2025.6.25

BTS・RM、アート界へのカムバック

世界でもっとも影響力のあるアートラバー、BTSのRMがカムバックを果たした。

文=橋爪勇介(ウェブ版「美術手帖」編集長)

RMのInstagramより

 多くのアート業界人がこの日を待ち望んでいたのではないだろうか。BTSのメンバーであり、グループ随一のアート通として知られるRMのカムバックだ。

 RMは他のBTSメンバー同様、兵役についていた、今年6月10日に除隊。その後、6月19日には世界でもっとも巨大なアートフェアとして知られる「アート・バーゼル(バーゼル)」を訪れる様子を自身のInstagramに投稿した。

 また25日にも同フェアの様子を投稿し、加藤泉の立体作品をはじめとする「お気に入り」と見られる作品を見せてくれた。除隊後に早速アートとのつながりを示したRM。彼のアートとの深いつながりを考えれば、当然かもしれない。

 RMは2020年、自身の誕生日である9月12日を記念し、絶版されて入手が困難な書籍などの制作を支援するために韓国の国立現代美術館(MMCA)に1億ウォン(約890万円)を寄付したRM。この行為が評価され、韓国のアーツ・カウンシル・コリアによって「アート・スポンサー・オブ・ザ・イヤー」に認定された経緯がある。

 またその後も芸術分野へのコミットメントは熱を増し、22年には「アート・バーゼル」ポッドキャストに出演。ポッドキャストではアート・バーゼルのグローバル・ディレクターであるマーク・シュピーグラーとの対談に挑み、2018年のアメリカツアーの際に訪れたシカゴ美術館がアートに熱中していくきっかけとなったことや、初めて購入した美術品が韓国人アーティスト、イ・テウォンの作品だということ、そして自分のコレクションを展示するギャラリーへの熱意などを語った。

 またRMは同年に初開催され、いまやその地位を確立しつつある「フリーズ・ソウル」にも登場。大きなインパクトを会場のみならず世界に与えた。

 加えて22年には、アートとの見事な結実を見せる。それが、自らが全曲の作詞・作曲を手がけた記念すべきソロアルバム『Indigo』のライブパフォーマンスだった。ニューヨークを代表する現代美術館のひとつ「Dia Beacon(ディア・ビーコン)」を舞台に、同館でのライブパフォーマンスをYouTubeで発表。ジョン・チェンバレン、ダン・フレイヴィン、そしてリチャード・セラの展示室で歌うRMの姿からは、アートへの強いリスペクトも感じられる(いまこの動画は279万回以上再生されている)。

 兵役中もたびたび美術館に訪れたり、奈良美智と2ショットを撮ったりと、RMへのアートへの情熱は、いまも変わらず続いている。除隊し、今年はBTSの完全復活も間近に控える。本業とともに、彼の心を満たすアートへのコミットメントがどのようなかたちで現れてくるのか、楽しみでならない。