2024.10.31

ウェイド・ガイトン個展「THIRTEEN PAINTINGS」(エスパス ルイ・ヴィトン東京)開幕レポート。注目の日本初個展

エスパス ルイ・ヴィトン東京で、アメリカ・インディアナ州出身のウェイド・ガイトンによる日本初個展「THIRTEEN PAINTINGS」が始まった。会期は2025年3月16日まで。

文=橋爪勇介(ウェブ版「美術手帖」編集長)

「WADE GUYTON – THIRTEEN PAINTINGS」エスパス ルイ・ヴィトン東京での展示風景(2024)より、《UNTITLED》(2022)
Courtesy of the artist and Fondation Louis Vuitton, Paris
Photo credits: © Jérémie Souteyrat / Louis Vuitton
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 東京・表参道のエスパス ルイ・ヴィトン東京で、アメリカ・インディアナ州出身のウェイド・ガイトンによる個展「THIRTEEN PAINTINGS」が始まった。会期は2025年3月16日まで。

 本展は、パリにあるフォンダシオン ルイ・ヴィトンの所蔵コレクションを東京、ミュンヘン、ヴェネチア、北京、ソウル、大阪のエスパス ルイ・ヴィトンにて展示する「Hors-les-murs(壁を越えて)」プログラムの一環として行われるもの。

 ウェイド・ガイトンは1972年米国インディアナ州生まれ。現在はニューヨークを拠点に活動している。数々の賞を受賞しており、2014年にアメリカ芸術文学アカデミー、2004年にはファウンデーション・フォー・コンテンポラリー・パフォーマンス・アーツより賞を授与。また、2003年にソクラテス彫刻公園から新進芸術家助成を、2002年にアーティスト・スペースから独立プロジェクト助成を獲得。2000年にはデルフィナ・スタジオ・トラストからも支援を受けている。2023年にパリ市立近代美術館(フランス)の「Five Paintings, 2013-2015」(2023)など、これまで個展を多数開催しており、その作品はバイエラー財団や、プラダ財団などでのグループ展でも紹介されてきた。

ウェイド・ガイトン
エスパス ルイ・ヴィトン東京にて、2024年
Photo credits: © Jérémie Souteyrat / Louis Vuitton

 アーティストにとって日本初個展となる本展では、フォンダシオン ルイ・ヴィトンの所蔵作品から、2022年に制作された13枚のパネルからなる大判絵画作品《Untitled》(2022)が世界で初めて紹介される。

 ガイトンは、絵画の伝統的な形式と現代のデジタル技術による印刷技法を融合することで知られており、本作でもそうした技法が見られる。

「WADE GUYTON – THIRTEEN PAINTINGS」エスパス ルイ・ヴィトン東京での展示風景(2024)より、《UNTITLED》(2022)
Courtesy of the artist and Fondation Louis Vuitton, Paris
Photo credits: © Jérémie Souteyrat / Louis Vuitton

 画面には、ウェブサイトのスクリーンショットや制作現場の写真、あるいは新聞の画像データなど様々なイメージが組み込まれており、それらが複雑に異なる画面の中を交錯する。すべてはエプソンのインクジェットプリンター(SureColor P9000)によって「描かれる」ことで生み出された。

「WADE GUYTON – THIRTEEN PAINTINGS」エスパス ルイ・ヴィトン東京での展示風景(2024)より、《UNTITLED》(2022)
Courtesy of the artist and Fondation Louis Vuitton, Paris
Photo credits: © Jérémie Souteyrat / Louis Vuitton

 まるで抽象画のように見える画面も、実際は過去につくった画像を抽出して編集したものであり、これもプリントによって表現されている。作品はパネル状ではあるが、ガイトンは「自分のことをペインターだとは思っていない。絵画や写真というカテゴリを出たり入ったりしながらつくられるものだ」と話す。

「WADE GUYTON – THIRTEEN PAINTINGS」エスパス ルイ・ヴィトン東京での展示風景(2024)より、《UNTITLED》(2022)
Courtesy of the artist and Fondation Louis Vuitton, Paris
Photo credits: © Jérémie Souteyrat / Louis Vuitton
「WADE GUYTON – THIRTEEN PAINTINGS」エスパス ルイ・ヴィトン東京での展示風景(2024)より、《UNTITLED》(2022)
Courtesy of the artist and Fondation Louis Vuitton, Paris
Photo credits: © Jérémie Souteyrat / Louis Vuitton

 これら13枚のパネルは1つに重ねることも、一部を壁にかけ残りを重ねることも、あるいはすべてを壁にかけることもできるが、本展ではすべてが壁面に沿って展示された。その理由をガイトンはこう語る。「私は展覧会をつくるとき、建築的な構造に影響を受ける。今回はここのガラス張りの空間がおもしろいと思った。作品の間から東京の街が透けて見える鑑賞体験にしたいと考えた」。また本作はこの展覧会が初披露の場であるため、すべてのパネルを見える状態にしたかったとも話している。

 さらに、作品がかけられている単管のようなストラクチャーは、同スペース天井の照明からインスパイアされたものだという。

「WADE GUYTON – THIRTEEN PAINTINGS」エスパス ルイ・ヴィトン東京での展示風景(2024)より、《UNTITLED》(2022)
Courtesy of the artist and Fondation Louis Vuitton, Paris
Photo credits: © Jérémie Souteyrat / Louis Vuitton
「WADE GUYTON – THIRTEEN PAINTINGS」エスパス ルイ・ヴィトン東京での展示風景(2024)より、《UNTITLED》(2022)
Courtesy of the artist and Fondation Louis Vuitton, Paris
Photo credits: © Jérémie Souteyrat / Louis Vuitton

 プリントの際に生じるエラーやインクの液垂れ、ミスプリントすらも画面全体に広がる構成要素としてとらえられているガイトンの作品。それぞれの画面をじっくり見比べながら、ガイトンの作品世界に踏み込んでほしい。