EXHIBITIONS

杉浦邦恵「境界と共存」

Kunié Sugiura Fever 2021 © Kunié Sugiura / Courtesy of Taka Ishii Gallery

 タカ・イシイギャラリー 六本木で、杉浦邦恵の個展「境界と共存」が開催される。

 杉浦は名古屋市生まれ、現在ニューヨークを拠点に活動。1967年にシカゴ美術館附属美術大学学士課程を修了した。同大学在学中、コンセプチュアル・フォトグラファーであるケネス・ジョセフソンに師事したことを契機に、以後、50年近く写真による多様な表現を提示し続けてきた。

 杉浦は、日本とアメリカ、自然と人工、絵画と写真といった二項対立的な要素を共存させることによって、二文化的なアイデンティティを表現。また写真とそのほかの媒体との関係、写真における「もの」とその抽象化の表現について探究を続けている。

 本展では、六本木と京橋の2会場を舞台に、杉浦の創作の軌跡をたどる。六本木会場では、杉浦がシカゴ美術館附属美術大学在学中に制作した「Cko」シリーズ(1966~67)を紹介。この初期代表作は、杉浦の芸術的探求の原点であり、異文化のなかで感じた孤独や疎外感と向き合うなかで生まれたものだ。

 また会場には新作として1990年代から2000年代にかけて取り組まれたX線写真シリーズと融合した、《Fever》(2021)、《Nina’s Pelvis & Leg》(2024)、そして《Oral》(2022)を紹介。これらの作品群は、視覚芸術と科学の境界を探求すると同時に、人体の内部構造を詩的かつ象徴的に表現し、生命の神秘や脆さを鮮やかに可視化している。

 京橋会場では、1980年代以降に展開されたフォトグラム作品を紹介。「The Kitten Papers」(1992)では、夜の子猫の気配を写し取り、光と影の繊細な対比が杉浦ならではの静けさを際立たせている。砂をもちいた初期作「Attenuated Head」(1986)や、花を主題とした「ボタニカス」など複数のシリーズも並列して展示される。