2025.10.10

イタリア館の《ファルネーゼのアトラス》、大阪市立美術館で展示へ。ダ・ヴィンチ手稿も新たに日本初公開

大阪・関西万博のイタリア館で目玉のひとつとなっていた《ファルネーゼのアトラス》が、大阪市立美術館で展示される。

文・撮影=橋爪勇介(ウェブ版「美術手帖」編集長)

イタリア館の《ファルネーゼのアトラス》
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 数々の美術品で話題を集めた大阪・関西万博のイタリア館。同館で目玉のひとつとなっていた《ファルネーゼのアトラス》(2世紀)が、大阪市立美術館の特別展「天空のアトラス イタリア館の至宝」(10月25日〜2026年1月12日)で展示される。

 作品名にある「ファルネーゼ」とはルネサンス期の名門貴族であり、その美術品コレクションはナポリ国立考古学博物館の柱となった。高さ193センチの大作である本作は、古代彫刻の最高傑作のひとつ。重い天球を抱える巨神アトラスが象られ、その天球には星座や黄道十二宮が精緻に刻まれている。通常はナポリ国立考古学博物館が所蔵しており、今回の万博においてアジア初公開となった。

イタリア館の《ファルネーゼのアトラス》

ペルジーノとダ・ヴィンチも

 今回の特別展では、このほかにもイタリア館からラファエロの師・ピエトロ・ヴァンヌッチ(通称ペルジーノ、1450頃〜1523)による《正義の旗》(1496)も出品される。

ピエトロ・ヴァンヌッチ(通称ペルジーノ、1450頃〜1523)による《正義の旗》(1496)

 《正義の旗》の画面は上下2段で構成されており、上部にはセラフィムと踊る天使たちに囲まれた聖母子が、下部には祈りを捧げる聖フランチェスコと聖ベルナルディーノ・ダ・シエナ、そして頭巾を被った信者を含む群衆が描かれている。ウンブリア国立美術館(ペルージャ)が所蔵する本作はもともと聖ベルナルディーノ信徒会が行列用の旗(ゴンファローネ)として依頼したものであり、そのため地域的なアイデンティティが強く込められている。

 加えて、アンブロジアーナ図書館が所蔵するレオナルド・ダ・ヴィンチの『アトランティコ手稿』(1478〜1518)は、イタリア館で展示されたものとは異なる紙葉が日本初公開される。デッサンと注釈で構成されたこの手稿は、精神、科学、芸術、工学に対するダ・ヴィンチのユニークな洞察が1119枚にわたって収められたもの。今回出品されるのは、第156紙葉 表《水を汲み上げ、ネジを切る装置》(1480〜82頃)と第1112紙葉 表《巻き上げ機と油圧ポンプ》(1478頃)の2点で、いずれも水の都・大阪と関連性を持つテーマのものが選ばれた。

なぜ実現?

 7月頃にイタリア館側からオファーがあり、大阪市立美術館の特別展室の半分が空いていたことから実現した今回の展覧会。マリオ・ヴァッターニ大阪万博イタリア政府代表は、本展の開催に際して「万博のレガシーを伝えるものであり、普遍的な文化の勝利の証」とコメント。また横山英幸大阪市長も「万博のレガシーとして美術展ができることを嬉しく思う」と喜びを語った。

 連日長蛇の列を記録してきたイタリア館。本展はイタリア館を諦めざるを得なかった人々にとっても絶好の機会となるに違いない。

イタリア館の記者会見より、ポスターを挟んで左が大阪万博イタリア政府代表のマリオ・ヴァッターニ、右が大阪市の横山英幸市長