2025.8.6

9月開業の「BLUE FRONT SHIBAURA TOWER S」。オフィスエリアや商業エリアにフランシス真悟や鈴木康広の作品を設置

9月1日に全体開業を予定している、東京・芝浦の「BLUE FRONT SHIBAURA TOWER S」。開業に先駆けて、同施設に設置されているアートが公開された。

文・撮影=安原真広(ウェブ版「美術手帖」副編集長)

展示風景より、フランシス真悟《Ring of Light》(2025)
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 9月1日に全体開業を予定している、東京・芝浦の「BLUE FRONT SHIBAURA TOWER S」。同施設に設置されているアートが報道陣向けに公開された。設置作品の一部を紹介したい。

BLUE FRONT SHIBAURA TOWER S(左)

 本施設のアート&カルチャープロデューサーを務めるのは、東京・青山のスパイラルのプロデューサーを務める小林裕幸。環境に対する中和や、アートが自然に存在することを重視して作品が選ばれている。

 昨年、国内初となる大規模個展「Exploring Color and Space-色と空間を冒険する」茅ヶ崎市美術館で開催したフランシス真悟は、オフィスエントランスのために大型の作品を制作。《Ring of Light》と名づけられたこの連作は、円が人間を、四角が建物を表しており、見る角度によって様々に変化する色をもつ。この5つの平面は、自然哲学にもとづく「木・火・土・金・水」という5つの元素と、それらが互いに影響しながら循環する宇宙観から着想されており、鑑賞者の置かれた状況により様々にその性格を変化させていく。

展示風景より、フランシス真悟《Ring of Light》(2025)

 韓国出身のアーティスト、ベ・セファは、木を使った彫刻作品を制作してきた。エントランスホールのために制作された《Meditative Garden》は、本施設に隣接する旧芝離宮恩賜庭園を散歩したことからインスピレーションを得たという。公園内の小道や水、風、丘などの動きのリズムを、緩やかなフォルムを持つ彫刻へに投影しており、来場者は自由に座ることができる。施設を訪れる人々の身体と調和するような作品だ。

展示風景より、ベ・セファ《Meditative Garden》(2025)

 東京、仙台、ロンドンに拠点を置くビジュアルデザインスタジオ「WOW inc.」は、CMやVIといった広告映像からユーザーインターフェースまで、国内外の様々なデザインワークを手がけてきた。最近では大阪万博の落合陽一のシグネチャーパビリオン「null2」にもクリエイティブチームとして参加している。同スタジオは28階スカイラウンジのエントランスに《Flowing Presence》を設置。水の流動や質感をオフィスを訪れる人々の行動と呼応しながらリアルタイムで描き出すインタラクティブな作品となっており、水という普遍的なテーマから人と環境との関係を問いかけている。なお、造形はWALTZ.が手がけた。

展示風景より、WOW inc.《Flowing Presence》

 鈴木康広は、身の周りに存在する何気ないものごとに注目し、小さな気づきを独自の視点でとらえなおし作品を制作してきたアーティストだ。鈴木は槇文彦の設計による「BLUE FRONT SHIBAURA」の2棟のビルが、鈴木春信《雪中相合傘》になぞらえられられていることに着目。オフィスエリアに隣接する商業エリアのフードを楽しめる空間で、空中でふたつの円による無限大のかたちを構築するファスナーの立体作品《無限大をひらく》を制作した。ファスナーのパーツそれぞれは一つひとつが異なるかたちになっており、多様な人々が集まる場所にふさわしい作品となっている。

展示風景より、鈴木康広《無限大をひらく》(2025)
展示風景より、鈴木康広《無限大をひらく》(2025)

 また、商業エリアからオフィス共用部までの各所で、アートディレクターの遠藤豊のディレクションのもと、作曲家・畑中正人による自然と建築との融合を意識したサウンドが流れている。