2025.5.30

「ロエベ ファンデーション クラフト プライズ 2025」の大賞に青木邦眞

クラフトマンシップを顕彰するため、2016年にロエベ ファンデーションによって設立された「ロエベ ファンデーション クラフト プライズ」。今年の大賞と特別賞受賞者が発表された。

青木邦眞
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 2016年にロエベ ファンデーションが設立した「ロエベ ファンデーション クラフト プライズ」。今年の大賞が青木邦眞(日本)による《Realm of Living Things 19》(2024)に決定した。

 このプライズは「ロエベ」のクリエイティブ・ディレクターで、ジョナサン・アンダーソンが考案したもの。今日の文化におけるクラフトの重要性を認識し、顕彰することを目的としている。今年は133の国と地域から昨年を超える4600点以上の応募があり、パトリシア・ウルキオラ、オリヴィエ・ガベ、ワン・シュウ、マグダレン・オドゥンド、フリーダ・エスコベドら、デザイン、建築、ジャーナリズム、批評、 キュレーションなど各界の第一線で活躍する12名の審査員によって、30名のファイナリストからファイナリストが選出。日本からの選出は昨年に続き国別最多となる青木邦眞、麻生あかり、近岡令、石黒幹朗、田口史樹の5名が選ばれていた。

 青木は1963年生まれ。武蔵野美術大学大学院修了。2023年には第9回日本彫刻コンクールで金賞を受賞している。

 受賞作となった《Realm of Living Things 19》は歪像的なテラコッタ彫刻で、粘土に力を加えたときの歪んだりひび割れたりする様子を探求している。重力、時間、圧力を用いた革新的で新しい造形技術を施しており、粘土の層を幾重にも積み重ね、圧縮し、窯で焼成。最後に、土と鉛筆で表面に装飾を施して仕上げた。審査員は青木の作品について、伝統的な紐作りの技法を率直な方法で用いている点と、素材が生のままの姿で表現されている点を評価したという。

青木邦眞 Realm of Living Things 19 2024
青木邦眞

 なお特別賞には、ニフェミ・マーカス=ベロ(1988年生まれ、ナイジェリア)の《TM Bench with Bowl》とスタジオ スマクシ・シンによる《Monument》の2組が選ばれた。

ニフェミ・マーカス=ベロ

 ニフェミ・マーカス=ベロは、自身の作品のなかでグローバリゼーション、消費主義、生産といったテーマを探求するデザイナー。リーズ大学でプロダクトデザインの学士号と修士号を取得。デザイン分野で国際的に高い評価を得ている。2023年にはシャルジャ建築トリエンナーレに参加。また同年、『モノクル』誌のEmerging Designers of the Year Awardを受賞。作品はシカゴ美術館とニューヨーク近代美術館に収蔵されている。

スタジオ スマクシ・シン

 いっぽうのスタジオ スマクシ・シンは、スマクシ・シン(1980年生まれ)、ビレンドラナート・サルカール(1972年生まれ)、サマルジート・サマルジート(1979年生まれ)、ビカス・バルマン(1983年生まれ)によって構成されたコレクティヴ。 テキスタイルや糸細工、彫刻、インスタレーションなど、様々な媒体で作品を手がけている。

 ロエベ ファンデーション プレジデントのシーラ・ロエベは今回のプライズについて、以下のようなコメントを寄せている。「第8回目となるこの賞を祝うにあたり、展示されている作品の驚くべき創意の幅広さ、美しさ、そして技術の高さに心を打たれています。毎年、クラフトが持つ驚きや革新、進化し続ける力を目の当たりにするたびに、魔法のようなものを感じます。クラフトを活性化しつづけるというこの賞の役割を、私は非常に誇りに思っています」。

 なおファイナリストの作品は、マドリードのティッセン=ボルネミッサ国立美術館で6月29日まで展示中だ。

展示風景より
展示風景より
展示風景より
展示風景より
展示風景より