2025.11.13

両足院で呼応する、クサカ シオの陶とジョナス ウッドの絵画

京都の名刹・両足院で「クサカ シオ と ジョナス ウッド」が始まった。

文・撮影=橋爪勇介(ウェブ版「美術手帖」編集長)

手前はクサカ シオ《 (interior 1)》(2025)
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 14世紀に建⽴され、京都でもっとも重要な禅寺のひとつとして知られる両足院。毎年秋に、意欲的な現代美術の展覧会を行うこの場所を、今年はクサカ シオとジョナス ウッドが彩る。

 本展は、ロサンゼルスを拠点とするデイヴィッド・コルダンスキー・ギャラリーとの共同企画によるもので、クサカ・シオの陶芸作品などとジョナス・ウッドの絵画を紹介するものだ。

展示風景

 クサカは1972年岩⼿県盛岡市⽣まれ。古来の陶芸に内在する理念を現代的な造形として展開し、彫刻的なアプローチで作品を制作。2021には建築家の森俊⼦とともにイサム・ノグチ賞を受賞するなど、世界的に高い評価を得ている。

 いっぽうのウッドは1977年マサチューセッツ州ボストン⽣まれ。平面的に色を配置しつつ、絵具の質感を精緻に操ることで立体感と奥行きを生み出すことで知られる。

 夫婦でもある2人のアーティストが共演する機会はこれまでもあったが、彼ら⾃⾝で企画した展⽰は⽇本初の試み。会場は、両者によるほぼ全てが新作で構成されている。

 例えばウッドがクサカの器を描いた絵画、クサカが寺院の内部空間をモチーフにした器に象徴されるように、本展では両足院というユニークな会場で、互いの表現が相互に呼応しながら、制作と鑑賞の場を包み込むような有機的なアートのあり方を提示している。

展示風景

 クサカは縄文時代や古墳時代の陶芸から着想を得たもの、あるいは陶芸でありながら内と外の関係を問いかけるもの、宇宙船を思わせる巨大な照明など、多彩なバリエーションを見せる。

展示風景
展示風景

 いっぽうジョナスはハワイや日本から着想を得た平面を展示。例えば《Japan Cityscape》(2025)では、樹木や建物、芝生の質感を多様な線で表現しており、各線は全体を構成する要素であると同時に、独立した構造としても機能している。

ジョナス・ウッド《Japan Cityscape》(2025)の展示風景

 また今回は、敷地内にある2つの茶室でも作品を展示。両⾜院の歴史や⽂脈を鑑みながらアーティストたち⾃⾝で選定された作品群を、環境ととともに楽しんでもらいたい。