特別展「宋元仏画―蒼海(うみ)を越えたほとけたち」(京都国立博物館)開幕レポート。過去最大規模の宋元仏画が集結
京都国立博物館で、特別展「宋元仏画―蒼海(うみ)を越えたほとけたち」が開催中。日本国内に所蔵される貴重な宋元仏画が一堂に集結している。

京都国立博物館で開催中の特別展「宋元仏画―蒼海を越えたほとけたち」は、宋(960〜1279)から元(1271〜1368)にかけて制作され、日本に伝来した仏画を過去最大規模で一堂に集めた展覧会である。宋元仏画は高度な技術と精神性を併せ持ち、東アジア仏教美術の精華であると同時に、日本の中世美術の形成に決定的な影響を与えた。
本展は、これまで高く評価されながら一堂に会する機会の少なかった重要な仏画を中心に、日本に舶載された現存する作例を集め、「宋元仏画」の特質と多様性を再考する機会となっている。海を越えて日本に至り、数百年を経て今日まで残されて来たものが、これほどの豊かな様相を持ち、その一脈は日本文化の根幹に通じていることが実感できる美術ファンにとって、どうしても観ておかねばならぬ充実の内容である。
10世紀から14世紀の東アジアは、王朝の交替と文化交流の時代であった。北宋は開封を都に士大夫文化を築いたが、金の侵攻によって南宋へと都を臨安に移し、知的かつ洗練された文化を花開かせた。臨安周辺は古来仏教文化が盛んな地で、日本からも僧侶が渡航し、最新の教えや画法を学んだ。やがてモンゴルが中国を制圧し、1271年に大都に首都を置いて元を建国すると、ユーラシア全域から人々が往来する国際的な社会が誕生した。

日本からも交易船や僧侶が渡り、宋元の仏画を持ち帰った。中国本土では戦乱や宗教政策の影響で多くの仏画が失われたが、日本では寺院において礼拝の対象として大切に祀られ、数多くが今日まで守り伝えられた。そのため、宋元仏画が世界で最も多く残されているのは日本であり、本展はその集積を体系的に紹介する稀有な機会である。