蔵野美術大学 美術館・図書館

 東京・小平の武蔵野美術大学 美術館・図書館で「甦るポストモダン──倉俣史朗、小松誠、髙﨑正治、デザインの人間主義(ヒューマニズム)」が12月21日まで開催されている。

 本展では、1960年代以降のデザインと建築における「ポストモダン」の潮流を、倉俣史朗、小松誠、髙﨑正治の3人の仕事を中心に紹介している。

 商業主義の中で時代を批評するインテリアデザインを展開した倉俣史朗、紙製ショッピングバッグをパロディ化した磁器シリーズ「クリンクル」を発表した小松誠、人間・自然・社会の共生を建築で示し続ける髙﨑正治。彼らの造形活動を通して、ポストモダンの思想が21世紀においていかに有効であるかを問うている。

会期:2025年11月24日~12月21日
会場:武蔵野美術大学 美術館・図書館
住所:東京都小平市小川町1-736
電話:042-342-6003
開館時間:10:00~19:00(土・日・祝は〜17:00)
観覧料:無料

「ひと、能登、アート。」(石川県立美術館

 石川県立美術館で「令和6年能登半島地震・令和6年奥能登豪雨 復興支援特別展 ひと、能登、アート。」が12月21日まで開催されている。なお、本展は国立工芸館(12月9日〜2026年3月1日)、金沢21世紀美術館(12月13日〜2026年3月1日)でも開催されているが、石川県立美術館での展示は21日まで。

 本展は、2024年1月に発生した能登半島地震および9月の奥能登地域における豪雨災害により被災した人々に寄り添い、復興を支援する思いを込めて開幕した展覧会だ。

 今回の展示では、東京所在の美術館・博物館が連携し、本事業趣旨に賛同する各館が自ら選定した文化財を展示。文化財は、復興を支援する思いを込めた作品として金沢市内の各施設で紹介されている。また、能登に生まれた桃山絵画の画家・長谷川等伯による国宝《松林図屛風》を題材とした映像コンテンツ事業や、石川県内での普及事業(訪問授業)も実施。長い時間を経て受け継がれてきた文化財と、それらに込められた思いを、被災者への励ましのメッセージとして提示している。

会期:2025年11月15日~12月21日
会場:石川県立美術館
住所:石川県金沢市出羽町2-1
電話:076-231-7580
開館時間:9:30~18:00 ※入室は閉館の30分前まで
休館日:会期中無休
観覧料:一般 1000円 / 大学生 800円 / 高校生以下 無料 ※能登(内灘町以北)の方、被災後に能登から移住された方は無料

「古伊万里カラーパレット―絵具編―」(戸栗美術館

 東京・松濤の戸栗美術館で開催中の「古伊万里カラーパレット―絵具編―」は12月21日まで。

 本展は、江戸時代の伊万里焼における色に注目する夏秋連続企画展の後期にあたる展覧会である。伊万里焼の装飾において、絵具を用いた文様表現は「下絵付け」と「上絵付け」の2種に分けられる。下絵付けでは、呉須絵具を使用した染付が代表的であり、磁肌の白と文様の青による対比が特徴である。いっぽう、上絵付けでは赤・黄・緑などの上絵具を用い、華やかな色絵磁器が生み出された。

 今回の展示では、呉須絵具や上絵具を駆使して制作された伊万里焼の豊かな装飾表現を紹介。白い磁肌に映える青、赤、黄、緑、黒、金などの多様な色彩の変遷や、その組み合わせに焦点を当てる。館蔵品から厳選された約80点の作品を通して、伊万里焼における絵具表現の多彩さを紹介している。

会期:2025年10月10日~12月21日
会場:戸栗美術館
住所:東京都渋谷区松濤1-11-3
電話:03-3465-0070
開館時間:10:00~17:00(金土〜20:00) ※入館は閉館30分前まで
観覧料:一般 1200円 / 高校・大学生 500円 / 中学生以下 無料

「リフレクションズ──いつかの光」(札幌芸術の森美術館

池田光弘 untitled (figure no.11) 2024 キャンバスに油彩

 札幌芸術の森美術館で12月21日まで「リフレクションズ──いつかの光」が開催されている。

 本展は、北海道に生まれ、暮らし、または一時的にその土地で過ごした経験のある5組のアーティストによる展覧会。出展作家は、青木陵子+伊藤存、池田光弘、国松希根太、野口里佳、平川紀道。

 今回の展示では、アーティストが眼前の風景や自然現象を知覚し、絵画、彫刻、写真、映像、音響など多様な方法で表した作品に注目。日の光、山の稜線、水の広がり、草花、雪、闇、人々の姿など、アーティストが捉えた、過ぎ去った光景が作品として現れる。出展作家たちが提示する世界への視点は、既知のものをまなざす別の方法を示す。世界が同じように続いていくことが信じられなくなった時代状況を背景に、本展が世界に出会い直す契機となることを願って企画された。

会期:2025年11月15日~12月21日
会場:札幌芸術の森美術館
住所:北海道札幌市南区芸術の森2-75 札幌芸術の森美術館
電話:011-591-0090
開館時間:9:45~17:00 ※入館は閉館30分前まで
観覧料:一般 1200円 / 高校・大学生 700円 / 小学・中学生 400円 / 小学生未満、障がい者手帳をお持ちの方と付添の方1名 無料

「ゴースト 見えないものが見えるとき」(アーツ前橋

展示風景より、トニー・アウスラー《Obscura(Maebashi version)》

 群馬・前橋のアーツ前橋で「ゴースト 見えないものが見えるとき」が、12月21日まで開催されている。会場レポートはこちら

 本展では、現代美術における絵画、彫刻、写真、映像、インスタレーションといった多様な表現を、「ゴースト」というキーワードを手がかりに紹介。可視と不可視、現実と幻のあわいに立ち現れる「イメージ」を通じて、過去と未来、記憶と想像、そして現代という時代そのものへの新たな視座を提示することを試みている。

 「ゴースト」というテーマは、歴史への批判的なまなざしや、現代社会に潜む構造の再検証、あるいは未来の可能性を探る表現の出発点となっている。曖昧で茫洋としたビジョンは、不確かであるがゆえに、見る者に多様な思考と感覚を喚起し、現実の知覚を揺さぶる。作家たちの豊かなイマジネーションによって立ち現れる「見えないもの」の姿を通して、私たちの身のまわりの世界をとらえ直す機会といえるだろう。

会期:2025年9月20日〜12月21日
会場:アーツ前橋
住所:群馬県前橋市千代田町5-1-16
電話番号:027-230-1144 
開館時間:10:00~18:00 ※入館は閉館の30分前まで
休館日:水 
料金:一般 1000円 / 学生・65歳以上 800円 / 高校生以下 無料

鈴木のりたけ「大ピンチ展!プラス」(PLAY! MUSEUM

鈴木のりたけ「大ピンチ展!プラス」メインビジュアル ©鈴木のりたけ/小学館

 東京・立川のPLAY! MUSEUMで「鈴木のりたけ『大ピンチ展!プラス』」が12月20日まで開催されている。

 鈴木のりたけは1975年、静岡県浜松市生まれ。グラフィックデザイナーをへて絵本作家となる。『ぼくのトイレ』(PHP研究所)で第17回日本絵本賞読者賞、『しごとば 東京スカイツリー』(ブロンズ新社)で第62回小学館児童出版文化賞を受賞。『大ピンチずかん』(小学館)では第15回MOE絵本屋さん大賞2022第1位を獲得し、続編の『大ピンチずかん2』でも同賞2024年の第1位に輝いた。

 本展は、累計250万部を超える絵本『大ピンチずかん』をもとに、鈴木が自ら企画・制作した体験型の展覧会「ピンチ・エンターテインメント」だ。会場では、「みるピンチ」「なるピンチ」「かんがえるピンチ」「とびこむピンチ」の4つのテーマが展開され、来場者は絵本の世界を巡るように構成。また本展では、デビュー作品の絵本原画や『大ピンチずかん』のラフスケッチが展示されている。

会期:2025年10月8日~12月20日
会場:PLAY! MUSEUM
住所:東京都立川市緑町3-1 GREEN SPRINGS W3 PLAY! MUSEUM
電話:042-518-9625
開館時間:10:00~17:00(土日祝は〜18:00)(入場は各閉館時間の30分前まで)
休館日:会期中無休
観覧料:一般 1500円 / 大学生 1000円 / 高校生 800円 / 中・小学生 600円

今週開幕

「アンチ・アクション 彼女たち、それぞれの応答と挑戦」(東京国立近代美術館

展示風景より

 東京国立近代美術館で、企画展「アンチ・アクション 彼女たち、それぞれの応答と挑戦」が開幕した。会期は2026年2月8日まで。開幕レポートはこちら

 本展は、1950〜60年代の日本の女性美術家による創作を、「アンチ・アクション」という視点から再考するもの。戦後、アンフォルメルやアクション・ペインティングと呼ばれる抽象美術が流行し、当初は多くの女性美術家も注目を集めた。しかし、力強さや豪快さといった男性性に結びつきやすい表現が評価の中心となるなかで、女性美術家の作品は次第に顧みられなくなったとされる。

 本展では、中嶋泉(本展学術協力者)による著書『アンチ・アクション─日本戦後絵画と女性画家』(2019)にもとづくジェンダー研究の成果を踏まえ、草間彌生、田中敦子、福島秀子ら14名の作家による約120点の作品を通して紹介。各作家がアクションへの対抗意識や独自の創作姿勢をどのように築いたのか、その軌跡をたどる。

会期:2025年12月16日~2026年2月8日
会場:東京国立近代美術館 1F企画展ギャラリー
住所:千代田区北の丸公園3-1
電話番号:050-5541-8600開館時間:10:00〜17:00(金土〜20:00)※入館は閉館の30分前まで休館日:月(ただし1月12日は開館)、年末年始(12月28日~1月1日)、1月13日料金:一般 2000円 / 大学生1200円 / 高校生以下および18歳未満、障害者手帳をご提示の方とその付添者(1名)は無料

「大カプコン展 ―世界を魅了するゲームクリエイション」(CREATIVE MUSEUM TOKYO

 「大カプコン展 ―世界を魅了するゲームクリエイション」が、東京・京橋のCREATIVE MUSEUM TOKYOで巡回開幕する。会期は12月20日~2026年3月1日。大阪展の開幕レポートはこちら

 本展では、家庭用ゲーム機の登場から約半世紀にわたり発展してきたビデオゲームの表現に注目する。ドット絵から始まったゲームの映像表現は、現在では映画に並ぶ高精細な世界を生み出す領域へと進化し、テクノロジーと美術表現の双方を横断する文化として広く浸透している。

 カプコンは1983年に大阪で創業し、「ストリートファイター」シリーズ、「バイオハザード」シリーズ、「モンスターハンター」シリーズなど、多様なタイトルを開発してきた。今回の展示では、企画書や原画、ポスター、パッケージなどのグラフィックワークを紹介し、ゲーム制作のプロセスに関わる開発者の創造力と制作過程を紹介している。

会期:2025年12月20日~2026年2月22日
会場:CREATIVE MUSEUM TOKYO
住所:東京都中央区京橋1-7-1 TODA BUILDING 6階
電話番号:050-5541-8600(ハローダイヤル) 
開館時間:10:00〜18:00(12月21日、2月22日、金土祝前日は〜20:00) ※入場は閉館の30分前まで
休館日:1月1日 
料金:一般 2900円 / 高大生 2000円 / 小中生 1000円

「小出楢重 新しき油絵」(府中市美術館

裸女結髪 1927 京都国立近代美術館

 東京・府中の府中市美術館で「小出楢重 新しき油絵」が開催される。会期は2025年12月20日~2026年3月1日。

 小出楢重は大阪府生まれ。1907年に上京して東京美術学校日本画科に入学し、のちに西洋画科に転科した。卒業後は大阪で制作を続け、19年に《Nの家族》で二科展樗牛賞を受賞した。21年から翌年にかけて欧州を旅行し、23年に二科会会員となった。24年に鍋井克之、黒田重太郎、国枝金三らと大阪で信濃橋洋画研究所を開設し、関西の洋画界で指導的地位をつとめた。26年に芦屋へ転居し、裸婦像や静物画などアトリエ内での制作に取り組んだ。ガラス絵、挿絵・装幀、随筆など多彩な活動もみせ、31年に43歳で病没した。

 本展では、小出楢重が日本人として油絵を描く在り方を追究した姿勢に注目し、大正から昭和初期にかけての制作を紹介する。大阪中心部の商家に生まれ、庶民文化に育まれた背景とともに、洋行後の衣食住を洋風に改めた生活の様子を示す。会場では、日本女性の体型や肌質を描く裸婦、きゅうりやカボチャを描く静物など、西洋美術由来のテーマを扱った作品を展示。また代表作が一堂に会する回顧展として作品を展示し、その制作の展開を示す。

会期:2025年12月20日~2026年3月1日
会場:府中市美術館
住所:東京都府中市浅間町1-3(都立府中の森公園内)
電話:050-5541-8600(ハローダイヤル)
開館時間:10:00~17:00 ※入場は閉館30分前まで
休館日:月(ただし1月12日、2月23日は開館)、12月29日〜1月3日、1月13日、2月24日
観覧料:一般 800円 / 高校・大学生 400円 / 小学・中学生 200円 / 未就学児 無料

「セカイノコトワリ―私たちの時代の美術」(京都国立近代美術館

AKI INOMATA やどかりに「やど」をわたしてみる -Border-(ラ・リューシュ、パリ) 2024 京都国立近代美術館蔵 ©AKI INOMATA 撮影:若林勇人

 京都国立近代美術館で「セカイノコトワリ―私たちの時代の美術」が開催される。会期は12月20日~2026年3月8日。

 本展では、1990年代から2025年現在までの美術表現を中心に、20名の国内作家による実践を紹介する。アーティストは美術という手段を通して、日々直面する様々な問題や、世界の根源的・普遍的な真理について気づかせる存在であるとされる。今回の展示では、「アイデンティティ」「身体」「歴史」「グローバル化社会」といったキーワードを手がかりに作品を紹介し、アーティストそれぞれの思考や実践のアウトプットとしての作品を展示する。

 出展作家は、青山悟、石原友明、AKI INOMATA、小谷元彦、笠原恵実子、風間サチコ、西條茜、志村信裕、高嶺格、竹村京、田中功起、手塚愛子、原田裕規、藤本由紀夫、古橋悌二、松井智惠、宮島達男、毛利悠子、森村泰昌、やなぎみわ。

会期:2025年12月20日~2026年3月8日
会場:京都国立近代美術館
住所:京都府京都市左京区岡崎円勝寺町
電話:075-761-4111
開館時間:10:00~18:00(金は〜20:00) ※入館は閉館30分前まで
休館日:月(ただし1月12日、2月23日は開館)、12月30日〜1月3日、1月13日、2月24日
観覧料:一般 1500円 / 大学生 700円 / 高校生以下・18歳未満 無料

「光る海 吉田博展」(MOA美術館

吉田博 瀬戸内海集より 光る海 1926 MOA美術館

 静岡・熱海のMOA美術館で「光る海 吉田博展」が開催される。会期は12月20日~2026年1月27日。

 本展では、近代風景画家である吉田博がとらえた風景画のうち、海を主題とした「瀬戸内海集」シリーズ、合計7年間を超える外遊によって生まれた「米国シリーズ」「欧州シリーズ」など、木版画の代表作約70点を展観する。

 後半生に傾倒した私家版木版画では、浮世絵版画の技法に油彩画のタッチと水彩画の色彩表現を加え、洋画技法を取り入れた。あわせて、吉田が描いた風景の現在の姿を撮影した映像を用い、作品を比較展示する。

会期:2025年12月20日~2026年1月27日
会場:MOA美術館
住所:静岡県熱海市桃山町26-2
電話:0557-84-2511
開館時間:9:30~16:30(入館は閉館の30分前まで)
休館日:木(祝休日の場合は開館)、1月5日〜1月9日(1月1日は開館)
観覧料:一般 2000円 / 高校・大学生 1400円 / 中学生以下、障害のある方とその付添者2名 無料

「綾錦 -近代西陣が認めた染織の美—」(根津美術館

 東京・南青山の根津美術館で、企画展「綾錦 -近代西陣が認めた染織の美—」が開催される。会期は12月20日~2026年2月1日

 本展では、大正期に刊行された染織図案集『綾錦』に掲載された初代根津嘉一郎(1860〜1940)旧蔵の染織品を展覧。『綾錦』は、大正天皇即位記念事業として新築された西陣織物館(現・京都市考古資料館)で開催された展覧会において、主催者が国内外の染織品を記録する目的で、選定した意匠を版画とコロタイプで再現したものである。能装束や古更紗の巻には、嘉一郎の名が多く記され、当時の染織品収集の状況を示す資料として位置づけられている。

 今回の展示では、『綾錦』掲載作のうち、現在確認できる20点を展示し、嘉一郎の染織コレクションの一端を紹介する。

会期:2025年12月20日~2026年2月1日
会場:根津美術館
住所:東京都港区南青山6-5-1
電話:03-3400-2536
開館時間:10:00~17:00(入館は閉館の30分前まで)休館日月(ただし1月12日は開館、翌火休館)、年末年始(12月27日〜1月5日)観覧料一般 1300円 / 学生 1000円 / 中学生以下 無料